第35話 撃沈
朝9時。市ヶ谷の防衛省からヘリコプターで厚木基地に向かう。河野が一緒だ。
20分も掛からずに厚木基地に到着する。
米軍と海上自衛隊の協同使用の基地だけあって、米軍のマークを付けたジェット機、F35も数機見える。
ヘリコプターから降りてキョロキョロしている俺の背中を河野がジープに押す。
いくつかのハンガー(格納庫)の前を通り過ぎ、比較的大きな飛行機の前で止まる。
ジェットエンジンが4つ付いている。
近くで見るとデカイ。
全長38メートル。幅約35メートルのP1哨戒機だ。
2018年12月に、竹島で韓国軍から灯火管制レーダーでロックオンされたのと同じ飛行機だ。
搭乗口の前に並んだ数人の自衛隊員が河野と俺に敬礼する。いや、河野に敬礼か。
海上自衛隊ナンバー2の河野も同乗しているので、普段よりも緊張感があると、クルーの一人が俺に囁く。
機内後部に座らされる。
機内前方は機械だらけだ。
機長、副機長、タクティカル・コーディネーター、ミッションクルー。
俺が興味を持ったので、機長が来て紹介してくれるが覚えてられない。
離陸後、約1時間で竹島に近づく。
河野と俺は席を移動し、機内のモニターを見つめる。
クルーが、これが竹島だとモニターを指差す。
ズームアッブしていくと、戦艦が4隻。
中型漁船が3隻。全部戦闘用と考えていいだろう。
哨戒機P1が竹島に近づき、島を中心に旋回し始める。
高度500メートル、敵艦との距離1000メートル。
突然ブザーの様な警戒音が鳴り、クルーが忙しくなる。機長が無線に怒鳴る。
河野が拳を握りしめる。
「又だ。ロックオンされた」
「撃ってきたらどうする?」
「ミサイルだと、間違いなく撃墜される。一斉に発射されたら、この機のフレアも役にたたない」
フレアとは、ミサイルに追尾された際に落とす、囮のマトだ。
「俺が撃墜はさせないけど、撃ってきたら、あちらさんを攻撃するのか、しないのか」
河野が俺の目を真っ直ぐに見て言う。
「全部、沈めて欲しい、出来れば」
河野は即答した。
始めからその気か。
クルーが俺達の会話を口を開けて聞いている。
「いくら?」
「3億」
「8億だ。戦艦一隻2億。漁船はサービス」
「・・・分かった。予算オーバーだが、仕方ない」
「この飛行機、1機いくらするのよ。100億じぁ買えないでしょ」
「鋭いな」
戦闘に備え、ポケットから出したオニギリを食べる。コンビニで買ってきた『日高こんぶ』のオニギリだ。
食べ終わり、ドアを開けてもらい、俺は戦闘体勢を整える。
風が吹き込む。
クルーの絶叫が響く。
「ミサイル確認!接近中!」
ドアから飛び出る時にさけぶ。
「支払いは今日中でヨロシク!」
飛んで来るミサイルが見える。
300メートル。
光の玉を撃つ。爆破。
P1は竹島との距離を保って旋回する。
敵の艦隊とP1、両方を視界に捉えながら距離を保って飛ぶ。
新しい戦闘服が、なかなか良い。
別の船からのミサイル3発。
光の玉の餌食。
花火の様に炸裂する。
さらにミサイル。爆破。
敵艦全部からの攻撃を確認した。
こっちの番だ。
敵の上に位置を取ると、真下に向かって大きな光の玉を撃つ。
艦橋近くの前部デッキに大きな穴が開く。
炎を上げて爆発する。
4隻とも同じように始末する。
高度を落とすと、3隻の漁船が逃げながら俺に発泡してくる。高射砲だ。
避けていたが、一発の銃弾を肩に感じる。
ああ、新品のジャケットが・・・
光の玉で3隻とも、ほぼ同時に爆発し、粉砕される。
P1に戻る。
ドアをクルーが閉じる。
河野が俺の両肩を掴み揺する。
「話に聞いていた以上だ。あなたは素晴らしい兵器、じゃない兵士だ」
機内のクルー全員が拍手する。泣いている者もいる。
「ども・・・いつもの銀行口座で。税金は掛からないようにタノンマス」
「分かってる・・・素晴らしい」
河野は涙を流さんばかりに興奮している。
1週間後、大使館員、日本企業駐在員、殆ど全ての韓国在住者が日本に引き上げていた。
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