第68話 SS 第54話サロンの裏 葉月視点
サロンで菜々のカットを待ちながら、お茶に行っている葉月とウィルフレッドでしたが――
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菜々のカットが終わるのを待ちながら、本当は説教の一つもしようと思ってたのよね。私の大事な親友に何してくれてるのよ!って。
私は、菜々の想い人を上から下まで観察する。
全然あの子の好みではないけれど、客観的にはスゴイイケメンだ。
きれいな顔だし、背が高くてスタイルがよくて、なんか大人の色気もあって。こんな人から口説かれたら、大抵コロッと落ちちゃうんじゃない?
私は、怒りから来る絶対零度の冷めた気持ちで、そんなことを考える。
でもさ、菜々は気付いてないのかな。この人、めちゃくちゃ菜々のことしか見えてないじゃない。足とかヒップラインとか見せない国だなんて言ってたけど、彼が気にしてるのも見えてるのも菜々だけ。ミニスカ生足の私はもちろん、ここに来るまでにすれ違った女の子なんて、全く目に入ってないのが丸わかり。
おまけに、菜々が彼を見てないときの顔があまりにも辛そうなのだ。菜々を傷つけたことも、あの子が髪を短くしたことも辛いみたいで、この人ショックで死ぬんじゃない? って思えるくらい。半分冗談だけど、でもかなり思い詰めてる感じがする。そこまでショック受けるくらいなら、傷つけるなっていうの!
これは、私が責める出番ではないわ。
でも文句の一つや二つ、いや、三つや四つは言わせてもらったけどね。
でも素直に頭を下げられちゃったから、さすがにそれ以上言えなくなる。
ちょっと意地悪したくて、菜々の写真を山ほど見せた。
高校は共学のくせに八割男子だったから、私とのツーショット以外はほとんど男子が入ってる。
恋愛はなくても、あの子、みんなから可愛がられてたんだよ。本当に大切にしてたの!
ある意味、菜々のおかげでクラスが家族みたいになったともいえるくらいだ。
それを見せつけたかったのかな、私。
ふん。やきもちじゃないわよ。
その時サロンの上のカフェで働いてるパパが、ホテルプールのペアチケットを二枚くれた。友達の分もって。
ウィルさんが見た目も仕草も王子様みたいだからか、パパがちょっと引いてた気がするわ。
「ねえウィルさん。この国をもっと見たいよね?」
私はわざと大仰にため息をついて、ずいっとウィルさんに迫った。
「あ、ああ」
「私、明日デートなの。菜々も誘うから。――ウィルさんも菜々とデート、する? するよね!」
「え……」
「私はあの子が大事。あの子を大事に思ってるのはあなただけじゃない。見ればわかるよ。菜々のこと、好きでしょ? ならあの子を傷つけないで。大事にして。チャンスを上げるから」
「葉月?」
「勘違いしないでね、あくまで選ぶのは菜々だからね」
それで、そのまま二人で日本に住んじゃえばいいんだわ!
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