第199話再び金正恩へ
12月5日木曜日PM1:30
5億円入りのケースを持って『あたご』に降り立つ。
甲板には二階堂が待っていた。
携帯用ミサイル2基を乗員に渡すと二階堂が言う。
「お疲れ様でした」
「北の偵察総局の連中だったみたいだな。殺ったのは6人で、上の客室に身体は運んであるよ。隠岐の島に船が着いたら、一応他の乗客も調べた方がいいな」
「はい。隠岐の島にはJIAの人間が行っています。連中が今は高浜原発を占拠しています」
現金のケースを自分用の部屋に持って行く。
部屋に置かれていたSBUの戦闘服に着替えて、二階堂とブリッジに上がる。
歩きながら二階堂が言う。
「高浜は10億円でと言うことです。関電から出ます」
「テロ対策の工事がされてたんじゃないのか?」
「高浜の3号のテロ対策工事期限が2020年8月なんですが、間に合わなくても地域住民の事を考えて、規制委員会が炉を停止にはしないだろうと言う、関電の甘い考えで工事は殆んど進んでいませんでした。建設期間を短縮すると工費が上がりますから」
「関電の利益はデカイんだろ?」
「今年の3月期の連結決算は24%落ちてますが、それでも1150億円の利益が出ているようです」
「10億なんて鼻くそみたいなモンだな。犯人の要求は?」
「日本は朝鮮半島から引き上げろという事です。北朝鮮が統一国家を作りあげると・・・」
「バックに付いてるのは中国かロシアか?」
「まだ、尻尾を掴めませんが中国の線が濃厚です」
「分かった。取り敢えずは高浜だな」
「はい。今日の深夜12時迄に、韓国からの撤退の決定を総理によるテレビ放送で発表し、3日以内での自衛隊の引き上げを要求しています」
二階堂とブリッジに入ると艦長の小城が緊張した顔で敬礼する。
小城と共に奥の作戦室で座る。
二階堂が言う。
「12時を過ぎても総理の発表が無い場合は、30分毎に高浜原発の従業員を1人ずつ殺害し、都内数ヵ所に仕掛けた爆弾をひとつずつ爆破させると言っています」
「原発だけじゃないのか」
「証拠として、つい15分程前に在日韓国大使館で爆発がありました」
「警備してたんだろ?」
「はい、厳重に。大使館員は退去させていたので、建物内は無人でしたが警備の機動隊員数名が怪我をしています」
「リモコンで爆破か」
「携帯電話での操作の様です」
「爆弾の規模は?」
「建物が半壊していますので、人混みで使われたら相当の被害が出る規模です」
「北にしてみれば、どっちみち韓国は無くなるので大使館も要らないと言う事か」
小城が言う。
「仕掛けた爆弾の起爆を北で出来るとしたら厄介ですね」
二階堂が言う。
「高浜の連中だけには任せておかないと思います」
俺が言う。
「又、金正恩に会いに行くか。二階堂、ジェーンを借りて行っていいか?」
「はい。箱を使いますか?」
「何処に置いて有る?」
「戸田です」
「念のために装甲を頑丈にするように連絡してくれ。まだ、時間が有るから出来るだろ」
「すぐに連絡します」
「100キロ重くなっても構わないから」
二階堂と食堂に降りて、かつ丼を食べる。
「金正恩の居場所は分かるか?」
「分かります。ずっとマークしてましたから。今は香港に居ます。前回は自宅に居るところを襲われてますから、一昨日香港のペニンシュラに移動しました」
「香港島じゃなくて尖沙咀(チムサーチョイ)か」
「プレジデンシャル・スイートです」
「分かった。俺は戸田に行くけど二階堂も行くか?」
「行きますよ。体力は温存してヘリで行きましょう」
2人を乗せたMCH-101は『あたご』から離陸し、埼玉県戸田市にあるJIAファクトリーへと飛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます