第88話 慶良間諸島

6月24日

クルーザーのアッパーデッキに座っている。風が気持ちいい。慶良間諸島への1時間のクルージングだ。綾香とマキもデッキのソファーに座っている。例のメッシュ生地の水着でだ。クルーザーには40代の、『海の男』と言った感じのキャプテンと助手。ダイビングのスタッフが2人乗っている。助手が用も無いのにアッパーデッキに何度も現れて、キャプテンに下に居ろと言われる。当然、娘達を見たいに決まってる。那覇をクルーザーが出て、娘達はすぐにビーチウェアを脱いで水着になった。ダイビングスタッフの2人は、30代と20代。よだれを垂らしそうに娘達を見ていた。マキはキャプテンの帽子を可愛いと言って取り上げ、自分で被って写真を撮る。キャプテンも楽しそうだ。

前島を右に見て通り過ぎる。すぐに渡嘉敷島だ。渡嘉敷島を南から回り込み、島を右に見て進む。すぐ先、左側に離島という小さな島が有る。この島と渡嘉敷島の阿波連ビーチの間で体験ダイビングをするらしい。少し先の渡嘉敷島の小さな港に船を停泊させる。いろいろな書類にサインをしなくてはならない。体調が悪くないと言う申告書。免責同意書。PADIというダイビング団体の基準に沿ってやっている。安定した船の上で体験ダイビングの講習が始まる。娘達には水着の上にビーチウェアを着させた。ダイビングのスタッフが目のやり場に困るだろう。彼らは実に親切に教える。一つ一つを彼女らが理解しているかを確認しながら次に進む。息を止めて浮上すると肺が過膨張して破裂してしまうという所では、娘達は真剣な顔になる。

スタッフの彼らの目を盗んで、クーラーボックスからビールを1本出したのを見つかってしまった。

「中本さん! ダイビングが終わるまで我慢して下さい」

「1本だけ・・・ダメ?」

「我慢して下さい」

ビールを元に戻す。娘達が飽きれている。綾香が言う。

「お父さん、我慢も必要って、いつも言ってるでしょ!」

俺を、ちゃんとお父さんと呼んでいる・・・賢いな。でも俺は我慢なんて言ったことあるか?

「お前らのワガママに俺はいつも我慢してるんだぞ」

「続けてもいいですか?」

ダイビングスタッフが言う。

「お願いします」

マキが答えた。俺の立場がないなぁ・・・。

空と海を見て、更に30分程待つと講習が終わった。

ダイビングポイントに移動する。海底に繋がれたブイにボートを固定する。珊瑚の保護の為に、アンカーの投げ入れはしていない。

ウェットスーツを着る。2人ともお尻の形がいいのが強調される。

ダイビング用のボートなので使い勝手がいい。両脇にベンチが有り、そこでタンクを装着したジャケットを着けられるようになっている。20人のダイバーに楽に対応できるボートだ。スペースに余裕が有る。スタッフ2人も器材を装着する。

マンツーマンなら安心だ。タンクを背負った娘達がペンギンの様にヨタヨタ歩いて船の後ろに行く。足にはフィンを付けているので歩きにくい。マキが先だ。ボートの縁に立ち、BCD(ジャケット)に空気を少し入れ、レギュレーターを咥えて、呼吸が出来るか確認する。マスクを押さえて一歩踏み出すように海へとエントリー。水面で待っているスタッフが、すぐにマキの体勢を整える。続いて綾香が同じようにエントリーする。ボート上のスタッフと俺もエントリーした。


水が澄んでいる。30メートル以上先までハッキリと見える。

水底には色とりどりの珊瑚が並ぶ。珊瑚の横にはイソギンチャク。その中にマキが見たいと言っていた『ニモ』がいる。正式名はカクレクマノミ。娘達が近寄ると、ニモはマスクの前まで来る。魚にしてみれば威嚇している訳だが、遊んでくれていると思っている娘達は容赦なく手を出す。スタッフが斜め上を指す。娘達が見上げると、銀色に光る魚が何百いう数の群れで乱舞している。スタッフがボードに書いて見せる『グルクン』。その後で『唐揚げで旨い』と書いて笑わせる。40分間の水中散歩は娘達にとって、あっという間に終わってしまっただろう。

船に上がってからも魚の話が続く。スタッフの魚の話に娘達は夢中だ。俺もなけなしの知識を絞り出して、ニモは初めは全部オスなんだと話す。

ビーチに上陸するので、慶良間諸島内の座間味島に向かう。8キロ程北にある島で、綺麗なビーチが沢山ある。ボートを、スクリューが水底に触れないギリギリまでビーチに寄せて降り立つ。バーベキューの道具やビーチパラソル等も降ろされる。キャプテンはボートを少し深い場所に移す。

娘達は、蛍光色のハイレグTバックの水着だ。ビーチにいる全員の目が娘達に集中する。

日本人離れした尻の形と足の長さだ。オッパイも大きい。スタッフがパラソルやチェアーを設置している間、娘二人と俺は浅瀬で戯れる。セクシーな2人の娘がジジイに抱き着いてくる・・・嫉妬の視線が気持ちいい。


バーベキューは豪華だったが、牛肉は固く、ロブスターは小さかった。殆どをスタッフにあげてしまい、刺身とチキンバーベキュー、トウモロコシを食べた。


スタッフが設置したビーチチェアーに寝そべって娘達にサンオイルを塗らせる。下を向く綾香のオッパイは乳首を除いて丸見え状態だ。マキの後方で日光浴している白人夫婦の男が、マキのTバックの尻を見ているのを奥さんに見つかり口喧嘩が始まる。


綾香が、横で見ている20代の若いダイビングスタッフに気づき『オイル要りますか』などと言っている。オイルを渡すのかと思ったら、背中に塗り始める。馬鹿!他の男の身体に触るな!と怒鳴りたいが、余裕の笑顔を見せる。


午後3時になり、キャプテンから『そろそろ』と声が掛かる。俺はオリオンビールを6缶飲んでいい気分だ。スタッフが荷物をボートに上げる。俺も、少しくらい手伝ってやろうと、畳んだビーチパラソルを持って、ボートに向かって歩く途中、足がもつれてしまい転んだ。パラソルも帽子もビショビショに濡れたが、片手に持っていたビールは無事だった。


那覇までの帰りに、綾香とマキはキャプテンにボートを操縦させて貰い喜んでいる。キャプテンはもっと喜んでいる。

ホテルに送り届けて貰い144000円を支払う。

午後5時。一日遊んで疲れた娘達はシャワーの後、ベッドで寝ている。

リビングのテレビを点ける。相変わらず韓国との問題がニュースのメインだ。

俺も眠くなってきた。娘達の間に入りこむ。綾香のオッパイを触っていたらムラムラしてくる。眠るどころでは無い。短パンTシャツのまま部屋を出て、ホテル前にいたタクシーに乗った。漁師のような雰囲気の赤ら顔の運転手。

「運転手さん。ここから近くのソープランドに連れてって」

「ソープでいいですか? 若い子も紹介できますよ。タイ人、フィリピン人、中国人、いろいろいますよ」

「それって置屋みたいな所に沢山女の子が居て選べるの?」

「そういう所がいいですかねえ」

「そういう所でお願いします」

15分も走らないで着いた。運転手もついてくる。琉球瓦の古い家。中に入ると10数人の女の子。全員俺を見て笑顔だ。目鼻立ちがハッキリしたエキゾチックな子に話しかける。

「どこの国から来たの?」

日本語は分からないようだ。英語で聞く。

フィリピンから先週来たところだと言う。お姉さんが日本人と結婚して、沖縄に住んでいる。遊びに来たのはいいけどお金が無いので、お姉さんの友達にここを紹介されたと言う。歳は18歳。フィリピンのミンダナオから。

この子にすると、ママらしきオバサンに言う。二階に部屋が有るが使うかと聞くので、使う事にする。

 運転手に1時間はかからないから待っててくれと言った。運転手にもキックバックがあるから悪い顔はしない。

 2階に上がる。屋根裏部屋だ。天井が斜めになっている3畳程のベッドマットレスだけの部屋。1階に降りて一緒にシャワーを浴びて2階に戻る。物騒なので財布は肌身離さない。

裸になると痩せている。子供みたいな体型だ。

 しかし、素晴らしかった。下で払った料金には女の子へのチップも入っていると言われたが、女の子の顔を見ていると、いろいろな事情があってここに来たのだろうと思い、1万円を渡した。花が咲いたような笑顔で喜んでくれた。


待たせていたタクシーに乗り込みホテルに帰る。運転手には1万円渡した。嬉しそうだったが、どうやっても、花が咲いたような笑顔にはならないと思った。


午後7時。娘達を起こして夕飯だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る