第134話 別荘襲撃

8月21日午前10時

3階の寝室で目を覚ます。明け方に家に帰って、久々に一人で寝た。綾香とマキは自分たちの寝室で寝ている。

 俺の寝室に掃除に入る幸恵に、3人で寝ているのが分かるとまずいのだ。娘達はしぶしぶ従った。


 2階に降りると幸恵がキッチンを掃除していた。朝食の用意を始める。娘達はどうするかと聞くので、朝食は自分らでやるので気にしないでくれと言った。神原夫婦は既に1階で朝食を済ませたらしい。神原は庭の掃除をしていると幸恵は言った。

 パンと卵の朝食を済ませ、幸恵の煎れたコーヒーを飲みながらテレビを見る。十条の焼肉屋の件は何も報じていないようだ。

 電話が掛かって来る。菅官房長官からだった。明日は俺の誕生日だがパーティーは何処でやるのかと聞く。特に予定は無いと言うと、こちらで仕切らせて欲しいと言う。断る事も無いので頼んだ。

 11時に二楷堂が迎えに来た。黒のアルファードだ。娘達の事を幸恵に頼み出掛ける。


 午後2時全日遊連の徳永と警視の松本は白のクラウンで小田原厚木道路を小田原方面に走る。後部座席には15歳と16歳の少女が乗っている。少女達は全日遊連の在日朝鮮人の若い男2人が渋谷で拾った家出少女だった。渋谷の路上に腹を空かせて座っていた2人に、男達は食事に行こうと誘い、居酒屋で食事をさせた後で部屋に連れ込み宿を提供した。2日間は少女達に優しく接し3日目の夜に二人共が身体の関係を持った。1週間を掛けて恋人同士のようになる。男達に『自分を助けると思って』と言われ、少女達は金持ちのジジイに付き合っている。


 俺と二階堂は箱根湯元のセブンイレブンの駐車場で徳永たちが来るのを待っていた。全日遊連の別荘は、この先1キロの箱根塔ノ沢にある。もう1時間も車の中にいる。助手席のシートを倒した俺を二階堂が起こす。

「ボス、来ましたよ。徳永と松本に違いないです」

目の前をクラウンが通り過ぎていく。俺はアルファードから降りて飛び立つ。上空500メートルからクラウンを監視する。表の道から逸れて細い道を150メート程走り、立派な別荘に入って行く。塀に囲まれた敷地は500坪はありそうだ。入口の門よりも母屋が高い位置にある。塔ノ沢自体が谷間なので平坦な土地が限られている。敷地は完全な平坦ではなく緩い斜面になっているようだ。白いクラウンから人が降りる。前から2人。後部からは少女2人。200メートルまで近寄り、二階堂に持たされたデジカメ、ニコンD7500を上空で構える。18-300ミリという高倍率のレンズが付いている。望遠側の300ミリで4人と車を捉えてシャッターを切りながら少しずつ近づく。最後は建物の裏に隠れるように4人の姿をカメラに収める。別荘の近くに停めているアルファードに戻りカメラのレンズを10-24ミリに替える。室内用だ。門から中年の女が出て来る。使用人か。歩いて建物から離れて行く。

 門の中に入り込み、透視する。4人は2階の寝室に入り荷物を置いて1階に下りて来る。建物の端の方に歩く。風呂だ。岩風呂の様になっている。オヤジ2人が裸になり先に入った。少女2人は躊躇っている。オヤジが少女を呼ぶ・・・少女達が服を脱いでいる。そろそろ行くか。

 二階堂を伴って玄関に向かい、念力でドアを開ける。二階堂がワイドレンズを着けたカメラを持って付いてくる。風呂場に向かう。そっと脱衣所への引き戸を開ける。風呂場の方からはオヤジ達の笑い声が聞こえてくる。脱衣かごには4人の服が脱ぎ捨てられている。

 風呂場への入り口も引き戸だ。一気に引き戸を開けて、念力で4人の動きを止める。4人とも入り口を向いて驚いた表情のまま止まった。1人のオヤジは少女を抱きかかえたまま、カメラ目線だ。こいつが徳永。二階堂がいろいろな角度から写真を撮る。4人のショット。オヤジ2人の顔のアップも忘れない。

 2人の少女の顔にはあどけなさが残っているが、1人は立派な身体をしている。念力で動きを止めたまま近寄ってオッパイを触ってみる。徳永の顔が邪魔だ。入り口の方を見ると二階堂が腰に手をあてて俺を見ている。

