第五節 リョウの覚悟! セーマからの解放

第21話 二人の距離

 薄暗い倉庫内に、明かりがともった。

 ひどく加工された声が響く。

「ラディラブの台頭」

「そうだな。こっちには力が足りない」

 リョウがすぐに答えた。

 あっさりと倒され続けたセーマ。しかも、二人目のラディラブが現れた。

 黒い服の男は、壁に体重をあずけている。伸び放題の髪からメガネがのぞき、左目に力が入った。

「君に、強い念動の素質さえあれば」

 ざらついた声の白い男が言った。正確には、何かわからない存在。顔も服も輪郭りんかくも、空間を切り刻んだようにぼやけている。

「力のある奴が、数を揃えるべきだろ?」

「あまり情報は出せない。もう、後がない」

 宣告を受けて、リョウが怒りをあらわにした。髪を振り乱して前に出る。

「ふざけんな! 言われた通りやったぞ。この程度の情報で、どうしろってんだ」

 白い右手が動き、待つようにうながした。じつは何かのポーズかもしれない。強い念動を持たないリョウには、判別不能。

「落ち着いてほしい。ボスの意思を伝えただけだ」

 ゴーグルのようなものが、横向きの鉄格子の向こう側でいくつもに分断されて見える。後ずさる黒い男が、壁に背をつけた。

「力か?」

「いまのままでは効率が悪い。カラットを上げてくれ」

 白い男が、水色のかけらを飛ばした。


 サヤカのいない教室。衣替ころもがえで白っぽい。

 薄着に慣れず、肌寒そうなマユがやってきた。メグミと話して、とうとつに直球をぶつける。

「サヤカさんって、どんな子なの?」

「お? あんまり人懐っこくは、ない」

「だよね」

「でも、よく知らないはずの子が転んだときに、起こしてた」

 マユが思いだす。セーマの攻撃から助けられたことを。怒りを向けられてはいなかったことも。

「まゆまゆ」

 黙っていたカナエが、背後から楽しそうにつぶやきつづける。

「仲よくなりたいの?」

 ボブカットの少女は、気持ちを隠していない。ロングヘアの少女が入ってきても、構わずに言った。

「仲よくなりたいよ」

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