第25話 襲撃 2

有料道路を降りて『アギナルド・ハイウェイ』と呼ばれる渋滞路をしばらく走ると、右側にSMバコールが見えてくる。SMとはシユーマートの略で、ローソクや鞭とは関係ない。

SMを過ぎてすぐを左に曲がる。程なく塀でかこまれた分譲地のゲートが見えてくる。

警備員の詰所がある。

近ずくと、詰所の後ろで警備員が2人倒れている。イザベルがバックから銃を取り出しスライドを引く。弾が装填され、引き金を引くだけで射てる状態だ。


イザベルを車に残して様子を見に行く。

警備員は2人ともナイフで殺されていた。

クルマに戻る。

この分譲地の中にCIA のセーフハウス(避難場所)のひとつがあるらしい。

イノーバをゆっくりと進め、セーフハウスからワンブロック離れた所で停める。

2人で車から降り、周りを警戒しながら歩く。イザベルは手に銃を持っている。

イザベルが一軒の家を指差す。緑の壁と白い屋根の平屋だ。

透視して、イザベルに告げる。

「家の中には、既に殺されたと思われる男女2人が床に横たわり、1人は椅子に縛られている。倒れているのは2人共フィリピン人。椅子に縛られているのはアメリカ人か。

周りには5人の男。東洋系の顔。多分中国人。3人が銃を持って窓の外を警戒している。1人はソファーに座り、椅子の前に立つ男の手にはナイフ。ソファーの前のテーブルに銃が2丁」

「本当に見えるの?」

イザベルを見て言う。

「白のブラジャーに黒のTバック。Tバックの正面には蝶の模様」

ひと呼吸置いて、ホッペタを叩かれた。

「信じてあげる」

信じて貰えて嬉しい。

前屈みになって進むイザベルのTバックの尻が堪らない。

イザベルに顔を寄せる。

「イザベル・・・俺は向こう側に廻るから、2分経ったら、こっちの窓から見える奴を撃ってくれ。向こう側の窓の奴は、君のタイミングに合わせて俺が始末する」

「その後は?」

「俺が直ぐに中に踏み込む。あとは臨機応変にだ」

イザベルが頷く。

今度は俺の唇でイザベルの口を塞いでやった・・・股間が。


建物の向こう側に廻る。窓からは1人しか見えないが、カーテンの向こうに立っているのがはっきりと分かる。

そろそろ2分だ。銃を持つ2人と椅子の前の男を同時にやってしまおう。

神経を集中する

イザベルの銃の音

光の玉を殆ど同時に3発

4人が倒れる

ソファーの男がテーブルの銃に手を伸ばすが浮き上がり逆さになる


玄関前に立ち、イザベルを呼ぶ。

イザベルが銃を構えて走ってくる。

「鍵持ってるのか?」

彼女がポケットから出した鍵を俺に寄越す。鍵を鍵穴に差し込む俺の横で、銃をかまえている。

念力で浮かせている男を床に頭から落とす。

大きな音が響き、イザベルは姿勢を低くする。ドアを開けると、ソファーにいた男は首を押さえて苦痛の声を漏らしている。


イザベルは、縛られていたアメリカ人を解放し、俺は奴等の銃を集めた。

うめき声を漏らしている中国人を椅子に縛り付ける。


アメリカ人が礼を言う。30代後半だ。『マーク』だと名乗る。

彼は殺されたフィリピン人2人を見るが、表情を変えない。

冷たい奴だな。殺されたのは、ここの管理人として働いていた夫婦らしい。

俺が光の玉で倒した3人が気絶から覚める。

マークがイザベルの銃を取り1人ずつ眉間に銃弾を打ち込む。

イザベルの顔を見たが、彼女も表情を変えない。それどころか俺に告げる。

「トール。やる時は手加減しないで!」

はい・・・初めて下の名前で呼んでくれた。


2人で神妙な顔で何やら話している。時々俺の方を見る。俺の事?


イザベルが慌ててカビテのセーフハウスに向かったのは、キアポ教会から帰った後で、スマホにカビテからの着信履歴があったが、何度掛けても繋がらなかったからだと言った。

キアポ教会で襲ってきた内の1人をセーフハウス周辺で見掛けた事をおぼえていたのもポイントだ。


今、必要なのは、仲間を守ることだった。中国人に仲間3人の素性がバレてしまったらしい。それぞれマニラから車で2時間程の、中国との問題で揺れているスービック元アメリカ海軍基地に2人と、クラーク元アメリカ空軍基地に1人が一般人を装って潜伏している。


カビテのセーフハウスを、イザベルと俺はすぐに出だ。死体の後始末は心配ないとマークが言っていた。とりあえずマニラの部屋に戻る。


帰りの道中で空腹になり、腰の痛さが我慢できずに後ろの席で横になリ、眠ってしまった。

夢の中で、イザベルのTバックの尻に抱きついていた。『イザベル』と声を掛ける。いきなりビンタをくらい、顔を見たら綾香だった。どこまでが夢か分からない。

イザベルのクールな表情がミラーに写っている。


俺の前には旨そうなチキンアドボ(鶏肉を酢と醤油と砂糖で煮たような)と野菜炒めに揚げ春巻きが並んでいる。

ロビンソンモールの3階にあるフードコートだ。ご飯も俺は2人前だ。遅い昼メシ。

ここは安くて旨い・・・不味い物も有る。

向かいに座っているイザベルも一緒に食べる。

「トール、よく食べるね。もしかしてお腹空いてるとパワーが無いの?」

「そう、だから今夜はイザベルを食べる」

テーブルの下で足を蹴られた。


イザベルは10分毎にスマホをチェックする。スービックとクラークの2人の居場所が分かったらマークから連絡が有るのだ。


完全に潜伏しているので普通には連絡がつかない。











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