第61話 自由
6月5日 昼前に自宅に帰る。ソファーに座ると、すぐに娘達はお腹が空いたと膝の上に乗って来る。俺が部屋着に着替えてしまうと出掛けたがらないのを分かっている。
今日は中華が食べたいと言う。綾香に聞く。
「中華って、何が食べたいんだ?何を想像して中華って言ってる?」
「ウーン・・そうだな。ラーメン、餃子、マーボー豆腐・・・・エビチリ。エビチリ美味しいよね。それと・・・」
マキも言う。
「シュウマイ。あとさ、肉まんの小っちゃいのあったよね。木の器で出てくる奴」
俺が助け舟を出す。
「せいろで蒸して出て来るんだろ。ショウロンポウだな」
「それそれ・・・ショウ何とかって言ってた」
ちゃんとした中華を味合わせてやろう。G63で銀座に向かう。
『銀座アスター・銀座南店』それほどの高級店ではないが、本格的な味を楽しめる。
本店が銀座1丁目にあるが、南店の方が気楽な雰囲気で娘達に合うと思った。
メニューのランチコースを見る。3000円から6000円まで1000円刻みの設定。北京ダックが入っている8000円のコースも有るが北京ダックは好きではないので、3人とも6000円のコースを注文する。前菜からデザートまで、あっさり目の味だが、手の込んだ料理だ。娘達は牛肉の柔らかさと味に感心している。
デザートの追加注文等を入れて、23000円也。
車を駐車場に置いたまま、散歩を楽しむ。
ブティックのショウウィンドウに並ぶ服はお気に召さないようだ。渋谷か原宿なんだろう。
綾香がいきなり言う。
「オジサン。うちのテレビ小さくない?」
32インチだ。それほど小さいとも思わない。部屋が広いから小さいとも言えるが。
ちょっと前までは21インチのブラウン管が普通だった。これも時代の流れか。
「大きいの欲しいか?」
「うん。映画だって迫力で見れるよ」
「そうだな。買いに行こう」
腹ごなしに有楽町駅の向こう側にある、ビックカメラ有楽町店まで歩く。
50インチのテレビが普通に並ぶ。32インチは片隅に追いやられている。
流石に60インチを超えるとデカイ。
ソニーのBRAVIA・85インチが週末に発売になると言う。
もちろん4Kで、値段も今出ている75インチと変わらないらしい。
入荷したらすぐに配達を頼む。税込み70万円。セッティングもやってくれる。
今の32インチは寝室に置くことにする。
娘達に電気製品で欲しい物があるか聞く。ドライヤーが欲しいと言う。ダイソン。
ダイソンの扇風機を小さくしたような、輪の真ん中は空洞で、そこから温風が出てくる。娘達が一台ずつ欲しがる。2台で109000円。ついでにダイソンの掃除機も買う。Dyson V10。58000円。充電式だが60分使える。これなら娘達も楽に掃除が出来る。
人混みは疲れる。マッサージチェアー発見。一番高そうなのに座る。娘達はゲーム器を見に行った。すぐにマッサージのスイッチを入れる。気持ちいい。目を閉じる。15分でワンセットが終わる。目を開けると、店員。マッサージチェアー専門の派遣だろう。30歳位の女性。
「いかがですか?」
「いいね、コレ買う」
428000円と書いてあったが、何も言わないのに40万円丁度にしてくれた。
配達伝票を書いている時に娘達が戻って来る。
ゲーム器売り場に行く。任天堂Swichとプレステ4で迷っている。ゲーム器によって、プレイ出来るゲームの傾向が違うのは俺も知っていた。
マキが聞く。
「オジサンだったらどっち?」
「両方」
娘達が飛び上がる。ソフトも好きなだけ選ばせる。
ゲーム本体は両方で6万円位だったと思ったが、娘達が選んだソフト等を全部入れると合計で23万円だった。これもテレビと一緒に配達にする。ビックカメラでの買い物。総額150万円。
ビックカメラを出て歩く。晴美通りには出ずにJRを越え、マルイの中を通り抜ける。
マルイ(丸井百貨店)は昔は月賦屋って言われてたのよ・・・俺の母親の口癖。
首都高速の下のスペースにあるブティックも15歳の娘達には用がない。
『オバサン臭い』その一言で終わり。
数寄屋橋の交差点。何百人もが信号が変わるのを待って立ち止まる。
サラリーマン達。無表情が殆ど。同じようなスーツとバック・・・・・君たちが日本経済を支えているのは知ってるよ。ガンバレ! 上を見るな。多くを望むな。『小さな事にも幸せを感じる人』女が喜びそうなセリフ。 『シンプルライフ』『ミニマリスト』・・・気持ち悪い。言い訳の塊。
広い部屋で物を置くスペースも十分。デカイテレビに座り心地の良いソファー。服は欲しいと思ったら買う。要らなくなったら、捨てる。いいクルマに、いい女・・・今の俺。
『草食系のミニマリスト』なんて奴が雑誌に出てた。部屋に家具は何もなく、寝る時はクローゼットから出した布団を敷く。テーブル代わりの小型のスーツケース。冷蔵庫無し、テレビ無し、パソコンでテレビも見る。普段は床に座り、壁に寄り掛かりパソコンを見ている。料理は一切しないので、キッチンには調味料もない。服は季節ごとに同じ物を複数揃えて着まわす。同じシャツ4枚にパンツ2本。服装について考える必要が無くなる。埃は無いがモノも無い。食事は友人との外食以外はコンビニのパンや弁当で済ます。彼女無し。必要を感じないらしい。
素晴らしい・・・頑張ってくれ。
みんな自由。
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