第十一節 さらなる色! 緑のメソン

第51話 プシュケーとロギア

 たおれている少女にる、二人の少女。

 噴水を見ない少年。高い空をあおぎ、ふたたび公園へ目を向けた。レンマが気まずそうに近づく。

 マユに抱き起されたミツキが、おさげをゆらす。目覚めをよろこんで、サヤカがきしめた。

 みんな安心して、雑談ざつだんしている。状況じょうきょうがよく分からないのはミツキだけ。みんなを質問攻しつもんぜめにした。

大丈夫だいじょうぶ。ラディラブが来てくれます」

 よく知る声が聞こえた。女性のもとに、あか宝石ほうせきんでいく。

「ネモトさん?」

 ミツキにつづいて、いっせいに同じほうを向く面々。落ち着いた緑色がたたずんでいる。おだんご頭の女性の前で、赤い光が止まった。

「メソン!」

 緑に対して、白がかまえる。短髪の少年は、ピリピリとした空気をまとっている。

「めそんって?」

ちから、ということは」

「ガイロンの博士はかせだ。早く変身へんしんを」

『ごめん。さよならだ』

 シューのあとに、ギアが1回光った。

 マユからはなれる桃色。ネモトへと飛んでいく。つづいて、水色も同じようにんでいった。

「あ! ロギアまで」

「ロギアが名前? 本当に?」

 女性に近づきながら、ギアが1回光った。

「サヤカさんって、意外いがい天然てんねんなのか?」

 ネモトがやさしく微笑ほほえむ。亀裂きれつが入る赤。ソーマがくだけ、桃色と水色のかけらに戻った。


「これから見せるのが、本来の姿すがたです」

 ネモトが、持っていた8個のかけらも宙に浮かせた。またたく無数むすうの光。すべてのかけらがここにある。

 桃色ももいろ宝石ほうせきにかけらが集まる。目の覚めるようなかがやきがおさまると、上側の長い、十に近い形になった。

 つぎに、水色みずいろ宝石ほうせきがきらめく。下側がたいらな、Vに近い形になっていた。

実験前じっけんまえと同じだ。プシュケー。ロギア」

 レンマの言葉を、ネモトが否定ひていする。

「それは、すでに分離済ぶんりずみのものです」

「シューは、もっと大きかったってこと?」

「ギアも?」

 マユとサヤカが聞いた。冬服でもゆたかな体つきをかくしきれない女性は、丁寧ていねいに答えつづける。まるで敵意てきいなどないように。

「ネモト・メソン。この個体こたいも合わせて、ひとつの宝石ほうせきです」

「プシュケーの被験者ひけんしゃじゃないのか? 何を言ってるんだ」

 レンマが混乱こんらんしている。ミツキにいたっては、うーんとうなって話そうとしない。

理解りかいされにくいので、人間の姿すがたもちいました。作ったと言うのが効率的こうりつてきです」

『そうだった。こんな性格せいかくだったね』

 あいかわらずかわいらしい声で、プシュケーが言う。ロギアが1回光った。

 メソンが宣言せんげんする。

「プシューコロギア」

 光のなか、ふたたび、ひとつになる宝石ほうせき。桃色と水色が合わさる。透明とうめいさがうしなわれ、石のようにしずんだいろになった。

「シュー!」

「ギア!」

 二人の心配しんぱいは、相手に届いているか分からない。そもそも、何を思っているのか、何を望んでいるのか。うかがい知るすべはない。

 Ψ(プサイ)に近い形となった、プシューコロギア。メソンの胸元むなもと融合ゆうごうする。

 本来の姿すがたになっても、メソンは服も髪型も変わらない。ただ、おだやかに笑った。


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