第19話 禁断の助っ人ヒーロー

「えっ? 助っ人ヒーローが来るって?」


「予算は大丈夫ですか? 瞳子さん」


「その辺はなんとかした。それよりも助っ人ヒーローだぞ。喜ばないのか?」


「実際に見てみないと信じられないかなって」


「その辺の普通の人にスーツを着せただけ、とかありそうじゃないですか、うちって。予算がないですし」


「お前らなぁ……」




 試作品スーツ騒動から数日後、いつもの司令本部の居間で、とても戦隊ヒーローの司令には見えないやる気のなさそうな顔をした瞳子が、彩実が淹れたお茶を啜りながら、次の戦闘では助っ人ヒーローを呼ぶと宣言した。


 なお、本日健司は体調不良で欠席であった。

 別に対決の日ではないので構わないというか、弘樹一人でも負けることはないので誰も気にしていなかったが。


「ファーマーマンのメンバーを増やすのには時間がかかるから、今回は別の助っ人ヒーローを特別参加させるというわけだ」


「年末特番や映画のアレですか?」


 テレビのヒーロー物でいえば、年末や映画版で時間枠を拡大し、複数のヒーローたちが共闘する話が定期的に放送・上映される。

 現状、ファーマーマンの増員が見込めない以上、単発でヒーローを雇って見栄えをよくする方針で行くという瞳子の戦術に間違いはなかった。

 それが戦略的に正しいのかというと、助っ人ヒーローを呼ぶのにかかる経費を計算してみたら、新しいメンバーの増員が余計遠のく結果に繋がった……ファーマーマンはお役所のヒーローなので、予算も単年使い切りが主流のため、必ずしもそうとは言えない……なんて可能性もあるわけだが。


「この前の、土田先生みたいな感じですね」


 悪の組織側も助っ人怪人を呼んだので、それと同じことかと彩実は納得した。


「ヒーローの場合、臨時でも同じ戦隊に組み込むと面倒なので、複数のヒーローが共闘というパターンが多いな」


 表題にすれば、『○○戦隊○○○○○&○○○○VS怪人○○』などという感じになる。

 見ごたえもあるしと、瞳子はお茶を啜りながら答えた。


 『この過疎化が進む北見村のさらに山奥で、誰がその対決を見るのであろうか?』という疑問を口にしてはいけないことを、彩実はこれまでの経験から学んでいた。


「コンセプトは理解できたけど、単発仕事とはいえ、この村まで来るヒーローなんているのかね?」


 この村まで来て一戦するとなると、どうしても泊まり仕事になってしまう。

 交通費や宿泊費が余計にかかるわけで、今はこんな時代なのでそんなものは出ない悪の組織やヒーローも多い。

 非正規でアルバイト先を探しているヒーローからしても、この村はかなり条件の悪い仕事ということになってしまい、そう簡単に助っ人ヒーローは来ないであろうと弘樹は思っていた。

 観客も、畑を狙われた老人か、弘樹を迎えに来るか夕食で食べたいものを訪ねにくる彩実のみ。

 戦い甲斐はあまりないのも事実だと、弘樹は内心思っていた。


「予算の都合もあり、これでも懸命に探していたんだが、ついに見つかったというわけだ。明日にはこの村に来るから、弘樹は戦いの準備をしておくように。それと、健司にも伝えておいてくれ」


「それはいいけど、明日、都合よく瀬戸内たちが仕掛けてくるのか?」


「勿論だ。自信もある。なにしろ助っ人ヒーローの事を連絡したら、ビューティー総統も盛り上がると喜んでいたからな」


「別にいいけど。戦隊ヒーローの司令と、悪の組織の総統が連絡を取り合うのってどうなんだろうな?」


「弘樹はなにを言うのかと思えば。いかに戦隊ヒーローと悪の組織とはいえ、これは大人同士の仕事なのだ。事前の打ち合わせは必要だ。基本的なビジネスマナーだぞ」


「はあ……」


 他の仕事ならそうかもしれないが、ヒーローと悪の組織には関係ない……どうせ弘樹が言い返しても、東大主席の瞳子からさらに言い返されるので、弘樹は納得したフリをした。


「仕方があるまい。うちは人員・予算不足で、宇宙自然保護同盟もまだ組織が固まっていない。この時点で無計画に戦い続けた場合、色々と不都合が出るのだ。将来双方が最高の状態で死闘を繰り広げられるよう、今は準備期間というわけだ」


 テレビのヒーロー物だって一年はやるではないかと、瞳子は言った。

 要するに、双方がそのくらい戦ってようやくこなれてくるといった感じか。


「うちも、今宇宙自然保護同盟がなくなれば、上からヒーロー不要論が出かねない。向こうはバックが資金力豊富だからな。是非この北見村に定着させ、今の節度ある敵対関係をなるべく長く続けた方がいいというわけだ。もっとも、今すぐ連中を完全に殲滅してファーマーマンが解散になってもいいというのであれば、私も止めないが」


