第47話 晴天のネモト
三人は公園にいた。冷たい風が吹き抜ける。
しっかりと柔軟体操をする少女たちを、見る人はすくない。どんよりとした空と同じく、ほとんどの植物はくすんだ色。多くの木々が葉を散らしている。
運動はマユの提案。もちろん、念動と関係はない。
しっかりと筋をのばし、ボブカットの髪がふわりとはねる。ひざを高く上げた。芝生を踏みしめる。
サヤカは寒そうだ。体操を終え、ひたすら動く。髪がサラサラとなびいた。
鼻息を荒くする、おさげの少女。ひとりだけジャージ姿ではない。普段着。がむしゃらに走り出し、マユと競争になる。
はしゃぐ子供たちが足を止める。仲のよさそうな親子がベンチに座る。そんなことは関係なかった。
「きびしいけど、負けないよ」
ミツキは、自分の中の何かと戦っていた。
ガイロンの本部。ドアが開く。
女性が中に入っていく。黒い部屋でどっしりと座るガクに、穏やかな顔を向けた。
「どうした、博士。珍しいな」
博士と呼ばれたのは、白衣姿で髪をまとめている女性。頭のうしろをお団子のような形にしている、ネモト。
「かけらをすべて渡してください」
「何をバカな。護衛がいなくなるではないか」
ガクの言葉で、八人がネモトを取り囲んだ。ガイロンのボスは知っている。博士が冗談など言わないことを。
黒いスーツ姿の幹部たちは、手を出さない。念動を高めつつ、命令を待っていた。
かけら単体でも、部屋ひとつを吹き飛ばすだけの威力を秘める。
「もう必要ありません」
スーツのポケットが光り出す。
8個のかけらが、ひとりでに飛んでいった。美しい胸の前で浮かんでいる。
あっけにとられる幹部たち。だれも触れていないのに、一人、また一人と倒れていく。
「まさか、最初から? メソン。俺は、世界を――」
「あなたたちは、終わりです」
ネモトがにっこりとほほ笑む。部屋が静かになった。
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