第05話 三つの約束
ふわっと身体が浮き上がって、僕はまたお爺さんに抱っこされていた。
「どれくらい食わせた?」
「これの半分」
ポケットに詰め込んでた銀紙を出して見せた。
「これくらいなら大事は無いと思うが、程々にしろ。中途半端に腹を満たせば晩飯が食えんようになる。
明け方に腹を空かして辛いのはアドだからな」
「うん。僕と同じだね」
「同じ?」
「テレビに夢中になっておやつの時間ずれて。晩御飯が食べれなくって叱られちゃうこと良くあるの」
「腹一杯で飯が食えぬとは、いい時代だな。今は」
「うん」
僕は当たり前のようにそう答えた。
取り敢えず、わんちゃんにされてもお
すると反対に、どうやるんだろうと興味がわいて来た。
取り敢えず困ったことに成っちゃわないか確認しよう。
「でさぁ。お爺ちゃん。役場にわんちゃんとして届けても。僕お家に帰れるんでしょ?」
これが一番大事な事。
「ああ。さもないと誘拐に成ってしまうからな」
良かった。でももう一つ。
「学校も行っていいんでしょ?」
帰れても、いつかじゃ全然意味ないからね。
「おいおい。子供は学校に行くのが仕事だろう」
ここまで確認して僕は言った。
「じゃあ。僕、お爺ちゃん
お爺さんはやれやれと言う顔をして、
「ちゃんとこれから言う約束が守れるか?」
「うん」
お爺さんは指を折りながら、
「約束は三つだ。
一つ、親に心配を掛けない。一つ、アドの散歩に付き合う。一つ、わしの言う事を聞け。
嫌ならいつでも帰れ」
と言った。
「親に心配掛けないは解るな? 学校をさぼってここに来てはいかん。きちんと五時までには家に帰れ」
「うん。当たり前の事だね」
「アドの散歩だが、昨今は犬だけで散歩にやるとお
うちに来て時間があったら、鎖を持ってアドの散歩に付いて行け」
うんと僕は頷く。
「ここでどんな格好しようと坊主の勝手だが、間違っても裸で四つん這いで散歩に行くなよ。
その時は坊主の首輪もここに置いて行け」
「しないよそんなこと!」
唇を尖らせた僕にお爺さんは、
「坊主。現にさっき遣ろうとしたではないか」
と言う。
「お外ですっぽんぽんでわんちゃんの真似は恥かしいよ」
「どう違う?」
「お
学校の友達とかに見られたら、何て言われるか判んないもん」
「おいおい坊主。その理屈だと、ここでなら素っ裸で犬の真似もうんちも出来ると言う事に為るぞ」
「あ……」
僕の顔がかぁーっとなり、黄門さまの様な笑い声が響いた。
こうして三つの約束の内、二つは問題無かったけれど。残る一つがちょっと不安。
お爺さんの言う事を聞くように言われても、それだけじゃどんな事か判らないからだ。
「お爺ちゃん。最後の一つはどう言うの?」
大笑いされた話を変える為にも、どきどきしながら僕は聞いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます