第30話 記憶のかけら

 変わる色。泡がはじけて、元の世界に戻った。

 もちろん、幻の世界とは違って、建物が壊れていない。

 ほっと胸をなでおろすピュアのもとに、桃色のかけらが飛んできた。つかんで笑顔になる。それを見て、アレンジも微笑んだ。

『これは、誰だ?』


 移動ポケットの飾りとしてついている桃色の宝石が、思い出した。

 いまの姿ではないときに、ガイロンで誰かを見ている。

 その女性は、博士はかせと呼ばれている。

 やけに鮮明な映像。声の主は少年で、灰色の部屋の外にいるらしい。白衣の博士はうしろ姿。髪はたれていない。まとまっている。

 シューが隣を見ると、どこも欠けていないギアが浮いていた。


 すでに、二人は変身を解除している。

 小さな公園でベンチにたたずむ、桃色の宝石。剣のような形で、手のひらサイズのケースに乗っている。上から、心配そうなマユがのぞきこんでいた。

「大丈夫?」

『問題ない』

 心ここにあらずといった様子だとは、見た目で判断できない。

 水色の宝石が1回光って、静かになった。同じくケースに乗っている。翼のような形でふたつに分かれているものの、ギアはひとりらしい。

 移動ポケットが開かれた。マユにつづいて、サヤカも取り出した破片を眺める。

「かけらを何かでまとめたいね」

「そうかも」

 ゲーのことを考える二人。思いだせるのは、白く細かい横線が合わさったような姿。

 どちらからということもなく、お互いの顔を見つめる。

「サヤカがいれば、なんとかなるよね」

「マユの力も大きい」

 照れた様子のサヤカが、わずかに頬を染めた。つられて、マユの表情も緩む。

 しばしの沈黙。ロングヘアの少女が、関係ないことを話しだした。

「ポケットは、たまに右につけた方がいい。手もだけど、同じ方ばかり使うと骨格がゆがむから」

「そうなんだ。どっちの手も使わないとね」


 背を向けて歩いている、白を基調とした軽装の少年。

 ざらついて見える白いかたまりは、人ごみにまぎれて突然見えなくなった。

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