第三章 終わりのプシューコロギア

第十節 レンマの告白? 集合体ソーマ

第46話 つかの間の平穏

 ごく普通の家。庭に立つ少女の息は、白い。

 出かける母親を見送ったあと、その場にとどまっていた。暖かそうな服のマユが、顔の温度を上げる。左右から待ち人がやってきた。交わされるあいさつ。

 マユが家に入る。髪の長い少女のあとに、すこし背の低い少女が続いた。

「戦えないけど、役に立ちたいの」

 上着をぬぐ二人が固まった。暖房のきいた部屋が、落ち着いた色合いに反して引き締まる。

 ミツキの思いは強い。分かっているからこそ、サヤカは悩んでいた。やさしく、上着をぬぐようにうながす。

 まるい電気こたつの布をつかみ、三人が足を入れる。三角形を描くように座った。

『見えるから、念動ねんどうの素質はあるはずだよ』

 マユの頭からひびく声。髪飾りのようについていた宝石がはずれて、こたつの上に乗った。

 サヤカからも飛んでいく。水色の宝石が1回光った。

 出会ったときには割れた部分のあった、ふたつ。いまは変化している。きれいにカットされたように。ミツキはそれを知っている。

「すごーい。ねんどうって何?」

 目をかがやかせる小学生に、ふたつの宝石は無反応。

「ちょっと。ラディラブはあぶない、とか言ってよ。シュー」

 プールでの戦いを、ミツキは見ていた。つまり、ノーシスに入ることができる。戦いの危なさを知るマユは、桃色の宝石に怒りを向ける。

「ギアは私。シューはマユ。ふたつしかないから」

「うん。だから、あたし、何ができるか見つける!」

 どうにか諦めさせようとするサヤカの試みは、成功しなかった。

 熱心なミツキに、二人は困り眉。はっきりと断ることができない。


 しばらく現れていない、ゲーセーマ。

 マユとサヤカは、ミツキを巻き込まなくてほっとしている。

 しかし、当の本人はうずうずしていた。何かをしたいのに、それが見つからない。

「怪物あらわれないの、なんで?」

『その答えを出すためには、ガイロンの情報が少ないね』

「シューは手がないけど、だいじょうぶなの?」

 真面目に答えるシューを見つめるのは、一人だけ。中学生の二人は、お互いの顔を見ていた。

 サヤカが勉強を提案する。

 マユが拒否した。

 桃色の宝石は、何も案を出さない。

 ミツキが絵を描きたいと言って、お絵描きが始まった。

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