第50話 前向きな心
けわしい顔で、マユとサヤカが同時に構えた。
「お願い。シュー!」
「いくよ。ギア!」
二人の頭から離れて、まるいケースを生成する宝石。欠けているとは思えないような、きれいな見た目をしている。それぞれの相棒の手におさまった。
マユが白いケースをかざし、ピンクの宝石が輝く。
サヤカも同じように動き、ライトブルーの宝石が呼応する。
『エックスカラット』
「エックスカラット」
桃色の宝石と同時に、二人も言う。水色の宝石は1回だけ光った。
ピアノ中心の音楽と重なって、打楽器中心の音楽が鳴りひびく。
光に包まれる二人の少女。
はずむような高い音とともに、服が変化していく。マユは桃色と白色の多い、ひらひらしたかわいらしい服装へ。
サヤカは水色と白色が豊富。すこし落ち着いて見えるものの、ふくらんだ肩やフリルで彩られているのは同じ。
マユの手首に布が巻かれる。ソックスとともに、靴も変わった。
水色の長袖の先が、カフスに姿を変える。オーバーニーソックスとともに、靴もりりしく変化。
ピンクのスカートをゆらし、移動ポケットの飾りとして、シューがおさまる。
ライトブルーのスカートをゆらし、移動ポケットの飾りとして、ギアがおさまる。
前髪がふわりと動き、剣のような形の髪飾りがつくマユ。うしろ髪はそのままで、後頭部だけ小さくひとつに束ねられた。
サヤカには、翼のような形の髪飾りがつく。長いうしろ髪は手が付けられず、耳の上でふたつ細めに束ねてある。
二人の変身が完了した。ポーズとともに名乗りを決めて、和音がとどろく。
「ラディラブ・ピュア!」
「ラディラブ・アレンジ」
シューとギア、そしてソーマの力がぶつかる。
天に届くほど広がる泡。いくつもの区域を包む、巨大なノーシスとなった。
色の違う幻の世界で、二人の少女は話しかける。
「ミツキじゃなくて、ソーマなんでしょ?」
「私たちが戦う必要なんて、ない!」
ダークラディラブは無言で闇を振るった。あとずさる二人。黒と赤の混じる少女は、攻撃の手をゆるめない。吹き飛ばされた二人によって破壊される、噴水。
普通の人には聞こえない音が、レンマの意識を引き戻した。
「寝てる場合じゃ、ない……だろ」
少年がゆっくりと立ち上がる。
ひたすら力を使いつづける黒い少女を目の当たりにして、レンマの表情がゆがむ。乱れた白い服も気にせず、思いのたけを
「宝石の知識を得られないどころか、こんなことに。だから、頭が悪いとダメなんだ。ぼくみたいなやつは!」
「話をすればいいだけだよ」
「一人でできないことが多いから、みんな誰かに手をのばす。でしょ?」
明るい顔で攻撃を防ぎつづける二人。
ピュアとアレンジの言葉は、少年が想像していたものとは違ったらしい。驚きの表情を浮かべたあと、レンマの顔に力が入る。
「ラディラブなら、命を奪わない。万が一のときは、治す。だから、思いっきりやれ!」
二人の少女の笑顔が、少年の心を動かした。
「苦しいんだね。大丈夫。元に戻してあげる」
「ラディラブレーザー!」
迷いのないふたつの光が、相手を追い込んでいく。アレンジの放つ沢山の光が曲がった。網の目になって、立体的に動きを制限している。
白が跳んだ。黒のうしろに回り込む。ありったけの念動で、赤い宝石を封じた。
「今だ!」
叫び声の前に、二人はすでに並んでいた。
「アロングサイド!」
「デザイアー!」
二人で協力して光を放つラディラブ。激しい渦で、ダークラディラブが包まれる。
レンマも光をあびていた。安らかな表情が、さらに優しくなる。
暗黒は、もうない。
ノーシスが消えた。横たわるミツキと同じく、現実の噴水は健在。
赤いソーマは、寒空のもとで宙に浮いたまま。
「力が反転したのか」
自分の身体を見るレンマは、一人で納得していた。ほっとした表情になる。
元に戻って、マユとサヤカがにこにこしている。変身後に勝るとも劣らない輝きを放っていた。
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