第118話 混浴

7月15日 午後1時半。

G63に乗って5人で出かける。綾瀬駅と亀有駅の中間地点にある、とんかつ屋『かつ敏』で昼食だ。俺の前のアパートに近い。よく来た場所だ。40過ぎの小奇麗なフィリピン人ウェイトレスが注文を取りに来る。この人も、元はフィリピンパブで働いていて日本人と結婚したのだろうか・・・。


とんかつで腹を膨らませて不動産屋に向かう。契約には保証人のサインと印鑑が必要だ。

さえ子が封筒に分けてあった38万円を支払い、釣りと鍵を2本受け取る。ゆうかに鍵を1本渡す。2人とも、用意してあった色違いのマスコットの付いたキーホルダーに鍵を付ける。ゆうかがキーホルダーを指に掛け、嬉しそうに見る。鍵は2人とも、キーホルダーにその1本だけだ。見ていて愛おしくなる。


環七に出て、コジマ・ビックカメラ足立加平店に行く。

テレビ・炊飯器・小さな2ドア冷蔵庫をさえ子が選ぶ。全自動洗濯機を、安い韓国製のハイアールにしようとしていたので止め、日本製の物にさせる。ガステーブルはIHヒーターが付いていたので要らない。照明器具も付いていた。明日の昼頃に配達が来ると言う。全部で約14万円だった。家具を買いに『島忠・大谷田店』に連れて行く。ダイニングテーブルとキッチン用のキャビネットを選ぶ。両方で5万円。ベッド売り場に行く。さえ子は2万円のダブルのパイプベッドを見ている。妹のゆうかは俺の家でいつも寝ているようなベッドを見ているが15万円する。ベッドと寝具は俺が別にプレゼントする。寝具と両方で19万円だった。これも明日の配送だ。

駅前のヨーカドーに行き、調理器具を買う。食器類は高いので100円ショップで買うと言う。さえ子は、まだ40万円以上あると言い嬉しそうだ。明日の午前中に引っ越しをする。荷物は服だけだ。俺が出掛ける前に送ってやれる。

買い物が終わると、夜7時になっていた。何が食べたいかと聞くと、綾香が焼肉だと言う。

借りたアパートの近くに焼肉屋があるのを思い出す。綾瀬駅から環七に伸びる綾瀬川通り沿いの『平城苑』。以前、近くに住んでいた時には高そうなので来たことが無かった。娘4人を連れて入る。

『游玄亭』には敵わないが、味はなかなかの物だった。冷麺も旨い。5人で満腹になり7万円。游玄亭の半額だ。ノンアルコールのビールで我慢した。

コンビニで缶ビールを1ダース買って帰る。娘達はシュークリームをカゴに入れた。


午後9時半。マンションに着く。買い物で疲れていた。娘達はゲームだ。部屋着に着替え、缶ビールを1本手に取る。あまり冷えていないので大きなグラスに氷を入れてビールを注ぐ。フィリピン流だ。グラスを手に持ってベランダの椅子に座る。小雨が降り出しているが視界はいい。東京の街の明かりが遠くまで広がる。

グラスを持ったまま飛び上がる。西の方に東京タワーの明かりが見える。3キロ位だろう。高度500メートル位で飛ぶ。グラスのビールがこぼれないように手で蓋をして進む。1分で東京タワーの真上に来る。タワーのテッペンに着地する。腰を下ろしビールを一口飲む・・・旨い。尻が濡れるが気にしない。ピーナッツを持って来なかったのを悔やむ。

ビールを飲み干し、部屋に戻る。娘達が静かだ。ゲームに集中しているのだろう。着ていたTシャツと短パンがビショビショに濡れている。裸になり、風呂場に駆け込む。

悲鳴と歓声。なんと娘達4人がいる。3人は浴槽で綾香は浴槽の外で身体を洗っているところだった。逃げ出そうとすると綾香に手首を掴まれ浴槽へと押し込まれる。綾香が上に乗って来る。ゆうかも笑っている。ボリュームのある、いい身体だ。横に寝られる大きな浴槽だが、5人ではイッパイ・イッパイだ。娘4人を相手にふざけまくった。全員の身体を触り、抱き着き、キスし、爆発寸前になった所で娘達は出て行った。浴槽には10センチしかお湯が残っていなかった。

10代の娘4人と自宅で混浴できるなんて思ってもいなかった。


風呂場から出て、冷蔵庫からビールを取り出し、ソファーへ。綾香とマキがソファーに座りスマホ。さえ子とゆうかはダイニングテーブルで何かを書いている。綾香とマキの間に座ってテレビを点ける。午後11時。ニュースが始まる。ビールのプルトップを開け、一口飲む。

朝鮮半島情勢だ。北朝鮮はいまだ、かなりのミサイルを持っているようだ。核と言う力を失った今、米軍が撤退した韓国に攻め入るのは時間の問題だと言う。

軍事評論家が出て来る。北朝鮮のミサイルの性能を説明する。キャスターが、東京まで届いてしまうと深刻な顔で言う。何度、同じやり取りを聞いた事か。

綾香とマキが頭を俺の膝に乗せる。俺は気にせずにビールを飲み、缶をテーブルに置く。

画面に金正恩が出て来る。『無抵抗の中国軍を攻撃して大勢を殺した米軍と日本軍を許せない』と演説する。自衛隊はとうとう日本軍になってしまった。

無意識に綾香とマキの身体を触っていた。テーブルのさえ子の方を見る。目を逸らした。見られていたのか・・・。


まあ、いいか。スケベなジジイだと言う事はとっくにバレている。



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