第137話 セブ・バーベキューパーティー
8月24日。朝10時。娘達と朝食を摂る。パオが足元で尻尾を振っている。ベルリッツには幸恵が付いて行ってくれる事になった。週二回で1ヶ月の授業料は分かっているので2人分で50万円を幸恵に預ける。俺は仕事でしばらく出掛けると言っておいた。
飛行服に着替えて金庫から1000万円を取り出す。ポケットに必要な物を入れ、西に向かって飛び立つ。5分で西多磨霊園に着く。事務所で花と線香を買い、少し歩いて飛び上がる。第30区画の入り口内側に着地。桶に水を入れてユカの墓を掃除して花を供える。マッチを買うのを忘れた。光の玉で線香に火を点ける。墓石に刻まれた『愛』の文字。俺は愛をいくつにも分けている。綾香、マキ、イザベル、アン、ジェーン、パオ。そして生まれて来る子供。1つ1つが大きい愛。ユカがキッチンに立ち、肉じゃがを作る姿を思い出す。墓石にキスをして立ち上がる。水桶を元の場所に戻して飛び上がる。飛行服を全身着て、フードを被る。高度1万2000メートルで南西に向かう。30分で那覇に着く。88ステーキで1ポンドのステーキを食べて再出発。更に30分後にセブ・バランバンに到着する。
飛行服を脱いで、短パンTシャツで近所の子供達に囲まれながらイザベルの元へ。立派な門と塀が出来ている。塀はクリーム色に塗られている。中で商売用の建物の仕上げをしていた大工が俺を見つけて門を開ける。立派なローカルレストランが出来ていた。ガレージの建物も外壁の仕上げはまだだが完成している。
母屋に歩く。イザベルが俺を見つけて走って来る。何も言わずに抱き着く。3分もそうしていただろうか。気が付くと家族全員が俺達の周りを囲んでいる。1人1人と抱き合う。大工が3人増えている。イザベルに聞くと、次に俺が来る前に工事を終わらせたかったと言う。母屋に入ると、工事は殆ど終わっている。俺達の寝室の工事は完全に終わっていた。部屋のシャワーも温水が出る。エアコンも完璧だ。今は他の寝室の床のタイルを張る作業だ。母屋の外壁は塀と同じクリーム色で柱部分が茶色だ。落ち着いた色でセンス良くまとまっている。タイル張りが終わると、後はガレージの壁の仕上げだけだ。2日有れば終わるだろう。
庭にはバーベキュー用のサイトも出来ていた。今晩はここでバーベキューをしようと言う。俺達の部屋に荷物を置き、イザベルに金を持たせ、ハイラックスで市場に買い物に出かける。冷蔵庫をまだ買ってないと言うのでガイサノ・スーパーに行き、パナソニックの大型の冷蔵庫を買う。45000ペソだ。市場に行き、バーベキュー用の豚肉を10キロと鶏肉を5キロ。香辛料や野菜も買う。サンミゲル・ビール(ピルセン)とソフトドリンクも忘れない。全部で7000ペソ。米は1キロ60ペソの一番高い物を選ぶ。40キロで2400ペソ。1000ペソ札の1束を持ってきていたが、あっと言う間に半分以下になってしまったとイザベルが言う。それでも助手席のイザベルは笑顔で俺に抱き着く。ガイサノではお菓子も大量に買って来ている。子供達も大喜びだろう。
家に着くと兄弟達が大騒ぎでハイラックスから荷物を降ろす。母親と姉妹はベーベキューの用意を始める。イザベルは大きな釜でメシを炊く。俺はそれを見ながら氷を浮かべたビールを飲む・・・幸せ。
オヤジが網を仕掛け終わって海から帰って来る。立派な家が出来て、金が有っても漁師を辞めない。オヤジの口癖『俺は漁師だから・・・』
いいオヤジだ。オヤジにも氷入りのビールを渡す。上下1本ずつしかない前歯を見せて笑いながらビールを飲む。
午後6時になって薄暗くなり作業が終了する。兄が自慢げに庭を照らすLED投光器のスイッチを入れる。3灯の投光器で庭は昼間の様な明るさだ。
今日は大工達も一緒にバーベキューだ。総勢18人。豚肉と鶏肉とオヤジが朝獲って来た魚のバーベキュー。魚のシニガンスープとご飯。ご飯は一升炊いているだろう。全員に配り終わって、更に炊き始める。食べ始めて30分もすると門の外で近所の子供達が見ている。門を開けて中に入れた。みんな腹が減っている。10数人の子供達が入って来る。女性陣は大忙しだ。1人の5歳位の女の子はゴハンだけ食べている。豚肉を皿に載せると要らないという素振り。イザベルに聞くと、ゴハンが美味しいからゴハンだけを食べるんだと言っているらしい。普段はみんな1キロ30ペソ位の安い米を食べているのだと言う。ゴハンにコーラをかけて、肉と一緒に食べている子供もいる。何でもいい。好きなだけ食ってくれ。
夜8時にはパーティーはお開きになった。買って来た15キロの肉は全部無くなった。
2ケース(4ダース)のビールも残りは5本だけになった。ご飯は約1升を3回炊いたようだ。近所の子供達にもお菓子を配った。
俺達は寝室へ行き、シャワーを浴びて薄いスポンジクッションの上に寝た。明日はベッドを買わなくては。イザベルのお腹の子供に影響が無いように愛し合う。
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