第51話 パスポート
お昼のニュース。綾香が作ったチャーハンと冷凍ギョーザを焼いた昼食を食べながらテレビを見る。チャーハンも冷凍食品の餃子も旨い。
数時間前に会った、北朝鮮の母子の姿を思い出す。
『韓国での悪戯』は世界中の話題になっている。
NHK,日本の民放各局、CNN、BBC CBS。韓国国内のKBS、MBC、SBSでも、もちろん大きく取り上げてる。特にピースサインの徴用工像が人気で、各局のカメラ・レポーターが押しかけている。
アメリカ大統領トランプ氏来日のニュースが完全に押されている。
民放の画面でコメンテーターという人が喋る。
「徴用工として認められた人の多くが、その当時の写真を元に徴用工であったと認められています。その写真には痩せ細った人はそれほど多くありません。これは当時を知っていて日本に好意を持っている人、又は徴用工であった人達による仕業とも考えられますね」
他のコメンテーター。
「それもそうですが、そもそも戦時中や戦後に徴用されたり抑留された場合、普通は自国の政府に損害賠償を行うのが普通ですよね。それを国をあげて日本に請求するのは何というか。最高裁判所の決定とは、その国の正義を表しているとも言えますからね」
司会者。
「確かに、日本人のシベリア抑留者には日本政府から保証金が出ていますね。旧ソビエト側は謝罪をしただけです」
番組に参加しているコメディアンが言う。
「まあ、しょうがないんですよ。日本は戦争に負けた訳だから。日本が戦争に勝ってたら、マッカーサーなんて戦争犯罪人ですよ。今の自衛隊は『令和天皇軍』になってますよ。負けは負け。良かったのかも知れない。でも韓国みたいに、『取れるものは何度でも取ってやれ』なんて国は無視すればいい。1965年の時点で3億ドルもの資金まで受け取っておいて、あれはアレ。これはコレなんて、恥知らずもいいとこでしょ。向こうに出てる日本企業は大変だろうけど、国交断絶も結構・・・でも、『日本のメシはうまかった』なんて徴用工の銅像に張り付けるとは、これやった人、いいセンスだよね。お笑いになれば売れますよ・・・」
コメディアンが一番まともかも・・・二階堂氏はJIAを辞めてお笑いか。
スパイ出身のコメディアン・・・おかしい。
テレビを消してベットへ・・・昼寝だ。
チャーハンも冷凍だったと聞いてガックリと力が抜ける。
誰かがベットに潜り込んでくる。外は暗くなっているようだ。
「何時だ?」
綾香が言う。
「7時位かな」
俺の上に乗ってくる。オッパイの感触が俺の胸に・・・当然の反応でジュニアが。
「マキは?」
「コンビニ・・・どっか遊びに行きたいな」
胸を押し付けて左右に動く。もろの感触。顔が近い。
足は開き、俺に跨るようになっている。甘えて首に抱き着き前後に身体を揺する。
元気になったジュニアが綾香の股間に当たっている。モロに。分かっているのかな。
「どこでもいいんだけど」
さらにカラダを前後に揺する。オッパイの感触と下半身が・・・・声が震える。
「そ・う・だ・な・・・・後で3人で考えるか」
「うん!」
元気よく起き上がってリビングに出て行った。立ち上がりざまに俺の元気になったジュニアをギュっと握っていく。このやろ。やっぱり分かってるのか。
夕食はマキが作ったカレーライス。鶏肉が柔らかく旨い。
話題は当然、どこに遊びに行くか。
今はいろいろ忙しく、何日も出かけては居られない・・・と、思っていたが、出かけようと思えば出かけられる。やっぱり海外のリゾートかな。
マキのパスポートが問題だった。また隠れて飛ぶのは娘達も望んでいない。
パスポートを作らせよう。時間が掛かるのは仕方ない・・・でも、一応聞いてみるか。
二階堂に電話した。かなり忙しいようで他の者から連絡をさせると言って電話が切れた。
すぐに電話が掛かってくる。若い男。
「二階堂の下で働いております『菊池』と言います。何でも言いつかるように言われております」
「15歳の女の子のパスポートを至急作りたんだけど」
「畏まりました。写真を撮りに伺いたいのですが、中本様のご自宅で宜しいでしょうか?」
「いいですけど・・用意するものとかは・・・」
「結構です。何も要りません。今晩これから伺っても宜しいですか?」
「はあ」
「それでは2時間後に係りが東洋旅行社と言って伺います。」
電話が切れた。何だか凄い。スパイ映画では、エージェントが沢山のパスポートを持っているが、そんな感じか?