「ううっ、自分は国家公務員だからって……」


 もしファーマーマンが解散したとしても、身分が安定している瞳子は国家公務員を続けられるが、弘樹はただの高校生に戻る。

 そうなると、この村のアルバイトにしては高給な時給九百三十円の仕事がなくなってしまうわけだ。


「それは私も痛いかな」


 司令部要員という名目で、この古民家の掃除、家事が一切できない瞳子の服の洗濯、食事の世話、買い物などを担当している彩実も、今の時給九百円を失うのは痛かった。

 この村で、高校生にそんな時給を出すアルバイト先など他にないのだから。


「つまりだ。外から見て、ちゃんと戦っているように見せればいいのだ」


「多少の罪悪感を覚えなくもないが、これも俺の小遣いのためだ」


「そうだよね。瀬戸内さんや真美ちゃん、くーみんがいなくなると寂しいし」


 彩実も、せっかくできた友達がいなくなるのは寂しいと感じていた。

 あと、せっかく引っ越してきた若い人たちがいなくなれば、その原因である弘樹が村の年寄りたちから責められるかも、とも。

 ならば、このままグダグダの方が誰も損をしないのでいいではないかと。


「とにかく明日、その助っ人ヒーローと共闘すればいいのだ」


「了解。俺は戦いがあれば出るだけだ」


 助っ人ヒーローがいてもいなくても、自分はいつもと同じように戦うだけ。

 弘樹は明日行われるであろう初共闘を楽しみにしながら、彩実が淹れてくれたお茶を啜るのであった。




「やあ、君が赤川弘樹君だね?」


「はい、赤川弘樹です」


「今日はよろしく! 私の名は、金山太郎太(かねやま たろうた)だ」


「元気そうなお兄さんが来たね。私は姫野彩実といいます」


「よろしく、彩実ちゃん」




 翌日の放課後、弘樹と彩実がこれから始まる決戦に備えて司令本部に向かうと、そこにはすでに助っ人ヒーローが到着していた。

 弘樹よりも十センチ以上は高い身長、まるでボディービルダーのような肉体に、笑うと真っ白な歯が目立つ、スポーツクラブでインストラクターでもやっていそうな男性であった。


「おおっ! なんか強そうじゃん」


「そうだろう、弘樹」


 この男と共闘すれば、次の戦いも盛り上がることは確実だと、瞳子は自慢気に語った。

 実にいい人選だろうと。


「金山さんは、単独のヒーローなのですか?」


 彩実は、太郎太にお茶を出しながら質問する。

 彼女がお茶を出したのは、瞳子にそんなことは期待できず、実際先に彼がこの司令本部に来ても水一杯も出していなかったからだ。

 せっかく来てくれた助っ人ヒーローに瞳子が不味いお茶を淹れた結果、彼が機嫌を損ねて帰ってしまう事態を怖れて、というのもあった。


 そのくらい、彩実は瞳子の家事能力に期待していなかった。


「そうだよ。私はこれまで、ずっと一人で戦ってきたんだ。これでも戦績はいい方なんだよ」


「ずっと一人でですか。お強いんですね」


「まだまだだけど、頑張って全裸マンの勇名をこの業界にもっと広めないとね」


「「えっ? 今、なんて?」」


 太郎太が名乗ったヒーローの名を聞き、弘樹と彩実は『まさか、そんなわけが。聞き間違いだろう』と思い、思わずもう一度聞き直してしまった。


「『全裸マン』だけど。それがなにか?」


「ヒーロー……ですよね?」


 悪の組織の怪人と戦うヒーローの名が『全裸マン』。

 それはありなのかと、彩実は脳内でずっと考え続けるのをやめられなくなってしまった。

 もしかしたら、自分がヒーロー界の常識をよく知らないだけで、今はそういうのもアリなのかとも考えてしまったのだ。


「彩実、時代が変わっても大丈夫なわけないから! 瞳子さん、これはどういうことかな?」


 ヒーロー同士のコラボはいいとして、どうして自分は全裸マンなんて名前のヒーローと共闘しなければいけないのか。

 弘樹は、瞳子に強く問い質した。

 せっかくファーマーマンとして孤軍奮闘してきたのに、これはなんの罰ゲームなのかと。


「ギャラが安かったんだ。それに彼が強いのも事実だ。問題ない」


「(他にいなかったのかよ……)」


 今日も健司は、体調不良でお休みだというのに……。

 いや、もしかすると健司は助っ人ヒーローの情報を事前に掴んだから欠席したとか?

