第153話 幼女仮面☆爆誕!

 ◇ ◇ ◇


 打ち出されたミサイルも、ばら撒かれた弾丸も全部切取ったんだけど……まさかビームまで飛び出してくるとはね。

 流石のおじさんもこれは予想外ですわ。

 だってビームってさ、飛び道具だけど、“繋がってる”じゃん?鎖鎌とかも俺の個性ではカットできないのと同じで、繋がってるものをカットすることはできないんだよね……要するに……


「ばっか野郎!テメエらもさっさと逃げるぞ!」


 何故か俺のことを見て呆けている神崎をしり目に、俺は巨人に背中を向けて全力で走り出す。

 丁度俺のいた場所がレーザーでどろどろに溶かされ、それが筋のように俺に迫ってきやがった。


「とうっ!」


 掛け声と共に、レーザーの範囲から横っ飛びで外れた俺の真横をレーザーが通り抜け、地面を夏場のアイスクリームみてえにしやがった。

 

「テメエコラ!レーザーとか出すなんざ反則だって習わなかったのかよ!」


『うるさいッ!死ね死ね死ね、死ねぇぇぇぇエ!』


 全く俺の話しに聞く耳持たない基地外野郎だぜおい。

 こうなったら俺も本気出すけど、いいのか?本当にいいのか?マジでやばいぞ?ほんとだぞ?


『レーザーはどうしようもない様だなッ!』


 そう言うと、今度は肩から巨大な砲身が二つ生えてきやがって、そこからかなーりマズそうな気配を感じる……しかも俺達の逃げてる方角がマキナの都方面だし、回避しても街が吹っ飛ぶ気がする……ま、まあ俺が死ぬよかいいかな?


『くたばれッ!これで最後だぁぁっぁああ!!!』


 溜めに溜めた特大レーザーがついに発射され、その衝撃だけで地面をえぐりながら進んでくる。

 あ、これやばい……そう思った時だった。俺のクールなイヤーが、その声を拾ったのだ。


『た、助けて……』


 小さく呟かれたその言葉に、視線を向けてみれば、何故かそこにいたのは迫りくるレーザーを恐怖の表情で見つめることしかできないボロボロの恰好の幼女。

 手に握りしめた薄汚れたテディーベアが、地面に落ちると同時に、俺を含め、その範囲内に隠れていたのであろうその幼女にレーザーがぶつかった。


『ぎゃはははっははあッ!!!!死んだぁ!!これで完全に死んだァアァア!!!』


 勝ち誇った男の叫びに答える様に、ひどく落ち着き払った声が返される。

 冷たささえ感じさせるその声だが、しかし確かに尋常ならざる怒りを内包していることが分かった。


「助けを求める幼女の声、確かに俺には届いたぞっ!………遅くなって済まなかったな」


 仮面で顔を隠し、マントをはためかせるその男は……彼女の落としたテディーベアを拾い上げ、埃を払うと優し気な声色で幼女に語り掛けたのだ。


「君の声が、俺を呼んだんだ」


『な、何者だ貴様はぁっぁぁあ!!!』


 幼女の頭を一度撫で、ゆっくりとその男は立ち上がり、マントをはためかせながらスピーカーの声にこう告げたのだった。


「幼女を愛でられない者に、名乗る名などないッ!だが……あえて言うとすれば、幼女を守り、幼女を慈しむ、幼女の使者、幼女仮面……ただいま参上ッ!!!」


 惨状だバカ。俺のシリアスを返せ。


「貴様には幼女の裁きを下してやる!覚悟しろ!」


 ねえマジでさー……ほんと何なの?なんでお前自分のピンチでもないのに覚醒してんの?バカなの?

 ってか性癖まで遺伝してんじゃねえかよ……あの威力のレーザーを普通に受け切ったのはさすがなんだけどさ、にしても無いわぁ……。

 勇者君たちも完全に取り残されて口開けてんじゃん……。


「お前……ラフロイグなのか……?」


 あれ、聖十字の団長さん知り合いなの?あの小児性狂愛者と。


「姉上……いや、今の俺は幼女の使者、幼女仮面!この俺に肉親などいないッ!」


 こいつ最初は「お前も誠の戦士でござったか!」とか何かそんな感じのこと言ってた真面目キャラじゃなかった?ねえ俺のいない間にどんなメガ進化しちゃったのよ……って思ったんだけど、幼女仮面って名乗って姉に気が付かれるくらいだし、隠してた感じなのかね。

 カリラに勝った時に手振ってたのは若妻にじゃなくて、若妻の抱いてる幼女にだったんだね。それに戦ってる時の俺を応援してくれる声ってのもそうなのか……思い起こせば節々にちりばめられてたわロリ魂。


「下郎、貴様は犯してはならない禁忌を犯した。その罪、贖ってもらおうか」


 こちらの話しを既に理解することを諦めたのか、あれだけ奇声を上げていたあの貴族でさえ無言で銃弾やらミサイルをばらまいてきやがった。

 もうこれどうしようもねえよ。一回壊れたシリアスはなかなか元に戻らねえんだっておじさん知ってる……。


「タイタン・アーマー」


 全ての攻撃を一身に受けてなお無傷の圧倒的防御力を披露する糞ペドの子孫の糞ペド。それとほぼ同時に、空中からクイーンのおっさんが、刀身と同じ長さの柄を持つ獲物を巨人に叩きつけた。


「テメエは、テメェらはその子からどんだけ奪えば気が済むんだよッ!」


 え、嘘、これで真面目ルート入るの?マジで言ってる?俺の手にはもう負えないけど、本当にいいの?ってかめんどくさいから帰っていいかな。

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