第5話アイランドホッピング2
ポートスタッフのちょっとした事故があったものの、予定通り順調にいくつかの島を回った。
出発点から一番遠い島からの帰り、ポートのエンジン音に異変が起きた。
後方を見ると排気管から黒い煙りを吐き出している。
その数秒後にエンジンが止まった。
スタッフがエンジン室に潜り込み修理を始める。
午後になって風が強くなっている。
波も出てくる。どれくらいの時間が経っただろう。エンジンは一向に直らない。
携帯電話も繋がらない。
強くなった風に船体は流されている。陸地が、はるか遠くになる。
周りに点在していた島々も遠くになり、我々がいるのは大海原の真ん中という感じだ。
乗客の中国人二人は、片言の英語でスタッフに怒鳴っている。
アメリカ人男性はエンジン室の入り口に座って、スタッフと話している。
その彼女はバスタオルで身体を覆って丸くなっている。泳いだ後の強風なので身体が冷える
日本人ファミリーも固まって座っている。お母さんが皆にキャンディーを配って元気づけている。
時計を見た。午後4時だ。
1時間以上も流されている。
5時になっても戻らなかったら救助船が出るから大丈夫だと、ボートのキャプテンが言った。
追い風にあおられて進むボートの船首が夕陽に向かっている。
西に進んでいる。陸地は逆方向だ。
夕陽の下弦が水平線に接する頃、スタッフが叫んだ。
夕陽の少し左側を指差している。
彼の指差す方を見ると、小さい影が波間に見え隠れしている。
全員が安堵の声をあげる。
アメリカ人カップルも日本人ファミリーも夕陽に向かって立ち上がる。
リサは俺のほっぺたにキスしてくる。
影にしか見えなかった船は向い風の波にジャンプしながら急速に近づいて来た。
50フィート程の立派なFRP製の舟には漢字で船名が書かれていた。
日本語ではない。中国語だ。
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