第40話 お兄ちゃんずるい
アドを返して戻って来ると。お兄さんは同じ場所で待っててくれていた。
「早かったね」
「うん。お爺ちゃんに今日はもう帰るって言って来た。アドが普通の道ばかり歩いてくれたから、泥んこになってないし」
いつもテレビを見る為に夜まで居るけれど、テレビのついでにわんちゃんもしてたけれど。
約束のアドの散歩が終わってるんだもん。そっから先は僕の自由だ。
「珍しい事もあるんだな。友達と約束したのか?」
とお爺さんは快く帰してくれたんだ。
「乗りなさい」
背を向けたお兄さんがしゃがんでくれる。
「いいの?」
「僕のペットになってくれるんだろう?」
「ペット?」
「嘘んこでも、昔のアドの代わりをしてくれると言ったよね」
「うん」
「ペットと言うのは可愛がる為に飼う犬や猫のことを言うんだ。
撫でたり抱っこしたりお世話してやる生き物の事だよ」
「そっか」
僕は遠慮なくまたお兄さんの背中に乗った。
「……お兄さん。また指」
座りを良くするため、上下に振って僕のお尻を持ち上げる時。またお兄さんの指がお尻の穴に食い込んだ。
「ごめんごめん」
あんまりごめんなんて思って無い感じ。なので僕は言ってみた。
「ひょっとしたらお兄さん、わざとやってるの?」
「あはははは」
子供の僕に分かるほど、挙動不審に笑うお兄さん。
僕はお耳の近くで小声で言う。
「ひょっとしてお兄さん。人犬が欲しいの」
ぴくんと背中が震えた。
暫く僕もお兄さんも黙っていたけれど。耐えられなくなったお兄さんが静かな声でこう言った。
「ああ。そうか。アドを連れている時点で思い当たるべきだったかな。
ここじゃなんだ、続きは僕の部屋でしよう」
お兄さんの部屋。
あれだけ念入りにお掃除していたのに。戻ると机の上は元通り。本やメモの位置。開いているページまでお掃除の前に戻されていた。
床に落ちてた居た物も、明らかにゴミと判る物以外は紙箱に纏めてあった。
最初に僕は言っておく。
「僕、嘘んこのわんちゃんする時、首輪もすっぽんぽんもしてあげる。
けどさ。犬にはしない事は嫌だよ。お尻の穴に尻尾とか
するとお兄さんは、
「本物の仔犬の健康を調べる時、お尻の穴を調べたりするけれど」
と聞いて来た。僕は少しためらったけれど、
「そう言うのは……仕方ないけど。痛いのは
とはっきり言った。
「判った。痛いのはもうしないから、おいで」
「わん!」
僕は服を着たまま四つん這いになってお兄さんに近付く。
お兄さんは目を細め、
「可愛いなぁ。本当にわんちゃんしてくれるんだ」
僕を持ち上げうつ伏せに、ひざ掛けを掛けるように僕のお腹を膝の上に置いた。
こうして背中を撫でられまったりとしていた時。
「あー。お兄ちゃんずるい!」
突然部屋に飛び込んで来たのは、学校に上がる前の女の子。
抱っこしてと背伸びしたらパンツが見える短い丈のワンピースを着て居る。
お店で売って居る物じゃなく、多分手作りなんだろう。
左の胸と腰の左右にリンゴの形のポケットがあり、首回り・両袖・腰の部分がお
突然飛び込んで来た女の子は、トコトコ傍まで遣って来て肩叩きみたいにうつ伏せの僕の背中をポカポカ叩き、
「駄目ぇ~。ひざ掛けならチャコがする」
と大声を上げた。すると、
「
静かだけれど。低い声でお兄さんが名前を呼んだ。
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