第八節 ゆれる陽炎 巨大なプール

第36話 集まる人たち

 大きな建物たてものに近づく、マユとサヤカとミツキ。

「心配ないよ。ミツキ」

まかされるのは、わたしでしょ?」

「ふたりがいい!」

 中学生の二人はえらそうにしていない。一人の小学生は甘えていた。

 かげから手を振る友人を見つけ、マユたちも手を振り返す。

 午前中でも日差しが強い。道からの照り返しであまり暑さをしのげないものの、建物たてものかげに入った三人が落ち着く。

 合流したメグミとカナエは、なにやら笑っている。

「まさか、こんなに仲よくなるなんて」

「まさか、まさかだよねぇ」

 はにかむサヤカ。となり緊張きんちょうした様子のミツキに気づく。優しい言葉をかけ、笑顔が戻った。雑談ざつだんに花が咲く。

「ジャマじゃね? もうちょっとはしろうぜ」

「おはよう」

 女子たちのもとに、二人の男子がやってきた。同じクラスのコウスケと、隣のクラスのレンマ。

「えー?」

 おどろいて挨拶あいさつどころではないマユ。おかっぱよりも長めの髪が乱れた。さわがしくなる前に、メグミが説明する。

「二人は、カナエが呼んだらしい」

「来てくれた」

「コウスケはともかく、あんまり親しくないのに、よくレンマを呼んだよね」

「運動が苦手で、教えてほしいからねぇ。めぐめぐはムリだし」

 集まった少年少女たちは、防水に優れたかばんを持っている。夏服がさわやか。

「マユに頼めばいいじゃん」

「教えるの苦手でしょ? まゆまゆ」

「えへへ」

 ショートカットの少女と長いくせ毛の少女が、動いた。否定ひてい肯定こうていもしないマユをいじって、なごやかな雰囲気ふんいきになる。

 普通ふつうの少年が、元気よくせかす。

「長話はいいから、さっさと行こうぜ」


 広い更衣室こういしつに、いくつかのグループができている。

 水着に着替えたボサボサ頭の女性が、ロッカーに荷物をしまう。カギをかけた。

「ごめんね。シュー」

「ギアも」

 別々のロッカーに入れられる、ふたつの宝石ほうせき。光ったかどうか、見ることはできない。

 シューとギアは、持ち歩くと目立つ。と、二人は思っている。宝石ほうせきをほとんどの人からかくせるほどちからしたことに、まだ気づいていなかった。

 カギをかけた二人は、布面積ぬのめんせきが広い水着姿。それぞれ、好きな色をまとっている。


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