第75話 金取引

 自分の部屋に戻る。昼だと言うのに、娘達はまだ寝ている。

 パンツ一枚になり娘達の間に飛び込む。目を覚ましたマキが抱き着いてくる。綾香が起きていないのを確認してマキにキス。

 Tシャツの中に手を入れてオッパイを触る。マキは触られたまま、俺に身体を任せている。乳首を触ると逃げられた。

 綾香も目を覚ます。強烈な抱擁。俺の上に乗って来る。俺の胸に顔をこすりつける。犬みたいだ。もう少し上に来てくれないとオッパイを楽しめない。

 いきなり明るくなる。窓の方を見るとマキがカーテンを開けて、腰に手を当てて見ている。

 はいはい、起きます。スケベはホドホドにね。いかん・・・・ジュニアが元気なままだ。


 2人が昼飯を作っている間に金庫から金のインゴットを取り出す。4個のインゴットを小型のボストンバックに入れる。ついでに100万円を財布に。残りの金を数える。32200万円と6万ドル。


 昼飯はパンケーキだった。彼女らにとっては朝飯だ。仕方ない。少しだけ食べる。

 食事が終わると2人はレオタードに着替えて出てきた。やたらセクシーだ。

 テレビを点けてDVDを再生する。『ズンバ』というエクササイズらしい。画面を見ながら踊る。体重の増加を気にしているみたいだ。だから二人ともオッパイがやたらに大きくなってきたのか。それでもウェストは細く、足もスラッと綺麗だ。2人の後姿をボーッと見る。


 午後は娘達とゲームをやった。

 レベルが低いと言われながらも頑張るが、そのうち目がチカチカしてくる。

 1時間が限界だ。


 夕食はピザの出前だ。Lサイズ2枚を3人で食べるが、食べきれない。


 SBU隊員の加島が午後7時に12個のインゴットを持ってきた。

 16個のインゴットがボストンバックに収まった。

 残っていたピザを、綾香が、押し付けるように加島に食べさせる。

 午後8時に加島とマンションを出る。加島は新橋で車を降りた。



午後9時。

 帝国ホテルのロビーで、俺と田村が純金の売主を待つ。

 山田が歩いて来る。チェックのジャケットにベレー帽。ニコヤカに近づいてくる。

 手には俺のボストンバック。

「やあやあ中本さん。お待たせしました」

「いえいえ、・・・こちらは田村さん。そして、こちらが勝山さん」

 田村に山田を紹介する。勝山とは別の同級生の名前だ。念の為の偽名だ。

「それでは、ここではなんですから部屋の方に」

 田村に部屋を取らせておいた。


 テーブルにインゴットが16個。眩く輝いている。金正恩の金庫から来たと思うと笑いが出る。田村がインゴットを手に取って見る。

「しっかりと重いですな。中本さんの紹介なんで安心して取引できますよ」

「私の方も税金うんぬんの手間が省けて助かります」

山田・・・・役者じゃねーか。

「1キロ480万円で7680万円で宜しいですね?」

田村が100万円の札束を積み上げる。振り込みかと思ったが、この方が手間が無い。

 77個の札束の一つから20枚を抜き取る。俺に渡そうとする。

「これは少ないですけど、中本さんに紹介料と言うかご足労頂いてるので」

 辞退したが、あまり意固地になるのも怪しまれるので受け取った。

 山田は、別に持ってきていた大きめのボストンバックに札束を詰める。


 山田と俺は、金のインゴットを並べて喜ぶ田村を残して部屋を出た。


 帝国ホテルの駐車場に停めたG63に乗る。バックを開け、770万円を山田に渡す。

「お前の取り分、1割で770万円だ」

 山田は札束を手に包み込むように持っている。

「すげえな・・・1日で770万円かよ」

「最初で最後だけどな」

「でもよ、何かあったらいつでも声掛けてくれよ。時間だけはあるからな」

 ショルダーバックに金を仕舞う。


 山田を『新橋駅日比谷口前』の交差点まで送った。駅はすぐだ。

 SBUの隊員達が金を待っている。加島に電話する。

 バックの中身を5760万円にする。480万円×12だ。

 手元に残ったのは1150万円だ。小さなバックに移す。


 新橋のガードをくぐり、交差点を渡る。ファミリーマートの前で加島を拾う。酒の臭いがする。飲屋街で飲んでいたらしい。

 数百メートル直進し、ドンキホーテの前でG63を停める。バックごと加島に渡す。

「中身を数えてくれ。5760万有る筈だ」

 加島が苦労して数え終わる。少し酔っているので時間が掛かる。

「有ります。5760万円。有難うございます!小田と長谷川も喜びます」

 バックを抱えて車から降りる。車の横で再度、頭を下げる。

 G63を走らせる。アンのマンション、本郷に向かう。今日は土曜日で店は休みだ。コインパーキングに車を入れる。

 1150万円が入った小さなバックから480万円を取り出して、三越の紙袋に入れる。残りは670万円だ。俺の純金3kgが670万円になってしまった。

 まあ、いいか。 古い友達を助けてやれた。バックをグローブボックスに放り込む。

 紙袋を持ってマンションのエントランスへ。アンの部屋の番号を押す・・・すぐに返事。

 オートロックのドアが開く。


 アンは夜食を作って待っていた。サバの味噌煮とみそ汁。野沢菜の漬物。

 紙袋をアンに渡す。中を見て、そのまま寝室に置きに行った。

 2人での夕食。1LDKのマンション。LDKが12畳位で、寝室は8畳位。家賃は14万円らしい。

 まだ、新しいので設備もいい。風呂場には浴室乾燥機が付き、エアコンも2台、初めから付いていたらしい。

サバの味噌煮で、ご飯がすすむ。 


 アンのベッドで抱き合った。いつもホテルだったので、全て新鮮に感じる。アンはいつもより声を抑えた。


 2時間後、コインパーキングの車に戻る。深夜の12時だ。娘達に会いたい。多分ゲームをしているだろう。帰ろう。


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