第4話アイランドホッピング
夢を見ていた。
眼下に青い海が広がり、その中に大小多数の島が点在している。
風が気持ちいい。
俺は空を飛んでいる。
子供の頃によく見た夢だ。
決まって悪い奴らに追われていた。
奴らは走って来て、飛んでいる俺の足を掴もうとする。
高度がなかなか上げられなくてギリギリの所で逃げていた。
今は誰も追いかけて来ない。
海面すれすれから雲の中に入るまで自由に飛び回れる。
空中にいる俺の下腹部を誰かが触っている。
気持ちいいのだが飛行姿勢が乱れてくる。徐々に高度が下がる。
快感には勝てない。
目を閉じて海面に浮いている。
波に身体が揺すられる。
ゆっくりと目を開けると、天井でゆっくりと廻るシーリングファンが見える。
視線を下に持っていくと、ゆうべの彼女が、俺の股間で楽しんでいる。
俺が目を覚ましたのに気づく。
「ゆうべ、凄かった・・・」
「君も凄かったよ」
俺に股がってきた。
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アイランドホッピングのバンカーボート(木製で両脇にミズスマシの様に竹のアームが出て、転覆しないようになっている。一般にフィリピンの漁師が使っているボート)は快適だ。エンジンの音が煩いが風が気持ちいい。
海の色が最高だ。昨日のエルニドビーチの海と繋がっているとは信じられない程。
ツアーの参加者は俺を含めて10人。中国人の男二人組、アメリカ人のカップル、日本人の夫婦に18歳の息子と15歳の娘。そして俺とゆうべからの彼女。
彼女の名前はリサ。実年齢は27歳。
ツアー代は自分で出すと言ったが、俺が払ってやった。1200ペソ。
一晩楽しませて貰ったから安いもんだ。
最初の目的地の小島に到着した。
ボートを浅瀬に止めたスタッフが30分後に出発すると言う。
借り物のマスクとスノーケルを装着し海に飛び込む。
リサもおれの後を追ってくる。
ボートの周りは肩位の深さだ。
沖に向かって少し泳ぐと、すぐに水深が10メートル位になり、カラフルな珊瑚が目に入る。
深呼吸を何度かして息を吸い込んで潜る。
若い頃は巣潜りで20メートル位は普通に潜れたが、一昨年行ったセブでは5メートル潜っただけで、直ぐに浮上しなければならないほど体力が衰えていた。
リサが見ているので少しはカッコつけたい。
耳抜きをしながら水深5メートル程にある珊瑚を目指す。
目指す珊瑚にたどり着き、近くの岩に掴まる。掴まっていないと身体が浮いてしまう。
むむっ! 苦しくない。息が続く。
さらに深い所にある珊瑚に向かう。水深10メートルはあるだろう。
楽にたどり着く。ここまで潜ると肺に貯めた空気が圧縮されるために浮力が少なくなり、何かに掴まらなくとも浮いてしまうことはない。
水面を見上げるとリサがこっちを見ている。
苦しくは無いが不安になり浮上する。
こんなに潜れる訳がない。
何かがおかしい。
リサが潜ろうとしているが、上手くいかない。
諦めて俺に抱きついてくる。
俺が潜っていたのを見ていたボートのスタッフが泳いでくる。
(ボン)という名前だ、。
一緒に潜ろうと言うことだ。
深呼吸をし、先に潜る。水深10メートルほどまで潜り、上を見上げるとボンが追ってくる。
俺の正面に来て「ニカッ」と笑う。
どちらが長く潜っていられるかの勝負を挑んで来たわけだ。
10秒・・・20秒。
ボンの顔が歪んでくる。
意地で我慢している。
ちょっとヤバイ。
浮上しようとサインを出した。
水底を蹴ってボンが浮上していく。
俺はボンの後を追った。
水面まであと3メーターと言うところでボンの動きが止まる。口から泡が出ている。
ブラックアウトだ。
体内の酸素分圧が急激に下がった為、意識を失っていた。
巣潜りの事故は殆ど浮上時に起きる。
ボンの身体に手をまわし、水面まで持ち上げた。
ボートまで曳航している途中でボンの意識が戻り咳き込む。
俺の身体に何が起きたのだろう。
二十代の頃以上の活力が身体にみなぎっている。
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