「もういいですか?」

「ちょっと、待ってて」

もう1人の胸が膨らんでいない少女の尻を触る・・・子供のように堅い。

「ボス! 仕事をしますよ」

「仕事は余裕を持ってやれよ・・・どんな少女が被害にあったのかも調べないと」

小さな胸を触った。二階堂が俺の写真を撮る。

「バカ、俺の写真は撮るな」

二階堂からカメラを奪い取り自分が写っている写真を見る。我ながらスケベな顔だ。消去。

念力を解放する。親父達の怒号が響く。二階堂はカメラでビデオを撮っている。

「お前らは何だ!何をやってる!」

 俺が言う。

「徳永に松本か。いい記念写真を撮らせて貰ったよ」

 現職の警視である松本が慌てる。

「俺達が誰かを分かってやっているんだな・・・待ってくれ。取りあえず部屋で話そう」

4人が風呂場から出てくる。少女達は2階の寝室に行かせ。オヤジ2人と1階のソファーで向かい合う。徳永が聞いてくる。

「いくらだ・・・いくら欲しい?」

俺は指を2本立てた。二階堂は成り行きを見ている。

「2000万か。分かった、払うからカメラを寄越せ」

「ゼロが一個足りないんだけど」

「俺と松本とで1億ずつって事か?」

 松本が言う。

「そんな金は無い」

「あんたはまだ持ってないだろ。天下りしてからが稼ぎ時だからな。徳永さん・・・あんたに2億払って貰う」

「無理だ・・・1億なら何とかなるかも知れないが」

「あんたが全日遊連からだけじゃなく、朝鮮総連からも金を受け取ってるのは分かってるんだよ。マスコミに発表しようか、何の金なのか」

・・・・ハッタリ。

「分かった・・・自宅に行けば何とかなる。クスリの事だけは・・・」

 二階堂と顔を見合わす。覚醒剤に関わっていたとは。北朝鮮から入って来る覚醒剤に便宜を図っていたと言う事だ。松本はうなだれて居る。二階堂が言う。

「松本さん。あんたも、もう終わりだ。公安ともあろう者が薬に関わっている。すぐに辞職するんだな」


 東京に向かう。二階堂が少女達を乗せたクラウンを、俺が後ろ手に手錠を掛けた2人をアルファードの後席に乗せている。俺が少女達とクラウンが良かったが、二階堂が頑として聞かなかった。

 午後4時、世田谷。徳永のマンションの近くで、ジェーンに少女を乗せたクラウンを引き渡す。徳永の部屋に行くと玄関に妻が出て来る。俺達は徳永の部下と言う事で話をつけてある。大事な話と言う事で妻を買い物に行かせ、寝室の大型金庫を開けさせる。1万円札の束。高さ10センチに重ねた札束が25個。合計2億5000万円。タバコの箱位の大きさの黒い箱。『それだけは』と徳永が手を出そうとする。軽く腹にパンチ。箱を開けて見ると沢山のSDカードが入っている。少女達との行為を撮影した物だろう。ポケットに入れる。金庫の下の引き出しを見る。マンションの権利書とダイヤの指輪が4個。1キロの金のインゴットが6個。権利書以外は全部没収。徳永が言う。

「2億って言っただろう」

金庫に近寄る徳永に『有るだけ全部だバカ』と言って俺は頬を叩く。

金庫を空にした俺達は徳永を連れて車に戻る。アルファードの中で手足を縛られた松本がグッタリしている。エアコンを切った車内の気温は50度近くまで上昇していた。

 アルファードを走らせる。次は松本の家だ。松本の家には19歳の娘がいた。娘を自分の部屋に入らせて、松本の家の金庫を開けさせる。金庫には300万円が入っているだけだ。『これしか無い』と言い張る。俺が松本に言う。

「お前がやってたように、今から娘を犯してやろうか・・・」

松本の腹を殴る。酸欠の金魚のように口をパクパクしている。言葉が出るまで待つ。

「奥に金が有る」

 金庫の内壁が2重になっていた。仕切を外すと8500万円の現金が有った。アルファードに戻る。車の中で縛られていた徳永は汗で髪の毛が顔に張り付いている。徳永のロープを解き2人に二楷堂が言う。

「徳永さん。あんたは全日遊連を辞めて総連と手を切る事。松本さん。あんたは今すぐ辞職する事。明日になってもそれが実行されていなかったら、箱根の写真をばらまく・・・いいですね」

松本は唇を噛んで下を見ている。今後を考えているのか。徳永が二階堂に掴みかかり言う。

「お前ら殺して・・・」

 徳永の腹を殴る。エビのように丸まった徳永の財布を取り上げる。中には30万円とキャッシュカードが6枚も入っている。暗証番号を聞き出すのに、腹をもう一度殴らなくてはならなかった。6枚とも同じ暗証番号だった。松本の財布には現金20万円とカードが3枚。5か所のコンビニATMで50万円を4回ずつ引き出す。2枚のカードは2回しか引き出せなかった。合計で1600万円になる。2人を解放した。


午後5時半。松濤の家に戻った。応接間で二階堂と向かい合って笑った。

35450万円と金が6キロ。ダイヤの指輪が4個。SDカード多数。故買屋が来て、金とダイヤを3700万円と引き換えに持って行く。39150万円の現金をテーブルに載せる。好きなだけ取れと言うと4150万円を二階堂は自分の方に引き寄せる。半端な5000万円を俺が二階堂の方に押しやった。9150万円を目の前に積み上げて二階堂が笑う。俺の金庫の中身が6億2400万円になった。

 口座の残高も調べて見る。定期も入れると約179億5100万円が入っていた。


幸恵の作ったハンバーグを二階堂も一緒に娘達と4人で食べる。食事が終わり二階堂は帰る。幸恵も洗い物を終えて1階に降りて行った。


夜9時を過ぎたら、呼ばない限りは2階へは上がらないように神原夫婦には言ってある。

娘達とゆっくり風呂に入る。2人の身体を触りながら箱根の2人の少女を思い出す。


ちゃんと家に帰っただろうか。朝鮮総連も痛めつけないとならない。


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