第178話 NPA事務所
10月28日 財団事務所に行くとイチが報告に来る。司祭は無事で合同葬儀は是非にと言われたと言う。
教会の修復は後回しで、散乱した椅子等を片づけて葬儀場にする事になった。手の空いている街の人達が協力して片づけをしている。
午後1時。昼食を食べ終えたところにピーナツ売りのリンが来た。俺の元に真剣な顔で歩いて来る。
「リン。みんな無事だったか?」
「親戚の叔母さんが怪我したけど、ウチは大丈夫だった。朝6時のミサに行ってたの。トールのウチは」
「ウチは沢山やられた。でも俺やイザベルは生きてる。これから困ってる人を助けなきゃな」
リンは冷蔵庫のコーラを妹に貰って飲み、帰って行った。
午後2時。イザベルが電話を受けた。CIAマニラのマークからだった。実行犯は声明通りNPAで、声明が出されたIPアドレスでマニラからと分かっていた。
ミンダナオのコタバトから来た2人が大量のプラスチック爆弾のC4を体に巻き付け自爆したのだろうと言う事だった。破片から中国製の起爆装置が使われていたことも判明した。
マニラに隠れているNPAフィリピンの事実上の本部による計画だ。
マークに会う約束を取り付けた。30分後にアメリカ大使館の正面ゲートで待っててくれと言った。
丸ごと一羽のチキンバーベキューを買って来て食べた。
イザベルに言う。
「神様は罰を与えるんだったよな」
「トール・・・・・気を付けてね」
イザベルが俺にキスし、胸の前で十字を切った。バックパックを1つ持ち、事務所を出て裏に廻って飛び上がる。
マニラ、ロハス通り。アメリカ大使館入口から30メートル程離れて着地した。入口に向かって歩く。マークが外で待っていてくれた。
大使館の中、小さな会議室に入る。
NPA本部はキアポのチャイナタウンに在った。マニラ側から橋を渡ると行き止まりの様になり、3角形にグルリと回って元に戻るようになっている北側だ。
貴金属の店が軒を連ねる。
NPAは中華料理屋のビルの3階を事務所にしていた。2階は貿易商になっているが中国系のイスラム諜報機関の事務所らしい。どうやら3階建てのビル全部が敵のようだ。
マークに礼を言う。経費は特に掛かっていないと言うので、約束の100万ドルを払うと言うと、それは貸しにしたいと言うので承知した。
目当てのビルは簡単に見つかった。
3階の窓から室内に飛び込む。部屋には10人が次のテロの用意をしていた。数人が銃を取り撃とうとするが念力で動きを止める。テーブルの上にはC4爆弾が並んでいた。奥に大きなテーブルが有り、4人が地図を広げている。奥にいる4人以外を光の玉で倒した。加減せず容赦しない強さだ。
地図の周りの4人の動きも念力で止めた。指をポキポキと折り、今回のテロの首謀者を聞き出した。都合のいい事に2階にいるとの事だ。電話で3階に呼ばせる。
何と中国系フィリピン人でイスラム過激派だった。キッチンのガステーブルに火を点けて、顔を押さえつけて燃やす。爆発で炎に包まれた人の苦しみを味合わせてやる。3分で息絶えた。
室内に髪の毛が燃えた嫌な臭いが立ち込めるが気にしない。
悲鳴を聞きつけて2階から銃を持った男達4人が上がって来るが、全員光の玉の餌食にする。
他の4人はガムテープで拘束した。
3階の広間の横に事務室の様な場所が有った。部屋に入り透視するとすぐに金庫が見つかった。
光の玉で焼き切って扉を開ける。900万ペソと1キロの金のインゴット10個。ダイヤモンド20数個が入っていた。全部を頂く。
広間に戻り、15の死体と拘束した4人をテーブルに乗せ、真ん中に雷管が仕込まれたC4を並べた。タイマーが接続されていたので3分に合わせてスイッチを入れ窓から飛び出す。上空500メートルで下を見下ろす。
建物の屋上が吹き飛ばされるのが見えた。
そのまま上空で5分程様子を見る。1階のレストランからは客が全員逃げ出したようだ。天井が無くなった3階に銃を持った連中が集まって来る。1階の出口から4人の男達が出て来た。真ん中の1人がジュラルミンのケースを持ち、周りの銃を持った3人に守られるようにして黒いSUVに乗った。