 だとしたら、なぜ友人である自分にも教えてくれないのかと、弘樹の思考は次第にネガティブな方に引き寄せられていった。


「弘樹君、私がなぜ全裸マンなのか。その理由はだな……」


「すいません、それは向こうと戦う前に説明してくれませんか?」


「どうしてかな?」


「二度手間になると思うので。そろそろ行きましょうか?」


 どうせコラボを否定などできる立場になく、雇われヒーローの悲哀を感じながら、弘樹は太郎太を連れて宇宙自然保護同盟との戦いに赴くのであった。




「おーーーほっほ! 今日は楽しみですわね」


「ビューティー総統閣下、だから今日は現場に足をお運びになられるのですか?」


「ええ、あの資金難のファーマーマンがついに助っ人ヒーローを呼んだのです。これは是非、この目で直接見ておかなければ」


「確かに。ですが、あそこの資金力だとそんなに強いヒーローは期待できないかもしれません」


「枯れ木も山のなんとやらですわ。我々宇宙自然保護同盟が、同時に二つのヒーローとの戦いを経験することこそが、今日の最大の目的なのですから」


「有名な悪の組織は、いくつのコラボヒーローに対応できるかで評価が決まるからね」


「真美の言うとおりですわ。この宇宙自然保護同盟も将来、三つ、四つ……いえ、それ以上のヒーローたちと派手に戦いを繰り広げられるようにしませんと。それができてこそ、次の世界征服の段階に進めるのです」


