第8話 飛行スピード

エルニドから飛び立った俺はパラワン島の上空を南下した。

島の東側に出てからは、海沿いを飛ぶ。高度は500メートル程を保っている。目標物が見えないと方向が定まらない。


30分も飛ぶと街の灯りが見えてきた。

エルニドからプエルトプリンセサまでは直線でも200kmはある筈だ。

30分で200kmと言うことは時速400km!


それでも最高速ではなかった。

そのスピードでもTシャツが破れて飛んでいってしまったのだ。

さらにスピードを上げたら下半身まで丸裸になっていただろう。


高度とスピードを下げて、友人の川岸宅を探す。

途中、洗濯物を干している家を見つけ、シャツをいただく。


川岸宅が見つかったが電気が消えている。

改めて腕時計を見ると午前1時だ。

川岸宅の前に降り立ち、ポケットからスマホを取り出す。パスポートと一緒に預けてあったお陰でスマホは無事だ。

川岸さんに電話すると、すぐに返答があり招き入れてくれた。

いろいろと尋ねられたが、うやむやに誤魔化し、朝までの寝場所を確保させてもらった。


横になりながら、激動の1日を振り返る。

リサ、漂流、人民軍、ヘリコプター、光の玉、飛行、アイランドホッピングの乗客。

同じボートの乗客だった2人の中国人はどうなったのだろう。

俺達とは違う扱いを受けていたが。

俺の光の玉の攻撃で、人民軍兵士と一緒に被害にあったかも知れない・・・考えるのはやめよう。


とにかく日本に帰ってゆっくり考えよう。

空を飛べたり、光の玉を発射できたり・・・自分の能力を知ることが必要だ。


とれだけの距離を飛べるのかも分からないので、日本へは飛行機で帰ろう。

とりあえず、明日の朝、空港でチケットの予定変更を受け付けて貰えたら、そのまま日本に帰ることにしよう。

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