第39話 水の特性

 宝石の念動が、かけらのものとぶつかる。泡となって広がった。

 建物をはるかに超える範囲が変わったことを、内側から知るのは難しい。


 ノーシスへと入る、ゲーセーマとラディラブ。

 色の違う別世界のできごとが、普通の人には見えなくなる。力の強い者を除いて。

「あれ? いない」

「気を抜かないで」

 巨大な鍵が振り回され、水しぶきが散る。相手は10メートルもの高さがある怪物。右腕を動かすだけで、プールの一部があっけなく壊れた。

 怪物を生みだしたはずの、ゲーの姿はない。いったん白い幹部を忘れ、二人が前を向く。

「練習したんだから!」

 ピンクの閃光がほとばしる。ひらめくスカート。だが、蹴りはゲーセーマに届かなかった。

 壁になっているのは、水。

 左手から突きだす魚のひれを、ピュアが両手に集めた光で防いだ。いったん下がる。

「まっすぐぶつかっても、ダメだあ」

「そう。屈折率が違うから。光が曲げられる」

 飛んできた果物をはじき返しつつ、アレンジが言った。


 ふたつの光が、目まぐるしく動く。

『改善点を伝えなくてもよさそうだね』

「頼ってばっかじゃいられない。私だって!」

 移動の補助として光を使い、果物をよけながら接近。ピュアのこぶしが左脚をとらえた。流れ弾となった果物で、天井の一部が壊れてしまう。

 アレンジは別方向から仕掛ける。さらさらと風を受ける髪。

「ラディラブレーザー」

 水で曲がった光が、そのまま腕に直撃する。防がれることを見越して、あらかじめ角度を変えていた。

 そのすきに、水の少ないところを狙うピュア。

 桃色の蹴りが胴体に炸裂さくれつ。ゲーセーマはプールサイドを越え、壁まで吹き飛んだ。

 ふたりが並ぶ。狙いはひとつ。

「アロングサイド!」

「デザイアー!」

 協力して、まばゆいばかりの光を放った。ゲーセーマが包まれる。

 現れたのは水着の男性。幻の世界が、泡のように消えていく。

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