第45話 二人はラディラブ

 かたむいたらされる公園。茶色の部分が目立つ。

 子供たちが仮装かそうして、おもに家族連れでにぎわっている。この日だけの、時間限定じかんげんていのハロウィンパーティー。

 ピュアとアレンジがあらわれた。いつもと違い、きょろきょろして落ち着かない様子。

大胆だいたんめるねえ。意外にも」

「すごいなぁ。ドレスみたい」

 声をかけたのは、吸血鬼きゅうけつきのような姿すがたをしたメグミと、魔女まじょのような姿すがたのカナエ。ちゃんと、マユとサヤカだと認識にんしきしている。

「これしかなかったよ」

「来ないのは、わるいし」

 しどろもどろな二人は、念動ねんどうを使わず姿すがたかくしていない。衣装いしょうを用意せずに参加するための、苦肉くにくさく

 ゲーセーマとラディラブのたたかいを知るよしもなく、人々の反応はうすい。さわぎにはならない。

可愛かわいらしい服装です。風邪かぜをひかないように気をつけてください」

 ネモトが通りすがりに手を振って、すぐ去っていった。

 野球のユニフォームを着ただけのコウスケは、二人の元ネタが分からない。

 白いフードで幽霊ゆうれいをイメージしているレンマも、めた反応はんのう

「たぶん、かわいいんじゃない? よく分からないけど」


 マユの脳裏のうりに、学校での会話がよみがえる。

 ゲーセーマをたおしたあと。ることなく、校庭に立つゲー。姿すがたがはっきりと見える。

「ふたつの宝石ほうせきは、博士はかせによって作られた」

ちがう。ボクの意志いしでここにいる』

「そうだよ。っちゃうなんて、ひどいよ。そんなところに帰せない」

やみおおうことに反対して、こうなったんじゃない?」

 ピュアとアレンジの反論はんろんに、ゲーは無反応むはんのう。どこかさみしそうな表情をかべる。

「かけらはあと少し」


 ラディラブの衣装いしょうがすこしずかしくなってきた、ピュアとアレンジ。

 夕焼けがあたりをめる。パーティーの終わりが近い。ふたりの少女は、公園の隅のほうへ移動した。

「そんな姿すがただったのか」

 男が言った。いつもと同じような黒い服装。ちからつよくないリョウには、はっきりと見えていなかったらしい。

「ざらざらしてたんだね。リョウには」

衣装いしょうは?」

忠告ちゅうこくしに来ただけだ。用心ようじんりねぇぞ。気をつけろ」

 去っていく途中で女性にからまれて、なにやら言い合いながら公園を出ていった。

「あ! ラディラブ!」

 うれしそうな声が近づいてくる。ぴょんぴょんとねる、赤ずきんの少女。

「ラディラブ・ピュア!」

「ラディラブ・アレンジ」

 ふたりが決めポーズを取った。歓声かんせいを上げる少女。フードがぬげて、ミツキの笑顔があらわになる。

「プールのときとちょっと違うね。あのときは顔がよく見えなかったけど」

 言葉の意味を理解りかいするまで、しばしの時間をようした。二人がおどろく。

 ミツキにはノーシスでのたたかいが見えて、聞こえていた。



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