第6話 おかえりなさい

うなだれているわたしを見て、シーナさんがあわあわしています。


「ど、どうしたの?ほのか?」

「ご、ごめん。シーナの言うこと、あってると思う...」

「ええ!そんなまさか!」

「わたし、イメージ力には自信があるんだ」


そりゃそうです。現代なめないでください。瞬間移動って確か物質の粒子分解と粒子の光速移動、再合成でできると聞きました。現代科学では不可能ですが、過程を魔法がすっ飛ばしてくれるなら問題ないと思います。

知識から勝手に読み取られて実行されたのかもしれません。

..............あれ?粒子分解?わたし分解されたのでしょうか。すこし前のわたしと今のわたしは同じわたしでしょうか?哲学です。


「そうなんですね」


案外あっさり認めてくれました。わたしってそんなにイレギュラーとして認知されてるんでしょうか。


「でも、そうなると大変な問題があります」

「うん...そうだよね」


わたしも察してました。1度危惧したことだったので。


「呪文が勝手に発動するかもしれない...だよね」

「はい...」


これは大変です。もうしゃべらない方がいいのかもしれません。テレパシーっていう魔法は使えるんでしょうか。テレパシーを使えればしゃべらなくて済みます。......まさかテレパシーでしゃべった魔法も発動するなんてこと......ははは、却下です。

あれ?でも...


「しかし風魔法は発動していません」


先を越されました...でも、先を越されたことを顔にだしてはいけません。調子には乗らせません。


「ってことはイメ

「あのときははっきりイメージしていたはずです。なのに発動していません。今回はうっすらイメージしただけで発動しています。」


くっ。被せてきやがります。まだ、まだ負けません!イメージ力には自信があるので、イメージの強さは問題ではないはずです。

ってことは!


「あいしょ

「相性の悪い魔法は発動しない。属性から考えれば注意するべき魔法も限られてくるでしょう」


......わざとですよね?どや顔やめてください。はっ倒しますよ?

あ。

ポーカーフェイスです。心を落ち着かせましょう。心頭滅却です。さすがに、はっ倒すは女の子の言葉ではありません。

ここは言葉で責めます。


「ねえシーナ?その属性がわからないんだけど?」

「......あ」


そうです。あなたのせいですよ。あなたの。


「あ、いや、えっと......?」

「うんうん、そうだよね、シーナにはわかんないんだもんねー?おじいちゃん待とうねー?そうしようねー?」

「......はい」


泣きそうなシーナさんの声......

なんかわたしいじめっこみたいです。正当防衛のはずが過剰防衛で敗訴です。


「ごめんごめん」

「......今回は痛み分けです」


ちゃんと自分のしたことも考えてくれてるようです。真面目なシーナさんらしいです。


「ってことはさ、逆を言ったら相性のいい魔法はかなり簡単に発動するってことだよね」

「そうなります、使える魔法を知っておく必要があります」


んー、そうですよね。


「これ以上は聞いてみないとわからないね」

「そうですね、待ちましょうか」


そういってシーナさんと二人で雑談しながら夜まで待つことにしました。



。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。




暗くなってきました。暗いなか歩くこともないと思うので。そろそろ帰ってくると思います。

すると、噂をすればなんとやらの力が働きました。もしかしたら言霊って言う魔法かもしれません。

ドアがガラッと開きました。


「帰ったぞぉ」

「帰りましたよ」


おじいちゃん、おばあちゃんが帰ってきたみたいです。

2人とも白髪で杖を持っています。腰は曲がっていました。でもとても元気そうなおじいちゃんおばあちゃんです。

とりあえず挨拶からですね。


「はじめまして!わたし、神埼ほのかといいます!」


バッチリです!わたしは挨拶にも定評があります!


「おお!女の子じゃったか。シーナと同じくらいの歳にみえるのお」


ん?女の子だった?どういうことでしょう?


「えっと.....?わたしのことご存知だったんですか?」

「いやいや、初めましてじゃよ。しかしの、ここに向かう途中で家の方から知らない魔力を感じての」


ええ!このおじいちゃん、魔力を感じ取れるのですか?!すごすぎます!


「す、すごいですね」

「いやはや、今はただの老いぼれじゃよ」


そのセリフを言う人は大抵ただ者じゃありません。まさか実際に聞けるとは思ってませんでした。


「おじいさんは昔から魔法が得意だったのよ」

「ばあさんや、昔の話じゃろおて」

「ふふ、そうゆうことにしておきましょうか」


とても仲のよさそうな夫婦です。シーナさんが2人の時間をつくってあげたい、といっていたのもわかります。


「それにしても、ようやくシーナにも運命の相手が現れたかと思っていたのじゃが」

「ちょっ、ちょっと、おじいちゃん!」


そうです。まだそんな人はいませんよ。いかせませんよ。嫁にはいかせません。この世界の最初の友達をたかが運命の相手ごときに渡してなるものですか。


「シーナにはまだそうゆうのは早いですよ」

「ちょっと、ほのかまで何言ってるの!」

「シーナはわたしと添い遂げるんですから」

「ちょっと!」

「孫をよろしく頼もうかの」

「ちょっと!!!」


さっきからシーナさん、ちょっと、しか言ってません。そんなにその言葉が好きなのでしょうか。もっと言わせてあげます。


「はい、おまかせくだ

「刻みますよ?」




「「......」」




「「............」」




「「............すみませんでした」」


このおじいちゃんとは仲良くなれそうです。鬼の目で睨まれながらそんなことを考えているわたしです。

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