第22話 マニラの夜
イザベルをホテルの部屋に先に入れ、ドアを閉じて振り向くと、強烈なバンチをもらった。ドアに後頭部を打ち付けた。
腹が減っていた。
意識的が遠くなり床に崩れ落ちる。
何で殴るんだ、イザベル・・・
目が覚める。鼻血が出ていたようだ。
ベッドから少し離れた椅子にイザベルのうしろ姿。
「イザベル・・・」
しかし、振り返った顔は典型的なフィリピン人。
浅黒い丸顔の真ん中に、お団子の様な鼻がデーンと居座っている。
「あっ、起きただか。まだ寝とけ」
という感じの、かなり訛りのある英語でこたえる。
お団子が電話を掛ける。
5分後、イザベルが戻ってくる。
ベッドから起き上がった俺を見下ろす。
腰に両手をあてている。
「聞いていた話しとは、だいぶ違うようだけど」
怒ってるの?
「そうだろうね。美人には弱くて・・・」
「本部に聞いても、あなたに間違い無いっていうし」
「とりあえずさ、分かり合うことが必要だと思うんだ。食事に行こう」
イザベルは腰にあてていた手を腕組みに変え、どうしようもないという感じで下を見てため息をついた。
和食レストラン「日本橋亭」
マニラで和食が恋しくなると、たまに来ていた店だ。
残念な事に、お団子も付いて来ている。
2人が食べられそうな物を注文し、俺は刺し身盛り合わせ、餃子、ご飯と冷奴を注文した。
ガツガツ食べる俺を見て、イザベルは呆れている。あまり手を動かさない。
お団子がイザベルの分にまで手を出す。
「あなたには、明日ホテルをチェックアウトしてもらいます。滞在場所はこちらで用意してあります。10時にはチェックアウトを済ませてロビーで待っていて下さい」
「オーケイ」
涙が出てくる。わさびをつけすぎた。
俺がビールを注文するとイザベルは立ち上がり、お団子を連れて出ていった。
食事代は殴ったお詫びだと言って払ってくれた。
隣のテーブルには、可愛いフィリピーナを連れた日本人が楽しそうにしている。
KTV(フィリピンパブ)に、食事後に同伴だろう。
今晩は自由だ!
急に元気が出てきた。
日本から持ってきた100万円の内10万円をポケットに入れてきているので両替屋に行く。
47000ペソ。今夜の軍資金には十分過ぎるほどだ。
マビニ通りを南に少し歩くとKTVの立ち並ぶエリアだ。客引きがすぐに寄ってくる。
エントランスが600ペソ、指名が300ぺソ、レディースドリンクが300ペソ。税とサービスチャージで20%。
客引きの持っているボードの女の子の写真を見ていると、客引きはサービスチャージはサービス!と、言ってくる。
こっちは何も言ってないのだが。
一生懸命なので、客引きの店に入る。
ママらしき人が来て指名を聞くので、無いと言ったら
「ショーアッブ!」
と声を張り上げる。
女の子達がゾロゾロとおれの前に20人並ぶ。
みんなが笑顔でこっちを見ている。
細身で足の綺麗なショートカットの子を選ぶ。話をして、ちょっとお触りもして、普通に楽しんだ。
女の子に三杯飲ませて2000ペソ。
マニラの日本人向けKTVは、基本的に持ち帰りは出来ない。楽しく遊ぶ場所だ。個人的に親しくならないと、その先は無い。
店を出て一本東側のアドリアティコ通りに出る。この、通りもKTVが立ち並ぶ。
女の子が通りに並んでいる店も有る。
大きめの店に入る。
システムの説明を聞き席につく。
またもや目の前に並ぶ中から好みの子を探す。
肉感的だが、あどけない顔の子を選ぶ。
名前は「エリ」20歳。
隣に座ったエリのミニドレスから伸びる足に俺の視線が吸い込まれる。
この子は口説きたい。
マニラの北に位置するブラカン出身で、兄弟の学費を稼ぐ為に働き始めて、まだ1週間だ。
店の寮に住んでいる。
飲み物を好きなだけ飲ませる。
女の子にとって重要な稼ぎだ。
ショータイムが始まり、エリは他の女の子とステージで唄う。
上手いもんだ。
ボーイに割り箸を貰い、箸の先に1000ペソ札を挟んでステージに向かう。
エリのドレスの胸の谷間に1000ペソ札を挟んだ割り箸を差し込む。
ほかの女の子から嫉妬混じりの拍手。
1000ペソは日本円で約2200円だが、マニラの感覚だと1万円というところだ。
歌い終わって、エリがステージから戻ってくる。
完璧な笑顔。
隣に座ったエリを口説き続ける。
「ホテルどこ?」
「ダイヤモンドホテル」
「わぁ、お金持ち!」
おれの泊まっている、ちょっといい部屋で8000ペソだから、こっちの感覚だと一泊8万円。確かに高級ホテルだ。
小泉純一郎氏が総理大臣時代にマニラで泊まったのも、このホテルだ。
午前1時に店を出だ。
代金は7000ペソ。
飲み物だけでなく、ピザや揚げたティラピア(魚)、パンシット(フィリピン風ヤキソバ)等いろいろ注文してこの料金だ。
店が終わってからホテルで会う約束をする。
フィリピンでの携帯の番号を教える。
午前2時。エリから電話があり、ホテルのロビーに降りる。私服のジーパンもいい。
キュっと上がった、形のいいお尻だ。
1時間程ベッドで楽しんだ。
俺が彼女の人生で2人目の男らしい。
確かに慣れていない。
激しくは責めなかった。
シャワーを使い、裸のままで2人で寝た。
朝8時に目が覚める。
横を見るとエリも起きていた。
緊張して、眠れなかったと言う。
ホテルの一階に朝食に行こうと誘ったが、恥ずかしがったので、ルームサービスで済ませた。
フィリピーナは何かと言うと恥ずかしがる。
エリの食事が終わるのを待って、ベッドに押し倒す。最後は四つん這いにさせ、後ろから責める。
上から見下ろすお尻の形に興奮してそのまま果てる。しばらく余韻を楽しんで身体を離す。
エリはベッドにうつ伏せたままで動けない。
俺がシャワーを終っても、そのままのポーズだ。
時間がないのでエリを無理やり起こす。
エリをロビーへと送る。
エレベーターの中で小遣いで5000ペソを握らせた。
9時45分。
部屋に戻る為、エレベーターに戻ろうとして声を掛けられる。
「ミスター ナカモト」
心臓が止まりそうになり、振り返る。
イザベルが立っていた。
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