第34話 酷い挿絵
只の裸の写真じゃない。半裸の女の人が縛られた白黒写真。
「なんだこりゃ!」
縛られた女の子が浣腸されている写真や縛られて天井から吊り下げられている写真。
かと思えば、おむつをして赤ちゃんの格好させられた女の人が、哺乳瓶みたいに黒い松茸みたいな棒を舐めている写真。
「うわぁ~」
漢字ばかりで読めないけれど、お話の挿絵はもっと凄い。
火の付いたように泣き喚く赤ちゃんの横で、おっぱいとお尻を
すっぽんぽんで猛獣のような檻に入れられている女の子。
見てて眩暈がする内容だった。
そんな中で、特に僕の目を引いたのが、人犬のなんとかと言う題のお話。後ろの文字は未だ習って居ない難しい漢字だ。
開いて直ぐの挿絵が、台の上ですっぽんぽんで犬のように首輪を着けてちんちんしている髪の長い女の子。顔は勿論泣いている。後ろには鞭を持った男が呼ばわっている。
その次はハサミで髪を切られて泣いている所。後ろの髪だけ短く切られて不格好だ。
ページを捲ると、四つん這いでお尻を持ち上げて泣きじゃくる後ろから、女の子の髪で作った作り物の尻尾をお尻に突き刺そうとしている場面。残された横の髪が右と左に束ねられて犬のタレ耳みたい。
うわっ。これなんか開けた口の中におしっこされてるし、お次は俯いて恥ずかしそうな顔をしながら、片足を上げて杭におしっこを引っ掛けている。
最後の挿絵は、雪の降り積もるお庭の犬小屋に、鎖で繋がれて横たわる女の子で終わっていた。
僕は、夢中になってエッチな写真ばかりの本を見ている石川の目を盗むように、こっそり表紙の取れた本をランドセルに入れた。
お爺さんのお
「ねぇお爺ちゃん」
「ん?」
「人犬ってなんなの? 僕、こんなの拾ったんだけど」
ランドセルからエロ本の湧く井戸で拾った本を取り出した。
「こら坊主。どこで拾った? これは子供の見る本じゃ無いぞ」
お爺さんはちょっときつめに僕に訊く。
「広島ストアの近くの空地」
答えながら例の人犬のお話しを開く。さっき最初のページの端を三角に折っておいたから、一発で開けた。
「人犬の挽歌。……たしかに人犬の話だのう」
「チコちゃんも相当酷いと思ったけど。人犬って皆こうなの?」
よっぽど怯えて見えたんだろう。お爺さんは僕をぎゅっと抱き締めて、
「これは作り話だからありえんことも描いておる。
特に最後のこれだが、こんなことをしたら一晩で凍え死ぬぞ。
マッチ売りの少女はまだマッチで暖を取ることが出来た。それでも凍えて死んでしまっただろう?」
「うん。女の子があまりにも可哀想なので、天国からお祖母ちゃんが迎えに来たんだよね」
「ああ。美しく飾ってはおるが、凍えて死んだのだ。まして雪の中ですっぽんぽんでは一溜りも無い。
大枚叩いて買い取った人犬だ。こんな勿体ないことはせんよ」
少しほっとした。でも、気に掛かる。
「お爺ちゃん。今最後のこれって言ったけど、他のはほんとなの?」
「最初のセリ売りは日本じゃ珍しいが、他は似たようなのは良く有ったな。
髪を切るのはこれよりもっと酷く、メスなのに丸坊主にされた奴もいる。
わしはしたことが無いが、人犬に小便を飲ませるのも、飼い主の匂いを覚えさせるための躾の一つだ。
尻の穴に尻尾。これも居たな。
「カゲマの修行? それって忍者の話?」
「どうしてそう思った。忍者なら伊賀とか甲賀だろう」
「お爺ちゃん。風魔って言うのも居るよ」
「坊主耳を貸せ。陰間と言うのはな……」
僕の耳にこしょこしょと内緒話。
「えー! そんなことするのぉ~!」
じと目でお爺さんを見ると、
「馬鹿もん! わしにそっちの趣味は無いわ」
と怒られた。
「まあ。坊主が尻尾を試してみたいと言うのなら、大きさを測って特注品を作らせない事も無いが。
試しにやってみるか? 女と同じで最初は滅茶苦茶痛いが、慣れると逆に気持ちいいとも聞くぞ。
興味があるなら、いい旦那を紹介してやらんこともないが」
言われてぶんぶんと、僕は頭を激しく振った。
「はっはっはっはっ!」
テレビの黄門様のような笑い声。
「戯言はさて置き。おやつにするぞ。食べ終わって
「うん」
エクレア、エクレア。どんなのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます