第43話 矛盾と使命

「あっ。ここは、ちょっと」

「隠れる場所がないかも」

 学校の前で変身することをためらう、二人。ゲーに躊躇ちゅうちょはない。

「気にするな。どうせ認識できない。気になるなら、見る者をなくしてもいい」

「ダメ!」

 マユとサヤカが同時に構えた。反応して頭から離れる、シューとギア。


 意識を圧縮することで、時間がゆっくり感じられる。

「お願い。シュー!」

「いくよ。ギア!」

 マユの手のなかで、シューがまるいケースを生成した。ピンクの宝石が輝く。

 サヤカもまるいケースをかざす。なかでライトブルーの宝石が輝いた。

『エックスカラット』

 水色の宝石が1回だけ光る。

 ピアノ中心の音楽と重なって、打楽器中心の音楽も鳴った。

 光に包まれる二人の少女。

 服が変化していく。マユは、桃色の多いかわいらしい服装へ。半袖になった。

 サヤカは水色を基調とした服装になる。二人ともあちこちにフリルがついていて、ひらひらとなびく。

 マユに剣のような形の髪飾りがつく。ボブカットのうしろ髪はそのままで、後頭部だけ小さくひとつに束ねられた。

 サヤカに翼のような形の髪飾りがつく。長いうしろ髪はそのままで、耳の上をふたつ束ねてある。細めに。

 まるいケースごと、移動ポケットにくっつくシュー。そして、ギア。短めのスカートがゆれた。

 二人がポーズを取り、かがやきを放つ。

「ラディラブ・ピュア!」

「ラディラブ・アレンジ」

 実時間での変身は、あっというまに完了している。


 ふたつの方向から力がぶつかった。

 泡のような広がりは、別の世界を作り出す。学校を中心にした地域が、すっぽりと包まれた。

 ノーシスに入る、怪物と三人。


 桃色の残像ざんぞうが、黒色をはじく。周りの色がすこし違う。

 ピッチングマシンは止まらない。ふたたび黒い弾が飛び出し、学校の門が粉々になった。

 校庭のまんなかに立つ怪物。大きいため、組み合わされているモチーフも巨大。弾は、大玉転がしで使うものに近い大きさ。

「だったら」

 加速する水色が、黒色を縫うようにして近付く。

 ゲーセーマの右腕が動いた。横に振られ、しなるホース。人の背に近い厚み。むちのような強烈な薙ぎ払いを、アレンジが防御した。

「ここ!」

 ピュアが叫んで、一気に近づく。ジャンプした。左手にまとう光を、怪物の肩にぶつける。そのまま右腕で攻撃しようとして、できなかった。

 怪物から伸びた木の枝が、動きを制限する。距離感がつかみにくく、目くらまし効果もある。

 ゲーは、無言で眺めていた。二人は下がるしかない。

「どうすればいいかな」

 ピュアがシューを頼って、返事はない。

「何か手はない?」

 アレンジに対して、ギアは2回光った。

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