「計画的に組織を大きくしないとね」


「クマ」


「くーみんも、『千里の道も一歩から』だって」


「くーみんさん、あなたいいことを仰るではないですか」




 今日はコラボヒーローとの戦いだと聞き、宇宙自然保護同盟の総統である薫子も前線に顔を出す予定であった。

 主戦力は、四天王でもナンバーワンとナンバーツの強さを誇る猪マックス・新太郎と熊野真美。 

 そして、くーみんも真美の傍を離れなかった。


「くーみんは除いて、お二人で大丈夫ですか?」


「問題ないですよ」


「私もたまに特訓しているから大丈夫だよ」


「確かに『たまに』ですわね」


 普段の真美は、赤井家と姫野家の隣の家に薫子と一緒に住み、住み込みで働いている執事の久慈と、料理人の千堂に、衣食住のすべてを面倒見てもらっている。

 そのせいか、すっかりナマケモノ体質になってしまった真美は、週に一度もくーみんと特訓をすればいい方だ。 

 熊の怪人である彼女は元々とても強く、若く才能もあるので、それでも徐々に強くなっていくのはさすがというべきか。


 薫子としては、現在学生である真美が必要以上に苛酷な鍛錬をする必要はないと思っているが、たまには勉強してほしいと願うようになっていた。

 次こそは、テストで赤点を避けられないと思ったからだ。


「薫子ちゃん、こういうのはノビノビやった方がいいんだって。それとね、今日気がつかなかった?」


「なにをですか? 真美」


「健司君、今日は体調不良で学校お休みだったじゃない」


 つまり、今日のファーマーマンは一人。

 助っ人ヒーローを合わせても二人でしかなく、自分と猪マックス・新太郎で十分だと、薫子に自分の考えを説明した。


「ですが、助っ人ヒーローが複数という可能性も否定できませんわよ」


 さすがの薫子も、助っ人ヒーローの詳細については調べられなかった。

 三名、五名の戦隊ヒーローが助っ人なら、さすがの真美たちも苦戦するのではないかと思ったのだ。


「クマ」


「くーみんが、『あいつらにそんな予算はない』って」


「確かに、くーみんの言うとおりですわね」


 ファーマーマンに予算がないのは、子供にでもわかる。

 ならばこのメンバーでも盛り上がる戦いができるなと、薫子は思った。


「次ははまた私たちも助っ人ヒーローを呼びたいですし、今日はちゃんと視察しなければいけませんわね。では、始めてくださいな」


「お任せあれ。助っ人ヒーローごと血祭りにあげてやりましょう。さあてと、この辺の畑を手当たり次第に荒してやるぞ。猪戦闘員たちよ!」


「「「「「ブヒッ!」」」」」


「待てぇーーーい!」


 猪マックス・新太郎の命令を受けた猪戦闘員たちが周辺の畑に散ろうとしたその時、それを止める、強き意志が篭った声が宇宙自然保護同盟の面々の耳に入ってきた。


「その声は! またお前たちか!」


「トゥ! この村の農家の方々が丹精込めて耕した畑は荒させないぞ! ファーマーマンのトマレッド見参!」


 自己紹介ののち、宇宙自然保護同盟の前に立ち塞がる弘樹。

 そして、そんな彼を見た猪マックス・新太郎は思った。

 真美からの情報どおり、今日は……もやっぱり一人なのだと。


「ダイホワイトは休みか」


「瀬戸内と熊野が知っているが、今日も体調不良でな」


「もうそろそろ、そんな予感はしていたがな……」


 このところ出席率はよかったから、もうそろそろ反動がくるであろうと。

 それなりに社会経験もある猪マックス・新太郎は予想していたわけだ。


「その代わりと言ってはなんだが、今日は助っ人ヒーローがいるから」


 今日はそれで勘弁してくれと、弘樹は猪マックス・新太郎に謝りながら言った。


「らしいな。さて、そいつがどれくらい強いか楽しみじゃないか」


 なんだかんだ言いながらも、猪マックス・新太郎は助っ人ヒーローとの対決を楽しみにしていたのだ。


「そうだね。私と猪さんとのパワータッグでボコボコにしちゃうよ」


「そうか。頑張ってくれ……」


「なんだ? なにか懸念でもあるのか?」


 やる気満々な猪マックス・新太郎と真美に対し、逆に弘樹は腑に落ちない表情のまま。

 それに気がついた猪マックス・新太郎が、彼にやる気の出ない理由を訪ねた。


「強いのは強いんだ……熊野と……どうして今日は瀬戸内がいるかな?」


 よりにもよって、こんな時に限って対決の場に顔を出すかなと、弘樹は薫子を同情的な視線で見つめた。


「いきなりなんです! 私は宇宙自然保護同盟の総統なのですから、あなた方が出す助っ人ヒーローの傾向を直にこの目で確認し、次の戦いに生かす義務があるのです。もったいつけていないで、早く助っ人ヒーローをお出しなさいな!」


「そうだ! 時間がもったいないだろうが!」


「あまりもったいつけても逆効果だよ!」


「クマ!」


「お前ら……後悔するなよ! 金山さん!」


 なかなか助っ人ヒーローを出さない弘樹に対し、宇宙自然保護同盟の面々から苦情が殺到してしまい、そこまで言われるのならもう俺は知らないからなと、控えている助っ人ヒーローに対し登場を促した。


「本当に後悔するなよ! さあ! もういいですよ!」


「真打はあとから登場する! トォーーー!」


 気合を入れた掛け声と共に、一人のヒーローが大きくジャンプしながら弘樹と宇宙自然保護同盟の面々を見下ろせる小高い丘の上に立った。


「ついに出たな! 助っ人ヒーローめ!」


「逆光でよく見えないけど……」


「一人ですわよね?」


「クマーーー!」


 急ぎ、丘の上に立つ助っ人ヒーローの容姿を確認しようとする宇宙自然保護同盟の面々であったが、逆光のため目が慣れるまでその姿を確認できずにいて、それがをさらなる悲劇を助長することとなる。


