第14話 雨



 彼氏が死んだ。バイク事故だ。

 踏み切りにつっこみ、電車にひかれて、バラバラになった。


 あたしは泣き叫んだよ?

 好きだったしね。


 でも、一年たって、新しい彼ができた。

 しょうがないよね。

 あたし、まだ二十歳だし。

 彼だって欲しいし、結婚もしたいよ。


 今日は、これから、彼のうちに、初お泊まり。

 はりきって、新しい下着、買っちゃったよぉ。

 超セクシーなやつ。


 だけど、あーあ、雨ふってきた。


 まあ、いいけどね。

 ずっとベッドのなかにいればいいんだしさ。


 コンビニでビニール傘、買った。

 その傘をさして歩いてると、なんで?

 みんなが、あたしを、すっごい目で見るんだけど?

 ホラー映画、見てるときみたいな顔して、あわてて、さけていく。


 やんなるなあ。

 気分悪い。


 明るい駅前についた。

 街灯の下を通ったとたん、あたしは気づいた。


 水たまりが赤い。


 正確に言うと、あたしのまわりの水たまりだけ、赤い。


 なに、これ?


 立ちすくむと、傘から赤いしずくが、とめどなく、したたってくる。


 雨が赤いんだ。

 だから、その雨が落ちて、水たまりも赤くなる。


 なんで、あたしのまわりだけ?


 あたしは、そっと、上を見た。

 ビニール傘の上から、もと彼が、のぞきこんでいた。

 事故で死んだ彼が。

 全身、真っ赤に見えるほど、血みどろになって……。


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