第44話 かがやく宝石

 くろたまをはじき返しながら、少女が言う。

「こんなところで、立ち止まってる場合じゃないのに」

 はねかえされたたま怪物かいぶつのほうにって、もうひとりの少女が聞く。

「記憶が戻っても、やっぱりしゃべらない? それでいいけど」

 どちらの宝石ほうせき反応はんのうしない。風のない水面みなものようにきとおっている。

 ふせぎきれなかったたまが、へいやその先の民家をこわしていく。ピュアの表情はしずんでいた。

「ごめんね。シューの力を、もっとうまく使えたら」

『違う』

「え? だって、わたしが――」

足枷あしかせになってるのはボクだ。完全かんぜんじゃないから、念動ねんどう制限せいげんしてる』

「いいよ。それで」

 ピンク色がふわりと舞い、攻撃こうげき回避かいひ。ポケットの宝石ほうせきは、次の言葉を待っていた。

「わたしがつよくなれば解決かいけつ!」

無茶苦茶むちゃくちゃだよ。やっぱり、ボクがいないとね』

 ギアが1回光った。気づいたアレンジが、ピュアのもとへる。


 桃色と水色の宝石ほうせきが、優しいひかりつよくする。

「何? これも計画のうちか、メソン」

 ゲーが、手を顔に近づけた。おどろきの表情が隠れる。またたくシューとギア。宝石ほうせきが、きれいにととのえられた見た目へと変化した。

 ポケットの中のケースは、そのまま。かけらはくっついていない。

「痛そうな見た目じゃなくなったね。よかった」

『そんなことより、ボクがいつも言ってるあれをさけんで』

 ピュアとアレンジがお互いを見る。するべきことは決まっていた。

「エックスカラット!」

 二人が、宝石ほうせきと同じような光を放つ。かがやきのなかで、衣装いしょうがすこし変わった。白い部分が多くなる。

 まぶしさがおさまって、ピュアとアレンジが決めポーズを取る。


 いままでの苦戦くせんうそのように、桃色と水色が躍動やくどうする。

 身体からだからわきだす光を使い、空中でも素早い方向転換ほうこうてんかんをしていた。羽衣はごろもをなびかせて。

「相手がおそくなった?」

ちからが、あまりいらない」

 ゲーセーマの攻撃こうげきをよけ、反撃はんげきてんじる二人。ためを必要ひつようとしない。光をまとって、次々と決定打けっていだが決まる。枝がびるより早く、怪物かいぶつを校舎まで吹き飛ばした。

『二人の本当のちからだよ。カラットは、ラディラブ』

「シューも冗談じょうだんが言えるんだね」

 ギアが1回光った。

「そんなことより、とどめ」

 ならぶ二人には、世界がスローモーションに見えていた。

「アロングサイド!」

「デザイアー!」

 燦然さんぜんたるひかりはなたれる。のがれるすべはない。きらびやかになり、輪郭りんかくが消えるゲーセーマ。

 用務員ようむいんの男性が現れて、ノーシスが役目を終える。

 ふたつのかけらが、ピュアとアレンジの手へと飛んできた。


 色が戻って、元の世界に戻ったことが分かる。

 いつものように、周りがこわれていないことに安心する二人。ゲーの姿すがたがある。いつものように立ち去らなかった。

 ラディラブと向かい合う少年が、ゆっくりと口を開いた。


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