第8話 おやすみなさい
「前置きとしてもうひとつだけ、光属性と闇属性についても説明しておくかの」
...まだ焦らしますか。オレンジまでの道は遠いですね。
「この二つは誰でも適正が高いのじゃ。」
「え、そうなんですか?なんとなく難しそうな...」
「そのとおりじゃよ。この二つはとても難しい。使いこなせる者は少ないじゃろうの」
適正は高いのに使えない?意味わかりません。やればできるんだよおれ、本気出してないだけさ、的なやつでしょうか。
........うざいですね。
「この二つは学ぼうと思えば誰でもあるレベルまではいけるのじゃ。ただし適正による差がないぶん、習熟度は鍛練の量が大きく左右するのじゃ」
なるほどです。
まさに凡人のための属性というわけですね。難しいけれど、頑張れば凡人でも大成できるということでしょうか。
......わたしは凡人じゃないので。努力はしませんよ。一夜漬けこそ正義です。
「光属性は治癒術も含まれとる。学んでおいて損はないのじゃ、必ず学んでおくようにの」
......ばれてました。どうみてもおじいちゃんがわたしを見て言っています。思考を読み取れるのでしょうか。やはりこのおじいちゃん、侮れません......!
「ほのかのことだからね!あからさまに嫌な顔してたでしょ!」
......わたしが単純だっただけみたいです。ポーカーフェイスです。
「あ、顔戻した。図星だったってことね」
......シーナさんが怖いです。タメ語になると性格も変わっていくのですね。人って案外簡単に変われるのかもしれません。シーナさんから人の成長を学びました。わたしも変わってみせます。
ポーカーフェイスの達人へと。
「さて、ここまでで基本属性はすべてじゃ。お次はいよいよ、赤とオレンジの話をしようかの」
待ってました!ついにわたしの魔力がわかります。
「まず名前からじゃの。オレンジは遁属性、赤は反属性といわれとる。」
「とんぞくせい?それに、あんちぞくせい?聞いたことないよ、わたし」
反属性はなんとなくわかりますね。魔法を打ち消すとかそんなところでしょう。
「反属性は魔力の扱いに関して、適性がとてもたかいのじゃ」
ん?あれ?反属性ってふつう逆じゃないでょうか?本人は魔法苦手なイメージがあります。
「反属性を極めたものは魔力を打ち消す魔法を使うことが出来る。その者の前では魔法は通じん。その様子から、実際に戦った者達が反属性と名付けたのじゃ」
なるほどです。赤って天才ですね。
魔法禁止とか肉体勝負じゃないですか。
わたし、生きていけるでしょうか。このぷよぷよの二の腕で......。太ってるんじゃないですからね、女の子らしい体つきってことですよ。そこ大事です。テストに出ます。
「じゃあ、基本的な魔法も使えるってことですね?」
「そうじゃな。基本的な魔法の適正は黄色と同等じゃの」
「ええ!すごぎますよ反属性!」
「わしも反属性はあまりみたことないのぉ」
この物知りなおじいちゃんがそういうなら相当ですね。
何万人にひとりとかでしょうか。というかその人、生まれで既に勝ち組ですよね。ずるくないですか。世の中ってなんて理不尽なんでしょう。わたしによこしなさい。
「そこのばあさんを除いて、の。」
......なんといいました?
完全に空気と化していたおばあさんが横にいました。いや、いたことには気づいてましたよ、もちろんです。ただ無視してただけですよ!
......よりひどいですね。気づいてませんでした、ごめんなさい。
「おじいさん、わたしの話はよしてくださいな」
「おばあちゃん、そんなにすごい人だったの!?」
「......なんでシーナが驚いてるのよ。知っときなよ、家族でしょうが。」
「だっていつも魔法教えてくれるの...」
ん?どうしたんでしょう。声が小さくなっていきました。聞こえません。
すると、突然シーナさんが背筋を伸ばして、
「そうはいってもですね、いつも魔法を教えてくれるのはおじいちゃんなんです。おばあちゃんは横にいるだけでしたし」
・・・
「............ふふっ」
「あー!!いま笑いましたね?白状しなさい!笑いましたね!?」
「だって今さら敬語に戻しても意味ないでしょ」
「こっちがふつうなんです!さっきのからふつうに戻したんです!」
「シーナや、いつからそんな話し方になったんじゃ?」
・・・
「え、これは.....その....」
「わしたちが出掛ける前はそんな話し方じゃなかったじゃろうに」
「えっと...その...」
えーー!これにはわたしが驚きです!あの話し方、ぽっと出だったんですか?!まさかわたしと出会って初めて使ったんですか?!
どうりでボロが出すぎると思ってました。
ぽっと出の話し方を真に受けて大人っぽいなどと言っていたわたし、恥ずかしいです。
「あーーもう!!これからは大人として!きちっとすることにしたんです!」
開き直り始めました。追い詰められた獲物は怖い。あの世界の言葉はいったいいくつわたしに教訓を授けていくのでしょう。わたしも名言を残していけるようになりたいです。
「そ、そうじゃの。大人じゃな」
おじいさん、ナイス流しです。もうめんどくさいのでこのままいきましょう。
「話を戻しますと、おばあちゃんがすごいなんて知りませんでした。.
あ.....、一応聞きますが、おじいちゃんは何色ですか?」
「わしは黄色じゃの」
「「て、てんさい!」」
「そういわれると照れるのぉ」
なんですかこの一家は。天才しかいません。
...ってことはまさか。シーナさん?仲間ですよね?一緒に負け組街道を突っ走るっていう約束しましたよね?わたしの妄想のなかで。
「し、シーナは何色なの...?」
「わたし?わたしも黄色ですよ」
「この裏切り者!」
これだから生まれからして勝ち組はずるいんです。遺伝とか、ずるすぎランキング二位ですよ!ちなみに一位は顔です、イケメンと可愛い子って絶対飢え死にしませんよ。わたしが見捨てませんもん。......顔も遺伝ですか。
「......シーナや、おまえさんは水色じゃったろうて」
「おじいちゃん!そこは孫を想ってくださいよ!」
「大丈夫じゃ。そっちの色は魔法に親しむにつれて変化するんじゃよ。魔法適正もあがっていくんじゃ。わしも元は青じゃったよ。魔法をしっかり学べば黄色まで辿り着けるかもしれんぞ?」
「そうゆう問題じゃ...」
「へぇ?シーナさん嘘ついたんだ?へぇ~?」
「.....ご、ごめんなさい。」
「今回は許しましょう。ですが、嘘は泥棒のはじまりとも言うのです。以後気をつけ、改めなさい」
わたしの宗教、ほのか教のお開きです。
教徒を増やしていきましょう。
「ほのか、うさんくさいですよ」
まさかの一蹴です。ほのか教への道は険しそうです。
「それにしても、魔法が不得手な人も大成できるってことですね」
凡人にも優しい世界です。感動しました。
凡人ばんざい。
「そうじゃ。だからの、赤は天才、黄色は秀才っていわれとるんじゃよ。
そして、奇才のオレンジ」
「奇才?どうゆうことですか?」
ついに、ええついにわたしの話です。待ってました!わくわくわくわくわくします!
さあ!わたしの神能力!教えてください!
・・・
「オレンジはの、基本魔法がすべて使えないんじゃよ」
............
おやすみなさい。
思わずふて寝をはじめるわたしです。
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