「この世の悪をさらけだす! すべてを如実にさらけ出す! 覆い隠すはみなの敵! いかなる覆いも許さない! 全裸マン! 見参!」


 よくも考えついたものだと弘樹が思う、『突き抜けた』自己紹介の後、ついに禁断のベールに包まれていたモノが解放されてしまった。

 徐々に逆光に慣れてきた宇宙自然保護同盟の女性陣である薫子と真美は、待ちに待った助っ人ヒーローが全裸であることを知り、すぐさま自分の目を両手で覆い隠した。


「弘樹さん! これは一体どういうことですか!」


「だから、忠告したのに……。というか、俺に助っ人ヒーローを選定する権利なんてないんだから。文句なら、瞳子さんに言ってくれよな。俺に言うのは筋違いだからな」


 さらに言うと、自分には全裸マンとの共闘を拒否する権限もないのだと。

 続けて念を押して薫子に言った。

 それは、アルバイトヒーローである弘樹の本音であった。


「弘樹君! ヒーローじゃないじゃん! ただの露出狂じゃん!」


 その変態のどこがヒーローなのかと、真美も両手で目を隠しながら文句を言った。


「なに? この私がヒーローではないって? そんなことはないさ」


「スーツは? メットは? ヒーローらしい装備が一個もないじゃない!」


「そんなことはないぞ。よく見るがいい」


 と言いながら、全裸マンは自己紹介とポージングした丘から飛び降りて真美たちに近づき、履いているショートブーツを見せようとした。


「いかにもヒーローが履いていそうなブーツだろう? さらに、このブーツにはちゃんと『全裸マン』と書いてある。熊の少女よ、確認するがいい」


「確認できるわけないよ!」


「遠慮する必要はないぞ」


「そういう問題じゃないよ!」


 それはそうだ。

 ブーツを確認すべく両目から手をどければ、同時に『全裸マン』の〇ンコと〇ンタマも見えてしまうのだから。

 真美は愛らしい容姿で、村の老人たちのアイドルである。

 極めて清純派寄りであり、そんな可愛げな少女がいい年をした男性の〇ンコと〇ンタマをマジマジと見つめるわけにいかないのだ。

 これまで築いてきたイメージというものもある。


「(彩実ちゃんも、いつもなら弘樹君の様子を見に来たり、夕食のメニューを聞いたりするけど、今日は絶対来ないよね?)」


「(クマ)」


 真美の問いに、くーみんは『当然だ』と答えた。 

 彼女も初めて出会った時から幼馴染である弘樹一筋で、例え今はそれに気がついてもらえなくても、諦めず健気に彼の面倒を見る、まさに『お嫁さんにしたい女子』であった。

 そんな彩実も、助っ人ヒーローが全裸マンだと知っている以上、ここに顔を出すわけがなかった。

 もしマジマジと全裸マンの〇ンコと〇ンタマを見てしまった時点で、色々とこれまで培ってきたものをすべて失ってしまうのだから。


「熊の少女が駄目となると、悪の首領! 見るがいい!」


「私ですか?」


「配下が駄目となれば、これはもう上司の責任だからな。じっくりと見るがいい」


「あなた! 絶対わざとやっていますわね!」


「意味がわからん。さあ、目から手をどかして見るがいい」


「絶対に嫌ですわ!」


 全裸マンは、薫子の前で片足をあげてショートブーツとそこに書かれた全裸マンの文字を見せようとした。

 その時に〇ンコと〇ンタマが揺れて、弘樹もくーみんも猪マックス・新太郎も一気にテンションを落としてしまう。


 碌でもないものを見てしまったと。


「(なあ、猪)」


 もはや勝負どころではないというか、戦いは宇宙自然保護同盟の不戦敗で終わりそうであった。

 真美と薫子が全裸マンの目を両手で覆っている以上、もはや負けたも同然なのだから。

 弘樹は自分と対峙しているため動けない猪マックス・新太郎に対し、『あの二人を早く助けてやれ』と目で合図した。


「(恩にきるぞ、トマレッド)って! あまりの衝撃に暫し動けなくなってしまったが、お前はまだヒーローをやってたのか!」


「知り合いなのか?」


 弘樹に警戒する必要がなくなった猪マックス・新太郎は、そのまま薫子と全裸マンの間に立つと、思いもよらぬセリフを彼に吐いた。

 弘樹も、まさか猪マックス・新太郎と全裸マンが知り合いだったとは、まったく予想もできなかったのだ。


「俺様はここに来る前から、十年以上も首都圏で怪人をやっていたからな」


「おおっ! そういえば見たことがある怪人だな」


「覚えていたか。お前のせいで、俺様が以前所属していた悪の組織が潰れた怪人だ」


「潰れたのですか? 悪の組織がヒーロー一人に?」


「はい。とはいえ、それは全裸マンの戦闘力のせいではありません。あれは五~六年前でしょうか……」


 猪マックス・新太郎は、薫子たちに事情を説明し始める。

 とある新興で小規模の悪の組織に、猪マックス・新太郎は幹部待遇で招き入れられた。

 もしその悪の組織が拡大していけば、彼ももっと出世してよりよい待遇を得られるはずだったが、その夢は全裸マンのせいで儚くも消え去った。


「俺様がいた悪の組織は、デビュー戦において全裸マンと戦ったのです。ですが……」


 デビュー戦は、とにかくその存在を多くの人たちに知ってもらおうと、町中で行われた。


「嫌な予感がしますわ……」


「大凡、ビューティー総統閣下の予想どおりです」


 突然、ヒーローなのか露出狂なのか、非常に判別が難しい全裸マンの登場で、町行く人たちは大パニックを起こした。

 警察にも通報され、猪マックス・新太郎たちは戦う前に警察によって拘束されてしまった。


「我々は悪の組織で、奴とは無関係ってことでお咎めなしだったのですが、全裸マンは捕まりました」


 露出狂のヒーローと無関係の悪の組織だからお咎めなし……色々とツッコミどころはあったが、弘樹は気にしないことにした。

 いちいち気にしていると話が進まないからだ。


 とにかく全裸マンは軽犯罪法違反で留置場にぶち込まれ、デビュー戦を台無しにされたその悪の組織は、以降もパッとしないまま潰れてしまった。


 こうして猪マックス・新太郎は、再び転職活動をする羽目になってしまったというわけだ。


「いきなりケチがついた新興悪の組織は難しいですよ。ヒーローに対戦を申し込んでも、『あのデビュー戦で警察のお世話になった駄目な悪の組織』という汚名がついて回るので……」


 せっかくいい条件で転職できたというのに、なんたる不運。

 それ以降、薫子からスカウトされるまで、猪マックス・新太郎は不遇の時代を過ごすこととなった。

 そんな彼からすれば、いまだに全裸マンが活動できていること自体があり得ないのだ。


「お前のせいだぞ! そんな格好だから、戦う前に警察に通報されるんだよ!」


 怪人と戦う前に、警察に通報されてしまうヒーロー。

 今までよく活動してこれたなと、弘樹は思った。


「だから今回は、田舎の村で戦っている。私もちゃんと学習しているのだ」


 ここなら、関係者以外の人がいないので安全だと。


「嘘つけ! 都市部や郊外ではもう仕事がないからだろうが!」


 猪マックス・新太郎も長年怪人業界に身を置いていたので、全裸マンについての評判は知っていた。

 その後の彼は、どこで怪人と戦っても、それを目撃した一般市民たちから警察に通報されてしまうようになってしまう。

 戦いがなくなるのが嫌な怪人側は通報しないのだが、勝負を目撃した不特定多数の一般市民からの通報は防げず、全裸マンが警察に連れて行かれてしまうと勝負が無駄になってしまう。

