第29話 強まった光

 巨大なアイロンが屋根やねを吹き飛ばす。民家がくずれた。

 ノーシスは現実げんじつと色がすこし違う。こわれた物は、空間くうかんが消えれば元に戻っている。それでも、ピュアはいかりの色をつよくする。

「ラディラブビーム!」

 服の部分に軽減けいげんされ、あまり効果こうかがない。少女は回り込むために走った。

 これまでの怪物かいぶつよりも大きく、手強てごわいゲーセーマ。人に近い形ながら、色々な物が混じっている。

 黒い巨体の横から、ゲーが挑発ちょうはつする。

「なぜたたかう? えないなら放っておけばいい」

絶対ぜったいに、イヤ!」

 屋根やねびはね、ピンク色のりが命中。怪物かいぶつが左に倒れる。少女の思いとは裏腹うらはらに、住宅街じゅうたくがいの家がまたひとつ破壊はかいされた。

 ライトブルーがけ、怪物かいぶつこぶしを叩き込む。しかし、あまり効果こうかがない。

「私が、もっと運動が得意とくいだったら」

 すぐにアレンジが距離きょりをとる。木をまとうゲーセーマの左腕ひだりうでをよけていた。

「苦手には見えないよ」

知識ちしきでカバーしているだけ」

 おどろきからひらめきの表情に変わったピュアが、むねの前で両手に力を入れる。

「わたしにはできないから、なんとかする方法を考えよう」

『ここは現実げんじつじゃない。つよ念動ねんどうがあれば、法則ほうそくだって変えられる』

 シューがたすぶねを出した。そのことに、ピュアは気づいていない様子。アレンジは、身体からだからはっせられるほのかな光を見ていた。

「そうか。強く思って、ちからげよう」

 頭の上に疑問符ぎもんふが浮かんだままの少女が、もう一人の少女に向かってうなずいた。


 集中する二人。思いを強くする。

「すぐにぶつけるんじゃなくて」

「ためておくイメージ。もっと」

 ピンクの光とライトブルーの光が、それぞれの手足に集まっていく。

 二人のラディラブが、目に力を入れる。身体からだから放たれる光を曲げて、まとうことに成功した。

「セーマの応用おうようか」

 納得なっとくした様子で、ゲーがその場から遠ざかる。

 白い少年を気にする人はいない。光をまとった二人は、ゲーセーマと対峙たいじしていた。

 これまでよりも素早い動きで、次々に攻撃こうげきをあびせるラディラブ。

 ピュアが下から突き飛ばし、巨体がちゅうう。すでに、そこにはアレンジがいた。上へとはためく長い髪。かがやくりを受け、怪物かいぶつが落ちる。轟音ごうおんとともに大地だいちれた。

 ピンクのうでがうなり、ゲーセーマが吹き飛んだ。

 何も言わなくても、二人はならんでいる。

「アロングサイド!」

「デザイアー!」

 ほとばしる強い意志いし。二人で協力して放った光が、ゲーセーマを包む。

 女性が現れて、ノーシスが消えていく。


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