午後10時。東洋旅行社の係りが来た。さっきの男、菊池ではない。年配だ。
ダイニングテーブルに俺と男が向き合う。マキは隣り。綾香はソファーだ。
「誕生日はどうしますか?」
マキが答える。
「2003年11月11日ですけど」
「そのままで宜しいですか?」
男が俺を見る。
どういう事だ・・・いつでもいいのか。俺が答える。
「えっ・・・じゃあ2000年にしといて」
今、18歳と言う事になる。
「2000年11月11日ですね。パスポートには記入されませんが、本籍地と住所はこちらで宜しいですか?」
マキが答える。
「はい。ここがいいです」
マキの写真を撮る。男のデジカメをマキが何度もチェックする。7回目でマキのOKが出た。
「それでは、明朝9時までにパスポートをポストに入れておきますので、ご確認ください」
「はい・・・」
帰って行った。こんなのアリか? 料金の話もしていない。
マキが言った。
「旅行社ってサービスいいね」
娘達はスマホで行き先探しだ。綺麗な写真を見つけては大騒ぎしている。
いろいろな候補地が出てくる。しかし、それ程遠くには行きたくない。
日程は3泊か4泊。
綾香はハワイに、マキはパリに行きたいと言ったが飛行時間を言うと、あっさりと、他にすると引き下がった。
俺はフィリピンに行きたかった。もしかしたらイザベルに会えるかも。二階堂に言えば何とかなるのではないか・・・等と考えていた。
豪華なホテルや綺麗なビーチの写真を見せて、半ば強引にフィリピンに行くことが決まった。綾香が嫌がるかと思ったが、意外と嬉しそうな顔で安心した。
航空券はマキのパスポートを確認してからだ。
当たり前のように3人で寝る。若い2人は寝相があまり良くない。朝までに、必ず一度は膝蹴りで起こされる。
5月26日
朝9時に起きてポストを確認に階下まで降りる。
『東洋旅行社』と社名入りの封筒が入っている。そのまま部屋に持って上がる。
ソファーに座り封筒を開けると、赤いパスポートが出てきた。正真正銘のパスポートだ。
2000年11月11日生まれ、18歳になったマキが微笑んでいる。
インターネットでJALのサイトからマニラ行の便を探す。
今日の夕方の便が見つかった。
17時55分成田発、21時35分マニラ着
帰りは29日 14時25分マニラ発 19時55分成田着
ビジネスクラス往復、3人で約40万円だ。
3日先なので、帰りのチケットの方が安かった。予約する。
続いてホテルを探す。
アゴダのサイトを見る。マニラで、値段の高い方からの順番で表示させる。
星の数を5、口コミ評価を9以上。エリアをマニラ湾とマラテに設定する。
オカダマニラというホテルだけがヒットした。
金色に輝く豪華なホテルだが、場所が気に入らない。
以前泊まったパンパシフィックホテルを思い出した。
もしくはダイヤモンドホテル。どちらもマニラのマラテエリアで勝手知ったる場所だ。
遊びや買い物にも不自由しない。しかし、アゴダでは空室無しだ。
思い切って東洋旅行社に電話した。
「ゆうべ来てもらった、中本ですが」
「おはようございます。パスポートはご確認されましたでしょうか?」
「はい。有難うございます。ホテルの予約は出来ますか?」
「はい。日程と場所はお決まりでしょうか?」
「今日から29日までの3泊。マニラのマラテで、パンパシフィックかダイヤモンドホテルのスイートを取れないでしょうか?」
「畏まりました。折り返しお電話いたします」
電話を切った。5分後に電話が掛かってくる。
「両方とも本日しかスイートが取れません。27と28日はVIPの方の予約のようで、動かせませんでした」
「取りあえず今日の分だけ予約をお願いします。請求は私の方にお願いします」
「畏まりました。パンパシフィックの方で宜しいでしょうか?宿泊料金は12万円になります」
カードの番号等を言った。それで予約が終了した。今晩はマニラ泊だ。
明日からの行動を考える。ボラカイ島を思い浮かべる。白砂のビーチが延々と伸びている写真を見たことが有る。
グーグルマップを見る。マニラから300km位だ。マキさえ誤魔化せれば簡単に飛べる距離だ。
再びアゴダをチェックする。シャングリラホテルが良さそうだが、街から離れている。
しかし、他のホテルとはレベルが違うようだ。まあ、街から離れている分、静かで良い筈だ。シャングリラホテルの一番高い部屋、1ベットルーム・プールヴィラを2泊予約した。2泊で12万ペソ、その他税金等。全部現地払いだ。
娘2人が起きてきた。時計を見ると11時半だ。
ボラカイに行くぞと言い、ビーチやホテルの写真を見せた。歓声があがる。
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