 ついには警察から、『全裸マンと戦うな!』という通達が出されるまでに至り、ここ暫く彼はヒーローとして活動していないはずだと、自分が知っている事情を語った。


「というか、俺が知り得る限りで一番最悪な助っ人ヒーロー人選だ! お前の司令はなにを考えているんだ!」


「予算かな?」


 大方、安く使える助っ人ヒーローはいないかなという、いかにもな理由で人選を始め、最近まったく仕事がない全裸マンの足元を見たのではないかと、弘樹は自分の予想を語った。


「それしかないか……これだから素人は……」


 いかに瞳子が優秀なキャリア官僚とはいえ、これまで知りもしなかったヒーロー関連の仕事でミスをしてもおかしくはないのかと、猪マックス・新太郎は納得してしまう。

 安く助っ人ヒーローが揃えられてラッキー、くらいに思っているのであろうと。


「猪のおっさんよ。私は過去の教訓をちゃんと生かし、だからこうやってショートブーツを履いているのだ。忘れたのか? 昔の私は完全な全裸だった。その方が戦いで有利なのにも関わらず、こうしてブーツを履くようになった大人の私だ。それに、ここには関係者以外誰もいないのだ。問題あるまい」


「ありますわよ!」


 すかさず薫子が反論したが、確かにこの北見村で戦えば警察に通報される危険性は少ない。

 北見村が治外法権で全裸で戦っても罪にならないというわけではなく、ただ単に人がいないので通報されないという、極めて物理的な理由からであったが。

 となると、瞳子の人選もあながち間違っていないのではないかと、弘樹は思ってしまった。

 格安の予算で助っ人ヒーローを揃えるという目標は、ちゃんと達成しているのだから。


「悪の組織の首領が情けないことだ。この私が怖くて見れもしないとは……」


 『いや、それは違うだろう!』と、全裸マン以外の全員が心の中で思った。


「容認できることと、できないことがありますわ!」


「そうだよ!」


 うら若き女性が全裸の男性と戦えるかと、薫子と真美は合わせて抗議した。


「せめてパンツくらいは履けよ!」


「それはシステム上できないのだ。第一、ショートブーツを履くことだって、戦闘力の観点から言えば不利になってしまうのだから」


「どうしてだ?」


「なるほど。弘樹君は、だから先ほど説明はあとでいいと言ったのか。よかろう、ここにいるみんなに説明しよう」


 全裸マンは、どうして自分は全裸でなければいけないのか、その理由を説明し始めた。


「この世界には、『カネヤマ粒子』というものが存在している。これは世界中どころか宇宙中の至るところに存在し、それをエネルギー源として利用できれば、人類は無限に近いエネルギーを得られるというわけだ」


 どうして『カネヤマ粒子』言うのかといえば、その存在を提唱した金山博士の名前から取ったからだと全裸マンは説明した。


「同じ苗字だね」


「そうだ、熊の少女よ。カネヤマ粒子は、私の父が提唱した説なのだ」


「しかし、そんな粒子の名前は聞いたことがないな」


「そうですわね、私の実家瀬戸内コーポレーションには、その傘下に多くの研究所がありますけど、そんな粒子の名前を聞いたことがありません」


 猪マックス・新太郎と薫子は、カネヤマ粒子の存在に疑問を抱いた。

 特に、薫子の実家瀬戸内コーポレーションは、いくつもの最新科学や技術を研究する最新鋭の研究所を複数持っている。

 そこでもカネヤマ粒子なんてもの聞いたことがないと、彼女は断言した。


「そういう意見は多いな。そのせいか、父は学会で詐欺師呼ばわりされ、そのまま学会を追放されてしまった」


 その悔しさをバネに、金山博士はカネヤマ粒子の存在を証明しようとする。

 そのため自分の息子の体に、外気からカネヤマ粒子を吸収して体内に蓄え、それをエネルギー源として使用できるようになる装置『カネヤマ粒子ジェネレーター』を埋め込んだ。


「お前、改造人間なのか?」


「そこまでのものではない。カネヤマ粒子ジェネレーターは、とても小さな装置なのでな。ちょっと皮膚の下に埋め込めばいいだけなのだ」


 その小さな装置を体に埋め込むと、外気にさらされた肌が直接カネヤマ粒子を吸収し、絶大なパワーとスピード、防御力を得られる。

 それこそが全裸マンの力の源なのだと、彼は語った。


「つまり、私は常に全裸で外気に肌を晒す必要があるというわけだ。特に、人間の始まり、生の源とも言える〇ンコと〇ンタマが一番カネヤマ粒子を吸収する。足の指や甲、踵は妥協したが、他は全裸を貫かせてもらう!」


