第36話 CNN

竹島で韓国船を撃沈して直ぐに、韓国政府は日本政府への抗議を申し立て、これは日本軍による戦争行為だと言い、韓国国内のテレビでは、アメリカがどちらに付くかが話題となった。


韓国では日本企業の殆は襲撃に合い、社員を帰国させた。大使館からも全員退去させる。


日本政府は、竹島の襲撃には関与していないが、日本の領土である竹島周辺に韓国の軍艦がいることが、そもそも間違っているとアナウンスした。


海上自衛隊幕僚長の鈴木がテレビの画面に写っている。隣には河野。

鈴木が言う。

「韓国側は当方のP1哨戒機が攻撃をしたと言っておりますが、P1は哨戒機であり、艦船を撃沈出来るような装備は積んでおりません」


チャンネルを変える。

何とか評論家というオヤジが、知ったげな顔で話す。『何があっても武力行使はいかん。憲法を守らなくてはいかん。戦争の悲劇を忘れずに政治的解決を』と声高に叫ぶ。

常識の通じない国が有るのを分かっていない、ただの作家だ。

胸くそ悪くなりテレビを消した。


娘達はお台場に遊びに行っている。

平和な午後3時。

小遣いを1万円づつあげた。

口座には8億円が入金されている。

残高が約123900円。

とうとう12億を越えた。

金庫にも21700万円以上が残っている。


携帯が鳴る。

ジョンからだ。ジョンからと言うことはCIA からだ。午後4時からのCNNを見てくれと言って電話を切る。

テレビのチャンネルをケーブルテレビのCNN に合わせてソファーに寝転がる。

高級外車屋のコーンズから届いたカタログを広げる。熱海で見たベントレーが頭に残っている。

午後4時になりアナウンサーが興奮した声でしゃべる。早口の英語で聞き取れないが、画面を見ると竹島上空からの画だ。

引きの画では、自衛隊のP1と竹島、韓国の軍艦4隻と漁船が写っている。P1は、かなり離れているのが分かる。

軍艦からのミサイル発射が、鮮明に写し出される。ミサイル全てがP1に到達前に光の玉となって消える。再度ズームアップした画像では、韓国船からミサイルが発射される様子がアップで写される。

P1からは、何も発射されていない。

そして、韓国軍艦が次々に燃え上がり、続いて、高射砲を撃っている漁船が爆発する。

俺の姿は小さな光の粒になっている。P1と韓国船の直線上に光の粒はいない。

上手く編集したもんだ。


解説者がしゃべり始める。

UFOなんて言葉が出てくる。

ジョンから電話。

解りやすい英語で話してくれるから楽だ。

「トール。見ましたか?」

「見たよ。衛星からか?」

「NSAの衛星を竹島に張り付かせておいたからね」


アメリカNSA の衛星からは、路上で広げた新聞が読めると言う噂だ。人の顔の判別くらいは100%確実だと言う。


「流石だね。まあ、竹島の件はフィリピンと引き換えで、そっちが始末する約束だったからな」

「ギブ アンド テイクだよ。CNNのは」

「調子いいこと言うなよ」

「トール・・・日本は狭くないか?」

「どういう意味だ?」

一呼吸おいてジョンが言う。

「うちに来ないか?」

「誰からの誘いだ?」

「うちのヘッドからだよ。トールとうちが組めば世界を変えられる」

「CIA 長官からの誘いか・・・おれも偉くなったな」

「どうだ?条件はトールの希望が通ると思う。考えてくれないか」

「悪いけど、アメリカ中心に世界を変える気は無いよ。日本人としての『愛国心』ってのが有るからな」

「そうか。分かった。気が変わったら、いつでもウェルカムだからな」

電話が切れた。


ベランダに出て外の景色を眺める。

東京の街が一望出来る。

『世界を変える』か・・・

そんなに大きな事は考えていない。

俺は自分の周りで見た事、聞いた事で、腹が立つ様な事で力を使って、役に立って、楽しく、刺激的に生活出来ればいいと思っている。


「オジサン!早まっちゃダメ!」

綾香が俺に抱きつき、娘達4人掛かりで、部屋に入れられる。

さえ子が叫ぶ。

「私達が居るんだから・・・オジサンは1人じゃないよ」

俺が自殺でもすると思ったのか?

ミキとゆうかは俺の手を握っている。

綾香が俺にキスする。

他の3人も次々にキスしてくる。


俺はソファーに座ってテレビを眺めた。

韓国政府は、CNN の映像は編集済みの物で信憑性が無いと言う。。

ミサイルの発射シーンはアメリカ映画お得意のCGだと言いきっている。


アメリカと韓国の関係に完全な亀裂が入った。


ダイニングテーブルで娘4人が話している声が耳に入る。さえ子の声だ。

「中高年の自殺が多いんだから。特に離婚した男。みんな気をつけようね」


アリガトウございます。心配してもらって。

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