第76話 天狗

 赤い顔、高い鼻、団扇を扇げば突風を呼び、仙術を使い、剣技にも長ける。

 西洋で言えば魔法戦士みたいな妖怪。


 義経が刀を習ったのも天狗だそうだ。


 天狗には様々な話が残っているのだが、とりあえず義経と縁のあった天狗について考えてみようと思う。


 義経が弁慶と斬り合ったのは有名である。

 弁慶は巨漢の僧兵、仏に仕えながら武芸も学ぶわけで、破戒僧となっても武者から刀を奪うほどに強いのである。

 それに勝ったのが義経である。


 まぁ無い話である。

 小学生が力士に勝てるかというレベルで無い話である。


 なぜ勝てたのか?


 義経の伝承に伝わる『奇策』ではないだろうか?

 義経は当時の文化から大きく逸脱した知識を持っていたのではないだろうか。


 例えば、当時の一騎打ちのルールに不意打ちなどない。

 名乗り、口上を述べ、仕合うのである。

 武士ではないが、武士を相手にしている以上、ルールに乗っ取った仕合いをしていたであろう弁慶に対し勝てるとすれば卑怯な奇策ソレ以外にない。


 武士にならず源氏の子としての立場を放棄し寺に預けられた牛若に武芸を教えるわけはない。

 とすれば教えたのは、日本人ではないのではなかろうか。

 牛若は烏天狗に山で武芸を学んだとされる。


 天狗とは異国の戦士ではないだろうか。

 異質な仮面を被り剣技を振るう戦士、中国の戦士ではないのだろうか?


 あるいは武芸者としてではなく、舞踏家として住まうことになった大陸の者。


 馬の乗り方、扱い方、刀の使い方、あるいは形状まで異なっていたかもしれない。

 義経の奇策、大陸の知識がベースになっていたとしたら常勝の伝説も頷けるような気もする。


 その後の大陸に渡り『チンギスハーン』になったという荒唐無稽の話も手引きがあり、今度は日本の戦術を騎馬民族への奇策として用いたのであれば…


 IFの歴史も少しだけ面白くなるような気がする。


 実際は子供相手に本気になれなかったというのが弁慶という人柄なのだろうけど。


 天狗伝説は各地で語られている。

 わけあって素顔を晒せない人間の所業が妖怪伝説になったのではないだろうか。

 個人的には天狗は妖怪というより異国の民という気がしてならない。



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