 全裸マンの強さは、全裸だからこそ。

 妥協はしないと、彼は強い意志の篭った声で語った。


「あっそう」


「一番大切な部分が隠れてなきゃ意味ないだろうが!」


「そんな決意、必要ありませんわ!」


「結局露出狂じゃないか!」


「クマーーー!」


 勿論、その他全員には不評であったが。

 というか、仁王立ちすると〇ンコと〇ンタマが目立つのでやめてほしいと、弘樹たちは思った。

 そんな不愉快なもの、できれば誰も見たくないからだ。


「グダグダになってしまったけど、どうするんだ?」


 弘樹は、暗にお前の責任だと全裸マンを責めるように言った。

 あまりに酷いので、もう戦う気力もないほどだ。


「では、ここは助っ人登場回らしく、この全裸マンがケリをつけよう」


 弘樹にちょっと冷たくされた程度でどうこうなるほど、全裸マンの心は弱くなかった。

 デビュー以来、己を貫いたため留置所の常連となって牢名主扱いされようとも、警察官から『もう戦闘スタイルを変えた方がいいよ』と本気で心配されても、彼は全裸であることをやめなかったのだから。

 

 うら若き女性二人に嫌われるくらい……むしろ逆にご褒美であった。

 全裸マン、完全に変態の領域に突入していた。


「弘樹君の許可を得た以上、我が最大の奥義にて、運よくここにいる宇宙自然保護同盟の総統閣下に一太刀浴びせようではないか」


「やらせるか!」


 戦闘力は期待できないくーみんを除き、唯一全裸マンに対応可能な猪マックス・新太郎が彼を取り押さえるべく動くが、その前に全裸マンの方が先に動いた。


「なっ! 早い!」


 至近距離にいたのに、猪マックス・新太郎は全裸マンを捉えられなかった。

 その前に、まるで煙の如く彼の視界から姿を消してしまったのだ。


「猪のおっさん、教えてやろう。全裸マンは何物にも拘束されていないがゆえに、カネヤマ粒子の効果と相まって、このように目にも止まらぬ速さで動けるのさ。さあ、私がどこにいるかわかるかな?」


「ええいっ! 素早い! くーみん、わかるか?」


「クマ」


「くーみんも『わからない』って」


「これは困った……」


 どちらかというとパワーがある分動きは遅めである猪マックス・新太郎は、目にも留まらぬ速さで動く全裸マンを視界に捉えられず困ってしまった。

 このまま薫子に攻撃を仕掛けられたら防げないかもしれないと、非常に強い危機感を抱いてしまったのだ。


「わかるまい。この全裸マンの動きが」


「俺はわかるけど」


「それは凄いね、弘樹君。もしや君もカネヤマ粒子の影響を?」


「どうだろう?」

 

 というか、本当にそのカネヤマ粒子って存在するのか?

 弘樹は気になって仕方がなかった。

 自分はただ単に、ヒーローとして強いから全裸マンの動きが見えるのだと思っていたのだ。


「クソッ! まさかトマレッドに教えてもらうわけにもいかないか」


「いや、教えないって」


 いくら全裸マンが色々と終わっていても、今日は一緒に戦うヒーロー仲間なのだし、最後の決着を彼に任せたのだ。

 まさか、悪の組織側の怪人に味方の動きを教えるわけにはいかなかった。


「弘樹さん! 同じクラスの仲間でしょうに!」


「瀬戸内、今の俺とお前はヒーローと悪の組織の首領じゃないか。そこはきっちり分けないと」


 『瞳子さんもうるさいし……』と、弘樹は薫子の懇願を否定した。


「いきなり首領のクビを取れるかもしれないとはな! 無警戒で前線に出たのが運の尽きだ! いくぞ! 『全裸マァーーーン! チョンマゲアタック!』」


 全裸マンは勢いよく必殺技の名を唱えると、そのまま薫子の後ろに回り込んだ。

 この動きも、猪マックス・新太郎には捉えられなかった。

 両手で目を覆ったままの真美にはもっと難しい注文であった。


 そのまま彼女の後ろに回った全裸マンは、途端に金色に輝き、徐々にその体を浮かび上がらせていく。

 最後には、全裸マンの腰と薫子の頭の高さが完全に一致してしまった。


「宙に浮いた?」


「弘樹君、これぞカネヤマ粒子の力だよ! 宇宙自然保護同盟の誇り高きビューティー総統よ! お前の頭上には今なにが載っているかわかるか?」


「そういえば、頭の上になにか載っているような……」


 と言って薫子が目を塞いでいた手で自分の頭の上を確認すると、その手になにか柔らかい感触が……。


「ええと、柔らかい袋にボールみたいなのと、その上に柔らかい棒が……まさか……」


「そのまさかさ! ビューティー総統、それは私の〇ンコと〇ンタマだ」


「ひぃーーーーーー!」


 最悪な予感が当たり、自分の頭上に〇ンコと〇ンタマを載せられ、さらに手で直接触らされた薫子は、あまりのショックに声にならない悲鳴をあげ、そのまま気絶して倒れてしまった。

