第38話 ことなる感性

「飲み物!」

「私も」

 すこし高い声を出して、マユとサヤカがその場を離れた。

 不思議ふしぎそうな顔をする少年少女たち。人の形の巨大きょだい怪物かいぶつを、人々はこわがっていない。

 ミツキは手をのばしていた。二人を追いかけようとして足がすくみ、ふるえている。

大丈夫だいじょうぶです」

 女性がやさしくいた。次のささやきに、ミツキがうなずく。緑色の水着ごしにゆたかなむねにふれ、鼓動こどうが落ち着いていく。

 マユと家が近いため、おだんごヘアの女性と面識がある。なぜここにいるのか。いまの少女にはどうでもよかった。

 更衣室こういしつへ急ぐ、マユとサヤカ。ふたつの何かが飛んできて、あわてて止まる。

 浮かんでいるのは、まるいケース。ついているのは、シューとギア。

『あのくらいのかぎなら開けられる』

 アイコンタクトをしてうなずく、二人。それぞれの相棒あいぼうをつかんでかくす。


 同時にかまえた。りりしい顔になる。

「お願い。シュー!」

「いくよ。ギア!」

 マユの手のなか。まるいケースの中央で、ピンクの宝石ほうせきがきらめく。

 サヤカも続き、ライトブルーの宝石ほうせきねつびる。

『エックスカラット』

 桃色ももいろ宝石ほうせきが、いつものように宣言せんげんした。あいかわらず、水色みずいろ宝石ほうせきは1回だけ光る。

 ピアノ中心の音楽といっしょに、打楽器中心だがっきちゅうしんの音楽が螺旋らせんえがく。

 まぶしいひかりおおわれる、二人の少女。

 こころおどる高い音を鳴らして、服が変化していく。マユは桃色が多い。すこしだけ入る緑色がアクセントになる。

 サヤカは水色が目立つ。ワンポイントで橙色だいだいいろが入った。どちらも、かたの部分がふくらんだ、かわいらしい服装。フリルで彩られている。

 マユの手首に布が巻かれる。ソックスとともに、靴も変わった。

 びた長袖ながそでの先が、カフスに姿を変える。オーバーニーソックスがあらわれ、靴も変化。

 ピンクのスカートの左側に、移動ポケットの飾りとして、シューがおさまる。

 ライトブルーのスカートの左側には、同じようにギアがおさまる。

 前髪をゆらし、けんのような形の髪飾りがつくマユ。うしろ髪はそのままで、後頭部だけわずかに束ねられた。

 サヤカには、つばさのような形の髪飾りがつく。長いうしろ髪はいじれず、左右がふたつ細めにまとまる。

 二人がポーズをとる。名乗りを決めて、和音が変身へんしん完了かんりょうを知らせた。

「ラディラブ・ピュア!」

「ラディラブ・アレンジ」


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