第28話 研究の結果、男の大半はサルである。

 そもそもだ、俺がどうしてそんな素材を多く手に入れられたか、何てのは実はひどい裏話があったりする。

 遭難した時に助けてくれたキャメロン・ブリッジというロリ魔女がくれた支配人の合鍵で、迷宮の封印された扉を開けまくったり、それ以外にもふざけた性能の道具の乱用で得た物だ。

 中には経費の方が多くかかったなんてこともざらにある。


「では各パーティーに騎士の方は移動してくれ」


 近衛の声で、雑用の連中が動き出した。その中の1人、ブラウンの髪を短く切りそろえた男が俺達の元にやってきて、自己紹介を始めた………坂下に向かって。


「私の名前はカストロ。騎士団の序列では4位に位置している。あなたの名前を聞いてもいいかな?」


 傲慢な態度とでもいうのだろうか。家名を名乗る様子がないという事は、平民の出か、そこまで裕福ではない貴族か。

 しかしまあ、明らかに坂下に色目を使ってやがるなこいつ。


「アタシは坂下雅でーす、んでアッチはガリリンとデーブ!」

「よろしくでござるよ!」

「やんす!」


 坂下の声に反応し、二人がカストロに手を上げて挨拶をする。

 しかし、カストロはそれをちらっと見るだけでそれ以外の反応は皆無だった。


「それと向こうは須鴨ちゃん!」


「あ、あの、よろしくお願いします………」


「えぇ、あなた方のような方と同じパーティーになれて光栄です。しかし、あのみすぼらしい男は一体………恩恵や神の気配を感じませんから勇者様専用の従者と言うことですか?」


 そう言って指さされた従者事悠里さんは、激しく落ち込んだ。

 それはもう落ち込んだ。 

 だってそうだろ?ガリリンやデーブはノーリアクションだったのに、俺は従者だぜ?おかしくね?まあ恩恵も神の加護も、勇者の力もないから仕方ないんだけどさ。


「あはは、ゆーりんも仲間だよ」


 坂下の苦笑いを受け、カストロは何かに気が付いた様な顔を浮かべ、「そ、そうだったんですね、これは失礼しました」と坂下に頭を下げた。 

 まてまてまて、そこは俺に頭を下げろよ、踏んでやっからさ。

 そのままカストロは俺の所に歩いて来て、耳元で他の誰にも聞こえないように小さく俺に声を掛けてきた。


「貴様のような無能のお守りをしてやるつもりはない、危なくなったら自分でどうにかするんだな」


 そう言ってすたすたと坂下と須鴨さんの所に戻っていったカストロ。

 うわぁ………耳元でささやかれて鳥肌が止まらねえよおい!息がかかって鳥肌増量中だぞ!?あいつももしかして宮本と同じでアッチなのか?そうなのか?

 

「顔合わせも済んだようだし、次に従者を紹介する、各従者は担当するパーティーの元に向かえ!」


 あぁ、駄目だ、いつかこの国を滅ぼさないと。 

 500年前の伝手がまだ有効ならこんな国簡単につぶせるんだが、今はそうではないし、機械人の領域にでも行って戦争でもさせようかな。

 なんてことを本気で考えるくらいに、俺は今の現状に腹が立った。

 それもそのはず、彼らが用意した従者とは、即ち、どれだけ劣悪な労働だろうと従い、危険だろうと見返りを求めることが出来ず、死んでも補填ができる様な人材だからだ。

 要約すると、“奴隷”だな。


「勇者様方、初めまして、この度の訓練の従者を務めますリアリーゼと申します」


 ふさふさの尻尾に、頭部から生える耳が何とも可愛らしい紫狼の女。

 しかしまあ、奴隷紋の命令を読み解けば、その命令が“命に代えても勇者を守り、訓練中は勇者を第二の主人と認め、第一の主人、あるいはその所属団体を害するようなこと以外の命令を受け入れる”とある。

 夜伽もさせるつもりなんだろうね。それで勇者を骨抜きにしちゃえばその奴隷を操る国は間接的に勇者を手籠めにできるわけだし。


 ちなみにだが、神崎パーティーには副団長と、案の定マリポーサが付くことになったみたいだ。

 チクショウ、俺のマリリンがあんな筋肉だるまと、優男にヒィヒィ言わされると思うと生体魔具で超高威力の爆弾を出して投下したくなるぜ。

 は?宮本?誰それ、ゲイの脇役なら知ってるけど。



 それから俺達は演習場をバラバラに出発することになった。

 この場に残って作戦会議をしてから出発する者、移動中にそれを済ませようとするもの、そもそも、そんなの関係ないぜーな明らかに雑用じゃなく基地外の引率するグループなどがあり、出発がバラバラになったことが原因だ。

 俺達はまずこの場で作戦会議をしてから行くスタンスらしく、他に残っているグループはなんとあの神崎グループだけという、なんともトラブルに見舞われそうな組み合わせだった。

 極力そっちを見ないように努めながら、俺はどや顔で無駄な情報を垂れ流し、知的な俺かっけえ、をしているカストロに目を向けた。


「―――そんな時は前衛が引き付けて、後衛が大型の魔法を用意するのが定石になっているんだ」


 あ、駄目だコイツ、マイワールド展開してて、俺のコミュ力じゃその世界に割り込めないわ。

 ちなみにウチのパーティーの男は全員撃沈の様子だった。

 まあそもそもが日陰者の集まりみたいなパーティーですし。


「それよりもさ、作戦会議、しなくていいの?」


 そこで、ようやく女神坂下が彼の話をぶった切った。

 少しあっけにとられた彼だが、二、三度咳ばらいをしてから、作戦会議に入ってくれた。


「まず、君たちの得意分野や、どういった力があるのか教えて欲しい」



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