第34話 竹島への準備
午後3時。熱海温泉から娘達と帰ってきた。
途中、網代で干物を買ってきた。
娘達は温泉饅頭を買った。
ゆうべの露天風呂では、混浴以上の事は起きなかったが、寝室に入ってから、綾香が俺の布団に潜り込み、抱きついて眠った。
マンションの部屋で一休みし、上野に向かう。昭和通りの裏手にあるコインパーキングにAMGを停める。
革のライダースジャケットとパンツ、グローブを買う。これで今までの革ツナギよりは、普通に見える。グローブを追加したのは、指紋にも注意しようと思ったのだ。ショートブーツも買う。
全部、最高の物を選ぶ。安物と比べると、革のしなやかさが全く違う。総額42万円。
上野まで来たら𠮷原がすぐ近くだ。
行かない手はない。
いつもと違う超高級店。120分で総額10万円。
女の子の写真を見て選ぶ。
スレンダーな体型の21歳。可愛い。
『何で、ソープなんかで働くんだ』
裸で説教しそうになる。俺はただのバカオヤジだと反省。
露天風呂のさえ子を思い出す。
そしてソープで空腹だ。
準備の悪さに、再度反省。
前回の様に、ソープで寿司を食べるのも嫌なので、ベッドで話をして過ごす。
午後7時
ソープを出た車の中で、ダメ元でアンに電話する。中央通り、上野広小路の路上。
一緒に食事をと考えた。電話に出ない。
3分後、折り返しの電話。
「何で前もって連絡してくれないの? 今、嫌な客と同伴で御飯食べてるとこ・・あとで来てね」
車のすぐ前の歩道にいい女。日本人ではない。身体が自然に動く。
車から降りて声を掛ける。
「何してるの?」
「トモダチ、マッテル」
「そうか。この近くで仕事してるの?」
「シゴト アル オミセ」
何となく親しみのある顔。
「フィリピン人?」
「ソデス」
おれの車を見る。
「ベンツ カッコイデスネ・・・オミセ クル スルカ?」
彼女が待っていた友達が来る。それほどいい女ではないが、足は綺麗だ。
「お店何処なの?」
コインパーキングまでフィリピーナ2人を乗せて行き、そこから歩いて彼女達の店に行く。
上野仲町通り。
飲み屋の看板が、ビルの壁を埋め尽くしている。フィリピンパブ、中国人パブ、キャバクラ。小さな大衆銀座だ。
一軒のビルに入り、エレベーターから降りると、もうそこはフィリピンパブの中だ。
時間が早すぎて客は誰もいない。
女が着替えて俺の席に着く。
黒のミニのドレス。
「キャンディデス ヨロシクネ・・アナタ ナマエワ ナンデスカ」
「俺はトール。宜しく。日本は長いの?」
「マダ ニネン・・・デモ ニホンゴ ムズカシヨ」
2年も日本に居るって事は、日本人の旦那が居るってことだ。或いは偽装結婚。
「難しいか。でも上手だよ、日本語」
「アリガト マイニチ ベンキョデス・・・アナタ エイゴ ダイジョブ?」
「英語?全然ダメ」
片言の日本語の方が面白い。
キャンディは28歳。フィリピン・ミンダナオ島から。2人の子供は母親が面倒をみている。2年前に偽装結婚で入国。戸籍に入れてくれた男には月に5万円を払っている。その他、偽装結婚のエージェントにも月々5万円を払っている。エージェントには100万円を越える借金が有るという状態で入国してくる。もうすぐエージェントへの借金が終わると言った。
レディースドリンクを4杯飲ませ、腹が減っていたのでフライドチキンやピザをオーダーする。
電話番号の書いてある名刺を貰って店を出た。
2時間店にいて、支払いが18000円。
2万円払って、釣りはキャンディにあげた。
アンの店は座ったら3万円だ。時間制限は無いが、だらだらと無料のハウスボトルを飲む、長居の客は嫌われる。もっとも、そんな客に会った事は無いが。
長居するならバンバン金を遣えって事だ。
明日の竹島への出発時間が早いので、銀座には行かずに帰宅する。
寝室で、買ってきたジャケット等を着てみる。動きやすく、ポケットが有るのが便利だ。
綾香が寝室に入ってきて一言。
「オジサン暴走族だ!」
今どき、暴走族が革の上下なんか着るか!
明日は偵察と言う事だが、何が起こるか分からない。
軽く興奮。
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