第九節 思いの光! 変化する宝石

第41話 シューの心

 ならぶ二人のラディラブ。

「アロングサイド!」

「デザイアー!」

 つよい思いが重なった。協力して放った光は、闇を逃さずゲーセーマを包む。

 晴れる暗雲。もう怪物はいない。横たわる女性が現れて、ノーシスがゆらいでいく。

「やるようになったな、ラディラブ」

 白い少年が跳んだ。公園の木々の中に姿を消す。ゲーはいつも、自ら戦おうとしない。

 ピュアが手をのばし、飛んできた桃色のかけらを回収。

 あたりの色が変わるなか、シューは記憶を思い出していた。


「さあ、行きなさい。プシュケー」

 ふたつの光で、灰色の部屋が染まる。

 砕ける直前のことだと、桃色の宝石が理解した。


 変身を解いたマユが、うきうきしている。

 指輪入れのようなケースを取り出して、かけらを入れた。腰の移動ポケットにしまう。

「シュー、何か思いだした?」

『うん。まあね』

 手のなかから響くのは、機械的に変換されたような音声。それでもかわいらしさが伝わる。

「やったね」

 茶色い冬服の少女が、長めの袖をバタバタと動かした。まだ茶色くない公園で。紅葉こうようは、ひと月ほど先。

『ああ。よくやったよ。今後も続けよう』

 うかぶ宝石。頭へ飛んで、髪飾りのようにくっついた。じっさい、ある程度の念動があればそう見える。力のない者には認識もできない。

 濃い青色をまとう少女は、じっと見つめていた。やけに他人行儀だと思いながら、サヤカは何も言わない。頭に、水色の宝石がおさまった。


 歓声がおこる学校。今日は運動会。

 マユとサヤカは、どこか緊張した表情だった。まだ暑さを残した季節だから、ではない。プールでの教訓から、髪飾りとして宝石をつけている。

 元気いっぱいな、体操服の少年少女たち。レンマがいつも通りの活躍を見せる。

 そして、怪物は現れなかった。

 終わるプログラム。午前中にすむため、生徒たちは学校でご飯を食べない。

「どこかへ行かない?」

「着替えてからの方がいいと思う」

 運動場の端。ジャージ姿の女子たちが集まって、わいわいと盛り上がっていた。

『ここで話す必要がないね』

 ずいぶんと記憶の戻ったシューが、すこし冷めた態度になっている。さすがのマユでも気づいていた。

「反抗期?」

『違う』

「いったん家に帰って、集まりましょう」

 サヤカの提案で、はーいという合唱が起こった。ギアは1回光るだけ。喋らないので違いが分からない。

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