第3話 落雷


「あぁ、くそ。ひどい嵐だ!」


 学校帰りから嫌な予感はしていたのだ。大雨からの落雷警報。間断なく降り注ぐ雹。土砂降りなんて言葉で済ませられないくらいひどい雨。いっそスコールより凄まじい。そして大風。防災無線から悲鳴のような避難指示が流れる。


 銭湯は臨時休業! 俺は閉店準備に追われていた。

 ちなみに親父は一足先に家に帰った。今頃鎧戸を閉めたり、割れた窓ガラスの応急手当てに追われていることだろう。


 俺もあちこちの鍵を閉め、ボイラーを停止し、ほっと一息ついたころに……目のくらむような稲光! そして間断なく、耳をつんざくような轟音。近い。


『――――!』


 嵐を鶴の叫び声が切り裂いた。


「なん?! ……鶴ッ!?」


 慌てて外に出る。バケツから水を被ったように盛大に濡れるが、それどころじゃない! 

 空から降ってくる、コンクリートの欠片。ぶすぶすと焦げたような匂い。

 煙突を見上げると、今まさにへし折れようとしているところだった! 煙突に雷が落ちたのだ!


『ッ――来るな涼太! 危ない!』


 ひび割れた鶴が叫ぶ。

 目を見開く間もあればこそ。すべてがスローモーション。

 轟音と共に自分に向かって煙突がゆっくりと倒れてくる。鶴が驚愕した顔で何かを叫ぶ。竦んで動かない足。稲光。

 そう、白い光に目を焼かれて――。目をきつく瞑った。


 ……痛みはなかった。

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