第34話 白い少年

 くろ部屋へや。ガイロンのボスが目を動かす。

 白い少年が入ってきた。かすれたような姿すがたはゆがみ、現実感げんじつかんとぼしい。

「ゲーセーマを生み出したぼくは、ゲーという名前で呼ばれるみたいです」

 その声も、ノイズが入ったようで元がわからない。

 ガクが鼻で笑う。机の上で将棋しょうぎこまを動かした。

「ふむ。計画に変更はない。ゲー、引き続き頼むぞ」

「すべては、秘密組織ひみつそしきガイロンのために」

 ゴーグルをつけた少年が、部屋へやから出ていく。ガク直属ちょくぞくの八人の部下は作業中。挨拶あいさつはなかった。


 音を立てて動くスーツ。二人の部下が、休憩きゅうけいのため退室たいしつする。

「いやー。よく、秘密組織ひみつそしきって、真面目まじめな顔で言えるよなー」

「いま言ってるじゃねえか」

 灰色はいいろ廊下ろうかにひびく足音。気の抜けた会話は、さらにつづく。

 すべて聞かれていると、まったく気づかずに。

 がりかどで壁に背をつけ、ゲーが息をはく。

 ボスが手元に置いているだけあって、二人とも、それなりにつよ念動ねんどうちからを持つ。さとられずに近寄るためには、よりつよちからが必要になる。

「さすがに数が多い。尚早そうしょうだな」


 かげろうが立ち昇りそうな公園。

 いくら緑があっても、むせるような暑さが襲う。人影はまばら。歩道を通る人も珍しい。

限界げんかい。とける」

「急ぐと暑くなるし、困るよねぇ」

 ショートカットの少女も長いくせ毛の少女も、汗をにじませている。メグミとカナエがとおりすぎた。

 大多数だいたすうの人々は、ノーシスの存在そんざいに気づいていない。

 あわのようなものが消えて、ピュアとアレンジがあらわれた。

 こそこそする二人は、ずかしそうな表情。かくれて、変身へんしん解除かいじょする。

「あっつい」

「本当に、外に長くいられないね」

『ボクは問題ないけど、二人は気をつけて』

 日差しをさえぎるため、移動する二人。それを、白い服の少年が見ていた。


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