第8話 空き家の怪



 これは、不動産会社で営業をしていた叔父の話です。

 その叔父も先年、病気で亡くなったのですが、生前にこんな話を聞いていました。


 この叔父からは、若いころに火の玉を見たことがあるなどと言った話を、以前、聞いたことがあります。

 古い町屋の格子窓の下に、大きな火の玉が光っていたそうです。


 こういう叔父ですが、本人はいたって現実主義者でした。むやみやたらと、オバケを見たなどと吹聴するようなタイプではありません。


 ですが、仕事柄、たくさんの家を訪問します。

 空き家にもよく出入りします。


 叔父によると、いやなふんいきの家はひとめでわかるということです。

 なんとなく暗いなとか、冷んやりするな、とか……。


 その空き家も、そういった物件のひとつでした。

 入った瞬間に、影が濃い、いやなうちだと思ったそうです。

 いわれや、そこで何があったのか——などはわかりません。事故物件ではなかったようです。


 ただ、関係者以外、誰も立ち入れないはずのその家に、ある日、とつぜん、出現したそうです。

 人間の髪のたばが。

 キッチンの床に、かなりの量で置かれていました。

 まるで、切りおとされた遺髪のように……。

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