第七節 闇の組織! ガイロンの謎

第31話 かけらの入れ物

 夏休み。外は暑い。

 ふたりは、涼しい建物の中。ショッピングセンターでかわいい小物を眺めていた。目をかがやかせ、話が絶えない。

 桃色が気になるマユと、水色が気になるサヤカ。

 花が咲いたかのような魅力的な雰囲気をまとっていることに、少女たちは気づいていない。

「長ぇよ。さっさとしろ」

 うんざりした様子の男が急かす。肌をほとんど出さない黒っぽい服装で、高校生くらいに見える。メガネの奥の左目がゆがんだ。

「もうちょっと」

「これはどう?」

 軽いノリで、さらに待たされることになる男。ひたすら棒立ちをつづける。長めの前髪をいじり始めた。

「知ってる奴でも警戒しろって言っただろ。ああ、最悪変身すれば」

『どれでも機能に差はないよ』

「ぶん殴られて終わりのほうが楽だったな、こりゃ。いや、目ぇ覚めないか」

 薄ピンクの移動ポケットから発せられたシューの言葉に、リョウは反応しない。かけらでセーマになったこと、ラディラブに敗れて助けられたことを思いだしていた。

「いいでしょ」

「かけらがあとどれくらいあるか、分からないし」

「ああ。いい。すごい、いい。じゃ、貸せ」

 集まってきたかけらを入れるためのケースは、ようやく決まった。白を基調とした、指輪入れのような四角いもの。おそろいで2つ。

 代金を、リョウが払った。


 黒を基調とした部屋。

「ガク様。ご報告いたします」

「宝石についてだな。話せ」

 スーツ姿の若者が、中年の男性から許しを得た。座ることは許されない。ガクは席についていて、高そうなスーツを着こなしている。

「博士によると、ガイロンの計画は第二段階へ移行。かけらは集まることに意味がある。とのことです」

「ふむ。そういうことか」

 見るからに高価な腕時計をながめる、オールバックの男。すこし間を置いて、部下が言う。

「単独行動が多いものの、情報に矛盾むじゅんはなく、正確です」

「あれを作った功績は大きい。気まぐれは許そう」

 どっしりと椅子に座っていたガクが、体勢を直す。不敵に笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る