第17話 自衛隊

竹島襲撃の午後は島の名所を見て歩き、温泉に入ってゆっくりと過ごした。

翌日は隠岐の島から伊丹空港へ戻り、名神、東名と、高速を使って東京に戻った。


隠岐の島空港での待ち時間で「憂国の志」にメールを送った。


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作業完了。

今夜、残金の受け渡し場所は前回と同様の場所で午後10時に。ボストンバッグ2個で赤いハンカチも同様でお願いします。

くれぐれも、バックの中には現金のみで。

    「虎」


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完璧な仕上がりを感謝します。

受け渡しの日時、了解しました。

前回と同じ者が伺います。

     「憂国の志」


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直ぐに返事が来た。

ニュースで大騒ぎになっているのを見ると、5億円は安かったのかな・・・と、欲が出る。

途中でちょっとした渋滞に巻き込まれ、家に帰っていては、銀座に10時には間に合いそうもない。


直接、銀座に向かった。

西銀座駐車場に車を入れる。

10時丁度だ。

綾香を車で待たせ地上に上がる。

前と同じ男が立っていた。

「待ちましたか?」

無表情だ

「いいえ。これを」

差し出された2つのボストンバッグを見る。

バックを受け取り、瞬時に透視で中を検査する。怪しいものは無いようだ。

「それでは、これで。又、仕事をお願いすることが有ると思いますので、宜しくお願いします」

「わかりました」

男は新橋駅方向に歩いていった。


コリドー街までゆっくりと歩いた。

今回も尾行がついてくる。3人。

数寄屋橋の交差点近くで高速で移動する。

地下の西銀座駐車場に有楽町側入り口から入り、駐車場の地下3階を高速で新橋方向に移動する。

途中で時計を見たときに、駐車スペースからいきなり出てきたクラウンにぶつかった。弾き飛ばされたクラウンは横の車を巻き込んで半壊状態になってしまった。

申し訳ないけど構っていられない。


俺のクルマにたどり着く。綾香がふくれている。30分は待たせただろう。

トランクを開けて2つのボストンバッグを入れる。


「待たせたな。何か食べるか」

「肉がいいな」

綾香越しの窓の外に影が動き、柱の後ろに消える。

15メートル程先だ。

「絶対に外に出るな」

綾香の顔に緊張が走る


車から降り、影が消えた方に歩く。

柱まであと5メートル。

全身黒ずくめの男が3人出てくる。顔は隠していない。1人は前回俺を尾行してきた男だ。3人とも大男だ。1人は耳が餃子のように潰れている。柔道かレスリングだろう。

こっちから切り出す。

「何か用かな?」

餃子耳が一歩前に出る

「あなたが(虎)ですか?」

「俺はネコみたいなもんだけど」

餃子耳が笑う

「ネコは虎の親戚ですね。お話があるんですが」

「何かな・・・」

「ちょっと、ご足労願えませんか?」

「嫌だと言ったら?」

「そういう答えは想定外でして」

餃子耳が他の2人に合図するのを待っていたように、大男2人が襲いかかってきた。

腹に一発ずつ軽くパンチを入れた。

目の前で背中を見せて崩れ落ちる2人を、餃子は信じられないと言った顔で見て、俺に視線を移す。

手にはいつの間にか拳銃が握られている。

倒れた男達がうめき声を上げている。

餃子の視線が下に向かった瞬間、銃を取り上げた。

「参りました。さすがに虎だ」

「ネコだって言ってるだろう。どこに来て欲しいんだ?場所を言ってくれれば、こっちから出向くよ。一度家に帰らせてもらうけどね」

「分かりました。市ヶ谷に」

「やっぱり自衛隊か。市ヶ谷駐屯地だな。12時に行こう」

「分かりました。何という名前で来られますか?」

「虎のつかい、っと言ったら分かるようにしておいてくれ」

餃子はにやっと笑い。敬礼をし、部下らしき2人の尻を蹴飛ばして起こし、連れて帰った。


助手席の窓ガラスには綾香が顔を押し付けた跡が残っていた。俺が何をやっていたか、全部見たのだろう。


家に帰る途中でラーメン屋に寄った。俺は、とんこつ醤油のチャーシュー麺。綾香は味噌ラーメンだ。


家に帰り、クローゼットに設えた大型金庫にボストンバッグごと放り込んだ。

総額で9億円近い金を持つようになった。


目覚ましにコーヒーを一杯飲み、自分のメルセデスAMGで出掛ける。

どうせ車は、ぱれている。

綾香はテレビを見ている振りをしていたが、落ち着かないのが分かった。

「何時に帰ってくるの?」

同じ質問を20回は聞いた。

「朝までには帰るから寝てろ」


市ヶ谷には12時10分に着いた。

正門で警備が寄ってくる

「どちらに行かれますか?」

「約束がある。虎のつかいだ」

詰所に一度入った警備員が運転席の横に立ち敬礼する。

「失礼しました。お聞きしております」

行き先を指示され車を出す。


指示された建物の前に、スーツを来た男が1人待ってる。建物の横にクルマを停め、男に従い、ビルに入りエレベーターを待つ。

おれの服装も黒系のスーツだ。ネクタイはしていない。


エレベーターが到着し、乗り込むと男が自分のIDを操作盤にスキャンさせ、B3のボタンを押す。


スゥっと身体が浮き上がり、奈落の底に落ちてゆくようだ。














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