車は爆発騒ぎを抜け出して南に向かう。橋を渡ってマニラ中心部に向かおうとしている。建物3階に目を戻すと銃を構えた男達が10人程に増えている。男達の真ん中に光の玉を撃ちこんだ。
ビルが崩壊した。
4人が乗ったSUVを追う。橋を越えてリサール公園の方に向かっている。渋滞の中を強引な運転で進む。公園向い側の小さなビルの前に止まった。
4人は車から降りてビルに入って行く。ビルの斜め上に移動して透視する。男達が乗ったエレベーターはビルの最上階である6階に止まった。
男達がエレベーターから出た。6階には他に3人の姿が見える。ライフルが2丁有るようだ。
窓から6階に飛び込んだ。車に乗って来た護衛の3人が俺に銃を向ける。光の玉で打ち抜く。部屋にいた1人がロッカーに走ろうとするが念力で止める。男が向かおうとしたロッカーを開けると2丁のライフル、AK47が有った。1丁を手に取って弾倉を外してみると弾が装填されている。弾倉を銃に戻し薬室に装填する。
ロッカーに走ろうとした男の脚を撃つ。床に倒れて悲鳴を上げる。他の3人の男達は動けない。部屋にいた3人はアラブ系の顔だった。ジュラルミンケースを持って来ていたのは中国系だ。
男達に聞く。
「他のNPAの連中は何処だ?」
誰も何も言わない。薄笑いを浮かべている。AK47で1発ずつ心臓を撃ちぬいた。床で脚を撃たれて転がっている男に聞く。
「お前も死ぬか?」
「インシャラー・・・」
心臓を撃った。ジュラルミンケースにはダイヤが散りばめられたティアラと1キロの金のインゴット10個が入っていた。
ケースを持って窓から飛び出た。
バランバンに向かって飛ぶ。事務所の裏手に着地したのは午後4時だった。
イザベルに奪って来た900万ペソとインゴットを渡す。
「教会の修復と、犠牲者の援助で使えるわね」
「金を売れば46ミリオンにはなる。全部で5500万ペソだな。不足分は財団から出してもいいし日本から送ることも出来るからな」
「ありがとう、トール。十分だと思う」
「亡くなった人は帰ってこないから・・・せめて残された人が少しでも癒されればいいな」
ダイヤモンドとティアラは日本に持ち帰って売る事にした。
二階堂に電話する。故買屋を3時間後に呼んでおいてくれと頼んだ。日本時間で午後8時だ。
娘達にも会いたい。
財団の事務所を5時に出て自宅に帰る。棺桶が並べられたレストランの建物は花で飾られていた。
オヤジと兄夫婦と弟が座っていた。兄が言う。
「マニラのNPAが襲われたみたいだ」
イザベルが言った。
「神様は許してくれないからね」
オヤジは棺桶の中の妻を見下ろして胸の前で十字を切っていた。
美沙と妹で夕食の準備をしている。日本の味付けの豚の生姜焼きだった。
家族にも評判が良かった。オヤジは爆破事件の後、初めて食べる食事だった。プチも元気が出て来た。
飛行服に着替えて6時半に裏庭から飛び立った。ダイヤモンドとティアラを持っている。
松濤の家には日本時間で午後8時丁度に着いた。パオの出迎えが激しい。
自分の部屋で着替えて故買屋と二階堂が待つ応接間に行った。
テーブルにダイアモンド22個とティアラを置いた。故買屋はティアラを見て息を飲む。ルーペを目に当てて10分以上ティアラを見ていた。ダイアモンド22個には1億6000万円。ティアラには1億4000万円で合計3億円を提示した。
二階堂がティアラは売らない方がいいと言うと、故買屋は合計額を3億5000万円と訂正した。フィリピンの財団の口座に振り込ませる。163ミリオン。16300万ペソになると言った。キアポから奪って来た5500万ペソと合わせれば21800万ペソだ。これだけ有れば十分な事が出来る。
応接間から出ると、綾香とマキが抱き着いて来た。夕食のステーキを食べた後で、久々に3人で風呂に入った。
2人のオッパイを触りながら寝てしまいそうになる。明日にはフィリピンに戻ろうと決め、腹に力を入れると湯船の中で大きな屁が出た。
綾香とマキが『信じられない!』と言って風呂から出て行ってしまった。
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