第33話 約束の確認

 炎天下えんてんかの公園に、ほとんど人の姿はない。

「本当にやるの?」

「うん!」

 不安そうなサヤカと違って、マユはやる気。夏服のふたりの少女が向かい合う。


「お願い。シュー!」

 取り出したケースをかざすマユ。ピンクの宝石ほうせきかがやきをす。

『エックスカラット』

 宝石ほうせきしゃべったあとで、ピアノ中心の音楽が鳴った。

 マユの華奢きゃしゃ身体からだが光に包まれる。

 笑顔がはじけた。はずむような軽快けいかいな音とともに、服が変化していく。

 まずは胴体どうたいあらわれる。ピンクの部分が多い。白くひらひらした布が、重なるようについている。ふくらんだ肩口かたぐち胸元むなもとだけではなく、あちこちに。

 スカートにもレースの部分が多い。わずかにある緑色とともに、桃色へえるいろどりとなった。

 白と桃色が巻きつく手首。靴もかわいらしく変わる。

 もともと移動ポケットの飾りだったかのように、腰の左側にシューがくっつく。

 右目でウィンクした。前髪がゆれる。けんのような形の髪飾りがついた。

 うしろ髪はそのまま。後頭部だけ、わずかに束ねられた。ひとかたまりでぴょこんと出ている。

 全体的にわずかにあるグリーンによって、ピンクが引き立つ。

 少女が変身へんしんげた。

「ラディラブ・ピュア!」


「いくよ。ギア!」

 サヤカが、まるいケースをかざした。なかのライトブルーの宝石ほうせきかがやく。

 1回だけ光った。

 打楽器中心だがっきちゅうしんの音楽が鳴りひびく。

 光に包まれる少女。すこし柔らかな表情になる。

 かがやいて、服が変化していく。はずむような高い音とともに。

 あざやかな水色を基調とし、ひらひらとしたかわいらしい服装になった。あちこちがフリルでかざられている。

 ふくらんだかたから長袖ながそでがのびた。長くなった靴下にあわせて、靴も変わる。

 短めのスカートがゆれる。あわ青色あおいろの移動ポケットの飾りとして、ギアがおさまる。

 さわやかな微笑み。前髪の左上に、つばさのような形の髪飾りがつく。長いうしろ髪はそのままで、左右がふたつ細めに束ねられた。

 決めポーズとともに、変身へんしん完了かんりょうした。

「ラディラブ・アレンジ」


 ぶつかる力。ノーシスを展開てんかいし、二人が消えた。

見間違みまちがいか? 身体からだを冷やさないと」

 とつぜん、可憐かれんな少女たちが見えなくなった理由が、中年ちゅうねんの男には分からない。水分を補給ほきゅうしながら遠くを見つめていた。

 念動ねんどうちからつよくなければ、変身へんしんもそのあとも認識にんしきできない。幻の世界を知る人は限られる。


「わかりやすくいこう」

「そのほうが助かる」

 ひかりげてまとい、攻撃こうげき防御ぼうぎょを繰り返す二人。

 すばやくない。ゆっくり、確かめるように動いていた。

『暑くないように調整しているボクに、感謝してほしいところだね』

「シュー、ありがとう。もっとつよくなるから、記憶を取り戻そうね」


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