第55話 破壊と再生

 やみの中でひかりがまたたく。

 マユとサヤカが目を開いた。同じ言葉をさけぶ。

 つよい光があふれて、二人のラディラブがあらわれた。公園の一部分にともる明かり。

「心は、まだ解析かいせきできていません」

 メソンにあせりのいろはない。その胸元むなもとに向かって手をのばす、ピュアとアレンジ。

「お願い。シュー!」

「いくよ。ギア!」

 届いていないにもかかわらず、紫色むらさきいろ宝石ほうせきがきらめく。まぶしい光がはなたれた。あわが広がる。やみえ、あらわれた青空。

 シューとギアの力で、ノーシスが展開てんかいされた。町をすっぽりと包んでいる。


 ピュアの右手が、メソンの右手で止められる。

「いいところもわるいところもふくめて、わたしなんだよ」

 年上の女性に向けてではなく、シューに語りかける少女。返事はない。

 アレンジは、ギアに語りかけていた。

身体からだは心とつながってる。だから、わたしはここにいる」

 メソンのむねで、宝石ほうせきは光らない。左手がまじわわらず、少女が距離きょりをとる。

 みどり念導師ねんどうしやみるい、遠くで背の高い建物たてもの両断りょうだんされた。色の違いからノーシスだと分かるとはいえ、メソンにためらいはない。

「まだ、ぜんぜん話せてない」

「もっと、必要でしょ」

 ラディラブビームとくろ光線こうせんがぶつかる。はじけた光のなかを、ラディラブレーザーが突き進んだ。くろかみなりと押し合い、どちらもきりと消える。

 とつぜん、メソンが止まった。

 ピュアとアレンジには、二人の少年が見える。右手と左手をつかまえて、うなずく姿すがたが。

「それが答えですか。プシューコロギア。見せてください。すべてを」

 二人がならぶ。やるべきことをするために。

「アロングサイド!」

「デザイアー!」

 かつてないかがやきがほとばしる。力ではなく、心を伝えるために。やさしくもつよひかりでメソンが包まれ、輪郭りんかくが見えなくなった。二人の少年とともに。

 石のようなものが、重い音を立てて落ちる。光を反射はんしゃせず、やみでもない。


 すでにノーシスが消えている。建物たてもの健在けんざい

 芝生しばふの上で、レンマとミツキがました。寝ているリョウを起こす。

 二人の少女は、すでにラディラブではない。マユとサヤカの姿すがたに戻っていた。高い空を見るのをやめて、ぎこちない笑顔を作る。

 とめどなく談笑だんしょうする四人に声をかけ、ミツキが下を指さす。

 道がわりに公園を横断するタイルの上に、みっつのものが落ちていた。いままでしずんだいろだった場所が、ほのかなかがやきをはなっている。

 十の形に近い、桃色ももいろ宝石ほうせき

 Vの形に近い、水色みずいろ宝石ほうせき

 そして、ドーナツがた緑色みどりいろ宝石ほうせき。親指は入りそうにない。

 ひとつをマユがひろう。

 ひとつをサヤカがひろった。

 レンマとリョウにうながされて、緑色みどりいろ宝石ほうせきへと向かうミツキ。

 起き上がる人々。止まっていた時間が動きだしたように、まちさわがしくなった。



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