第86話 沖縄
6月21日 午後3時
何となく娘達が買ってきた雑誌を見ていた。沖縄の写真が出ている。
沖縄に行こう。綾香に電話する。すぐに出た。新しい携帯の着信第一号が俺だと言って騒ぐ。
「沖縄に行きたいか?」
「行きた~い!」
電話を切った。JALのホームページで探すが、明日の便のファーストクラスは満員だ。
二階堂に電話する。又、東洋旅行社から連絡があるから待ってくれと言われた。
5分後、東洋旅行社から電話。
「明日、22日の羽田から那覇行の12時30分JAL915便。帰りは25日の13時15分発のJAL908便。両方ともファーストクラスで3名分取れませんか?」
「すぐに調べてお電話します」
切れた。事務的で良い。5分後に電話。
「料金は3名様分で325000円になりますが宜しいですか?」
「はい」
「搭乗者のお名前をフルネームでお願いします」
3人の名前を伝えた。
「カードでのお支払いで宜しければ、こちらに控えがありますので、それで決済させて頂きます。チケットは今晩7時にはポストに投函出来ると思いますので、ご確認下さい」
「はい。お願いします」
簡単に終わった。娘達が帰って来る。マキが開口一番
「いつから行くの?」
「明日から3泊」
大変な騒ぎだ。ゲーム部屋になっている寝室に入り、服を持って来る。ファッションショーが始まった。まず、水着だ。寝室で着替えて俺の前まで歩いて一回りする。15歳なのに、この発育ぶりはどういう事だ。3着ずつの水着を次々に着替える。眩暈がするようにだ。次にビーチウェアだ。花柄のワンピースや色とりどりのドレスを着て見せる。最後に下着ショーだと言う。綾香が黒のTバックの下着で、俺の前で回った時は、さすがに尻を掴むのを自分で制止できなかった。
俺が恍惚としていると突然離れて言う。
「続きは沖縄でね~」
有難うございました。沖縄が楽しみです。
ホテルは那覇の『ハイアットリージェンシー』のスイートでキングサイズベッドの部屋を押さえられた。3泊で23万円だ。3人での宿泊と言う事での料金だった。
午後6時
明日から数日間は会えないのでユカのマンションに向かう。娘達には仕事だと言っておく。今日はG63を使おう。
ジュリアに慣れてしまうと、G63が戦車の様に感じてしまう。車体の高さから来る見晴らしの良さとパワーで、我儘な運転をしそうになるのを自制する。
連絡せずに、いきなり部屋を訪ねた。ユカは風呂場の掃除をしていた。
Tシャツとスパッツ姿だ。抱きしめ、黒いスパッツの尻を掴む。ユカは俺の胸に顔を押し付けて聞く。
「お腹空いてる?」
「空いてる・・・ユカを食べに来た」
「何味にする?・・・甘いの?辛いの?スッパイの?」
「味付け無し、生のまんま、刺身だな」
ユカを抱え上げる、よろけるが何とかベッドに運ぶ。確かに腹が減って来てる。力が出ない。ユカの衣服をはぎ取り、自分も裸になるが元気が無い。
ユカが気を遣ってくれる。
「疲れてるんでしょ?」
「腹が減ってダメだ・・・続きは後にしよう」
起き上がり、ベッドに背中を向けて服を着る。ユカが聞く。
「何食べたいですか?」
「ん・・・すき焼きがいいな。作れるか?」
「多分、大丈夫。初めてだけど、任せて」
2人で買い物に行く。千束通り商店街の肉屋に行く。
すき焼き用・・・100グラム、780円。
国産すき焼き用・・・100グラム、980円
安い方は脂の部分が多い。ユカが俺の顔を見る。安い方を指差して聞く。
「こっちでいい?・・・それとも、こっち?」
高い方を指差す。俺はショーケース越しに店主に聞く。
「すき焼き用に一番いい肉スライス出来ないかな?」
店主は俺の胸のあたりをチラッとを見て答える。服装で判断している。ノーネクタイの黒のアルマーニ。
「神戸牛のいいとこが有りますよ」
店の大型の冷蔵庫から肉の塊を持って来る。綺麗なサシが入った上等の肉だ。店主は説明を続ける。
「ステーキ用ですけどね。これを薄切りにして、すき焼きにしたら、口の中で溶けますよ。100グラム2000円です」
「いいですね。すき焼き用で1キロお願いします」
ユカが驚くが黙っている。彼女が肉を受け取る。俺が2万円を払って肉屋を出る。
「何で1キロ?」
「残ったら冷凍にして、肉じゃがでもいいし、又、すき焼きでもいいし、使えるだろ」
ユカは何も言わずに俺の腕を抱きながら歩く。スーパーはすぐそこだ。
白菜、焼き豆腐、春菊、長ネギ、うどん、卵。それとビールを6缶。レジで財布を出そうとする俺の手をユカが止める。自分が払うというのだ。
部屋に帰り、手伝おうとする俺をユカは寝室に押し込む。
「私が作るから、寝て待ってて」
俺をベッドに寝かせてキスすると寝室を出て行く。キッチンからレジ袋の音がする。そして止まる。静かになったキッチンを、そっと覗く・・・スマホを見ている。料理の作り方もスマホだ。一言だけ声を掛ける。
「肉は焼き過ぎないでな。焼き過ぎると溶けて無くなっちゃうぞ」
「ハーイ。大丈夫でーす」
任せておこう。
旨い! 初めて作ったすき焼きとは思えない。肉も最高だ。作った本人も、出来栄えの良さに満足している。『おいしい』を繰り返しながら食べる。食べる。食べる。すき焼きの味がしみ込んだ、うどんも旨い。
1キロ買ってきた肉は300グラム位が残った。
2人とも満腹だ。ベッドに横になって休む。ユカは5分も休むとキッチンに戻った。片付けと洗い物だろう。満腹の俺を睡魔が・・・・
ユカに起こされる。
「トオル・・・お風呂はいろ」
裸にバスタオルを巻いたユカ。いっぺんに目が覚める。バスタオルをはぎ取ろうとしたが、ユカは風呂場に逃げて行った。
立ち上がり伸びをする。腹も膨れたし・・楽しむか。
午後11時。浅草のマンションを出て自宅に戻った。
娘達は、すっかり用意を終えて、ゲーム部屋で騒いでいる。
明日は10時半には羽田へ出発だ。
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