 うら若き女子高校生が、変態の〇ンコと〇ンタマを握らされたのだ。

 もし悪の組織の首領とヒーローでなければ、全裸マンはまたも留置場の住民となっていたであろう。


「ビューティー総統閣下!」


「薫子ちゃん!」


「クマーーー!」


 全裸マンの攻撃を阻止できなかった猪マックス・新太郎と、もう両目を隠している場合じゃないと覚悟を決めた真美、そしてくーみんが気絶して倒れた薫子に一斉に駆け寄った。


「薫子ちゃん、しっかりして! こらぁ! なんてことをするんだ! この変態!」


「おかしいな? 私の攻撃はむしろこれから。〇ンコと〇ンタマから大量のカネヤマ粒子を用いた電撃攻撃をする予定だったのに。まさか、この程度のことで気絶するとはな。悪の組織の総統が笑わせる話ではないか」


 いくら全裸マンが変態でも、敵の頭の上に〇ンコと〇ンタマを載せただけで怪人を倒せるとは思っていない。

 全裸マンチョンマゲアタックとは、敵の頭の上に〇ンコと〇ンタマを載せ、それを導火線にカネヤマ粒子を電撃に変換して攻撃する必殺技であった。


 電撃を流す前に薫子はその精神的ダメージの大きさから気絶してしまったわけだが、ある意味彼女は幸運だったのかもしれない。


「して当然だよ! というか! そのお父さんのよりも粗末なものを仕舞いなよ!」


 全裸マンに抗議するため、彼の〇ンコと〇ンタマを直視してしまった真美だが、親友に酷いことをされた怒りも加わって、あまり精神的なダメージは受けなかった。

 逆に、全裸マンの〇ンコと〇ンタマが、子供の頃一緒にお風呂に入った父親のものよりも粗末だと、言い返す気力すら保持しているほどであった。


「うっ! さすがの私もちょっとダメージを受けたぞ」


 同じ男性として、〇ンコが小さいと言われるのは辛いなと思い、全裸マンに少しだけ同情する弘樹であった。

 あくまでも少しであったが。


「それにしても、こんな痴女みたいな格好をしてな」


「薫子ちゃんはビューティー総統の時はそういう格好だけど、ここに転入してくるまで学校はすべて女子高で、仕事以外で男の子と話すのも苦手な方だし、お父さんと執事の久慈さんと料理人の千堂さんが、会話が多いトップスリーで、彼氏なんているわけないんだから!」


 人を見た目だけで判断するなと、真美は全裸マンに強く言い返した。

 ちょっと失礼な言い方のような気もしたが、真美が親友である薫子の身を案じての発言なので、とりあえず静かに聞いている弘樹とくーみんであった。


「熊野、それはフォローなのか?」

 

 聞きようによっては、真美が薫子に彼氏なんてできるわけがないとディスっているようにも感じると、弘樹は彼女に疑問を呈した。


「だって! そこの変態が、変態にくせに薫子ちゃんをディスるから! あっでも、薫子ちゃんも、この村に来てからは弘樹君とよくお話するようになったんだよ。あと健司君ともね」


「そうなんだ。で、瀬戸内は目を醒ましそうにないし、ここは撤退したらどうだ?」


「あっ! そうだった! 急いで薫子ちゃんを連れて撤退だ!」


「それしかないな……ええいっ! 覚えてろよ! ファーマーマンめ!」


「俺じゃねえし!」


 それだけは事実誤認するなと、弘樹は猪マックス・新太郎に対し文句を言った。


「連帯責任だ! こちらも助っ人怪人で対抗してやる! 覚えているのだな! ファーマーマンよ!」


 そう捨て台詞を残すと、猪マックス・新太郎は気絶した薫子をおぶり、後方の守りを真美とくーみんに任せて素早く撤退したのであった。

 

「また勝ってしまったな。やはりカネヤマ粒子は凄い」


 内容はともかく、勝負は全裸マンが悪の組織の首領を戦闘不能にしてしまったため、ヒーロー側の完勝という結果に終わっていた。

 全裸マンは勝利を喜び、一人満面の笑みを浮かべながら仁王立ちしている。

 そのため、彼の〇ンコと〇ンタマが余計目立ってしまうが、弘樹は心のダメージを減らすため、視線を反らしてそれを見ないようにしていた。


「(戦績だけはいいって……これが原因か……)」


 こうして初の、ファーマーマンと助っ人ヒーローとの夢の共演は、ある人物に言わせると悪夢の共演として終了した。

 弘樹はなにもしなかったにも関わらず勝利できたが、その後味の悪さったらない。

 彼は心の中で、二度と全裸マンとは一緒に戦いたくないと強く思うのであった。


 戦えファーマーマン!

 凄いぞ、全裸マン!

 宇宙自然保護同盟の首領は倒したが、まだトドメを刺したわけではない!

 油断せず、明日からも戦い続けるのだ!

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